研究課題/領域番号 |
22K09423
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
新倉 隆宏 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (40448171)
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研究分担者 |
大江 啓介 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (20514623)
福井 友章 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50437688)
澤内 健一 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (20965793)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 骨再生 |
研究開始時の研究の概要 |
骨を失った患者の治療には今でも自家骨移植手術が行われることが標準的である。しかし自家骨移植には健常部への侵襲、合併症リスクが不可避で、採骨量の限界、ドナーとレシピエントで骨の形状が一致しないという問題もある。本研究では、自家骨移植に取って代わる「自家組織を犠牲にしない新規骨再生療法の開発」を目的とする。骨再建外科のトピック局所生体膜誘導と骨形成因子、さらに既存物には無い工夫を加えた人工骨を融合し、自家骨を一切使用しない骨再生医療の研究、開発を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、自家骨移植に取って代わる、将来臨床で実用可能な「自家組織を犠牲にしない新規骨再生療法の開発」である。自家骨の量、質、形状を再現した人工骨、それを利用した骨再生療法を開発する。induced membrane、骨誘導能を持つ蛋白Bone morphogenetic protein: BMP、既存物には無い工夫を加えた人工骨を融合し、自家骨不要な骨再生医療の研究、開発を行う。人工骨は3Dプリンタ光造形を用いて骨のマクロ構造のみならずミクロ構造も再現したものを作成する。 令和4年度の研究実施計画は(1)BMPと人工骨、induced membraneを利用した骨再生に関するin vivo試験を行うこと、(2)3D構造再現・表面加工人工骨の開発と、それを用いた骨再生に関するin vitro試験、in vivo試験を行うことであった。(1)については、ウサギを用いた実験で大腿骨骨幹部に骨欠損を作成し実験を行った。骨セメントを欠損部に4週間留置することでinduced membraneを作成することができた。ここに自家腸骨を移植したが骨癒合に導くことができなかった。BMP-2と人工骨による再生を行うためのコントロールとなるモデルがまだ確立するに至っていない状況である。(2)については、ウサギの大腿骨遠位部の微細構造を3Dプリンタで再現する人工骨を作成することに成功した。in vitro試験で細胞毒性に問題なく、細胞接着が良好であることを確認した。hydroxyapatite, beta-tricalcium phosphateを基材として作成できている。これをウサギの大腿骨遠位部に作成した骨孔に埋植しX線学的、組織学的に評価したところ、いずれにおいても良好な骨再生を示した。両者を比較するとbeta-tricalcium phosphateの方がより良い骨再生が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BMPと人工骨、induced membraneを利用した骨再生に関するin vivo試験については、コントロール群の作成において当初考えていたよりは難渋している。このせいで、BMPと人工骨、induced membraneのみで骨再生を行う実験群の評価にまでは至っていない。そのため、この研究においては当初予定よりも研究の進捗はやや遅れている。骨欠損の大きさがこの動物モデルでは大き過ぎる可能性があり、今後は骨欠損長の変更や骨欠損作成部位の変更を要すると考察している。 一方、3D構造再現・表面加工人工骨の開発と、それを用いた骨再生に関するin vitro試験、in vivo試験は順調に進んでおり、当初予定を上回る成果を挙げられたと考えている。3Dプリンタ光造形技術を用いて、骨のマクロ構造だけでなく海綿骨、骨梁構造を再現することができた。3Dプリンタ光造形技術による造形は初めての試みで、造形物が計画通り作成できるまでにトライアンドエラーを繰り返すことも想定していたが、順調に目的とする造形を達成することができた。造形物をウサギの骨欠損部に埋植する実験は当初令和5年度に入ってからになるかと考えていたが、令和4年度内に開始することができた。 このように、前者の研究の進捗はやや遅れているが、後者の進捗は当初予定をやや上回っていると評価しており、総合的に判断すると、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
BMPと人工骨、induced membraneを利用した骨再生に関するin vivo試験については、自家腸骨を移植することで骨癒合するコントロール群を確立しなければならない。骨欠損の大きさがこの動物モデルでは大き過ぎる可能性があり、今後は骨欠損長の変更や骨欠損作成部位の変更を行って対応していく予定である。 3D構造再現・表面加工人工骨の開発と、それを用いた骨再生に関する研究においては、3Dプリンタを用いた光造形技術のさらなる洗練に加えて、既存人工骨には無い下記の工夫を加えていく。セラミック組成をハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、beta-tricalcium phosphate、これらの混合物とし変化させることで最適な生体親和性、骨形成・吸収・リモデリング機能を発揮する。表面形状をPMMAセメントを参考に工夫することで、生体内でinduced membraneを誘導する。炭酸塩、マグネシウム、非晶質ハイドロキシアパタイト等を表面修飾することで骨伝導性、吸収性、BMP吸着能を増加する。 ウサギ大腿骨のマクロ・ミクロ構造を再現した人工骨を作成し、これを用いてin vitro試験、in vivo試験を行う。 in vitro試験:開発人工骨ディスクを間葉系幹細胞とともに培養する。細胞の付着・浸潤を走査電子顕微鏡で、細胞毒性をCCK-8 assay, LDH assayで評価する。BMP-2、transforming growth factor-beta3存在下での培養で骨芽細胞系分化、軟骨細胞系分化を評価する。血管新生をtube formation assayで、CaとPの溶出を比色試験で評価する。 in vivo試験:ウサギ大腿骨の骨欠損部にこれと同じ形状に作成した人工骨を埋植し、骨形成、骨癒合をX線学的、組織学的に評価し、骨強度を力学試験で測定する。
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