研究課題/領域番号 |
22K09425
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
青戸 守 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (50372727)
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研究分担者 |
酒井 大史 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00820804)
今井 祐記 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (10423873)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | RNA結合タンパク質 / Acin1 / 骨格筋 / 選択的スプライシング |
研究開始時の研究の概要 |
我々は選択的スプライシング(Alternative Splicing: AS)への関与が知られるRNA結合タンパク質Acin1が筋線維に多く発現していることを見出しており、本研究では、独自に作製したAcin1Floxマウスを用いて骨格筋特異的Acin1欠損マウスを作製し、骨格筋の機能や筋損傷からの再生過程におけるAcin1の生理機能を明らかにする。更にゲノムワイドな解析によりAcin1がASを制御する遺伝子群を明らかにする。これにより、将来的にAcin1の機能制御を介して、あるいは直接的に、骨格筋の機能に必要なASイベントを誘導し、筋委縮や筋損傷の予防・治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
加齢による筋肉量の減少・筋力低下(サルコペニア)は、健康寿命を阻む一因であり、予防・治療法の開発が重要な課題となっている。加齢によって減少した筋量や筋力の増強には運動が最も有効であり、運動の効果をより増強させる、もしくは運動なしでも筋力増強が可能となる薬剤の開発が期待されている。近年、選択的スプライシング(Alternative Splicing: AS)の機能不全による疾患に対してAS調節を標的とする薬剤の開発が注目されている。骨格筋においてもASの機能不全が多数知られており、疾患の予防・治療法開発の標的となりうる。申請者らはこれまでに、ASへの関与が知られるRNA結合タンパク質Acin1が筋間質細胞や筋衛星細胞に比べて筋線維に多く発現していることを見出している。本年度は筋線維特異的にCreを発現するHSA-Cre Tgマウスと申請者が独自に作製したAcin1Floxマウスを用いて筋線維特異的にAcin1を欠損するHSA-Cre Tg/+; Acin1Flox/Floxマウス(KOマウス)を作製した。その結果、KOマウスは胎生致死や出生時に死亡することなく出生し、その後の解析を行うことができた。また、HSA-Cre Tg/+; Acin1+/+(対照マウス)と比較して生存率や体重に有意な差はなかった。しかしながらKOマウスにおいて前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋などの下肢骨格筋重量や筋線維断面積が対照マウスに比べて有意に大きく、筋肥大を起こしていることが分かった。このことから、Acin1の機能を抑制する薬剤の開発が加齢や疾患に伴う筋委縮に対する治療法や予防法のターゲットとなりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究において、申請者らが独自に作製したAcin1Floxマウスと筋線維特異的にCreを発現するHSA-Cre Tgマウスを交配させることによりHSA-Cre Tg/+; Acin1 Flox/Flox(筋線維特異的Acin1欠損)マウス(KOマウス)を作製し、対照となるHSA-Cre Tg/+; Acin1 +/+(Ctrlマウス)と表現型の比較を行い、以下のことを明らかにしている。(1)KOマウスは胎生致死となることなく出生し、Ctrlマウスと比べて雌雄ともに生存率や体重に有意な差はなかった。(2)下肢骨格筋として前脛骨筋(TA)、腓腹筋(GA)、ヒラメ筋(SOL)の筋重量を計測し、それらの体重との比を求めた結果、12週令のKOマウス(雄)ではTA、GA、SOLの体重に対する筋重量の比が、またKOマウス(雌)においてはTA、SOLの体重に対する筋重量の比がCtrlマウスに比べて優位に大きいことがわかった。(3)採取したTAの切片を作製し、抗Acin1抗体による免疫染色を行ったところKOマウスの筋線維ではAcin1タンパク質の発現が検出限界以下となっており、作製したマウスが筋線維特異的Acin1 nullマウスであることを確認した。(4)TAの切片を抗Laminin抗体で染色することにより筋線維断面積を求めたところ、KOマウスで優位に大きくなっていることが分かった。 これらの結果から、Acin1タンパク質を減少させる、あるいはAcin1の機能を低下させることによって、加齢や疾患に伴う筋委縮に対して筋肥大を誘導させる治療法や予防法を開発する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の解析を行うことにより「Acin1が骨格筋においてどのようなASイベントに関わり、骨格筋の発生・再生過程にどのように寄与するのか」を明らかにする。 (1)KOマウスとCtrlマウスの骨格筋に対してRNA-seq解析を行い、KOマウスにおいて発現量が変化する遺伝子群を同定する。更に、RNA-seqデータを、AS解析に特化したソフトウェアを用いて解析し、ASイベントに変化のある遺伝子を同定する。得られたデータに対してgene ontology enrichment analysis(GOエンリッチメント解析)およびgene set enrichment analysis(GSEA)による機能解析を行い、Acin1が制御する骨格筋特異的ASイベントを同定する。 (2)野生型マウスの骨格筋に対して、抗Acin1抗体を用いたCLIP(UV架橋免疫沈降)-seqを行い、Acin1が結合するRNAを網羅的に解析する。(1)の結果と合わせて、Acin1がRNAに直接結合してASを制御する遺伝子(Acin1制御遺伝子)を同定する。更にRNA上のAcin1結合部位の同定も行う。 (3)(2)で同定したAcin1制御遺伝子の、ASを受けるエクソンとイントロンおよびAcin1結合部位を含むレポーターミニジーンを作製し、Acin1発現プラスミドとともにHEK293細胞に導入する。導入したレポーターミニジーンのASイベントをRT-PCRにより解析し、GFP発現プラスミドの場合と比較する。これによりAcin1が直接ASイベントを制御していることを証明する。 (4)(2)で同定したAcin1制御遺伝子の発現コンストラクトを筋芽細胞株C2C12細胞に導入し、ミオシン重鎖を発現する細胞の割合を計測することにより骨格筋分化に与える効果を評価する。
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