研究課題/領域番号 |
22K09457
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
露久保 敬嗣 岩手医科大学, 医学部, 非常勤医師 (50899359)
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研究分担者 |
西塚 哲 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 特任教授 (50453311)
小原 航 岩手医科大学, 医学部, 教授 (90337155)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 尿中DNA / 膀胱癌 / 早期再発診断 / バイオマーカー / 治療効果判定 |
研究開始時の研究の概要 |
膀胱癌診療における課題のひとつとして、再発診断のバイオマーカーに乏しい点が挙げられる。高リスク膀胱癌は初期治療後に約75%の症例で再発を生じる。一方、術後評価の膀胱鏡検査は侵襲度が高く、尿細胞診検査は感度が低いといった問題がある。 近年、癌患者の体液中にCirculating tumor DNA(ctDNA)が検出されることが知られ、再発早期予測や治療効果判定のバイオマーカーとしての有用性が期待されている。本研究は、高リスク膀胱癌患者を対象に、腫瘍毎に検出した遺伝子変異に対して、血漿ならびに尿沈渣中DNAをdigital PCR (dPCR)で高感度に検出、モニタリングする前向き観察研究である。
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研究実績の概要 |
従来の膀胱癌の再発診断に用いられる膀胱鏡検査は患者の身体的負担が大きく、尿細胞診検査は感度が低いことが指摘されている。そのため、膀胱癌の再発診断や治療効果判定に有用な負担が少なくかつ高感度なバイオマーカーの開発が求められている。 近年、膀胱癌患者の尿に含まれるDNAを調べると癌細胞由来の遺伝子変異が検出されることが報告されている。一方で、尿DNA中の遺伝子変異検出に関して、再発診断や治療効果判定のバイオマーカーとしての臨床的妥当性を検証した報告はまだない。 本研究では、膀胱癌の再発診断や治療効果判定に有用なバイオマーカー開発のため、32名の膀胱癌症例を登録した。膀胱癌組織からDNAを抽出し、パネルシークエンスにより症例毎の遺伝子変異を検出した。治療前後やその後の定期検査に合わせて尿検体を採取し、尿細胞DNA中にの遺伝子変異割合を高感度核酸定量技術であるデジタルPCR(dPCR)でモニタリングした。 膀胱癌の手術前後とBCG治療前後の遺伝子変異割合をモニタリングすると、再発症例では手術、BCG治療ともに治療後の遺伝子変異量が低下し切らず1%以上で上昇傾向を示し、無再発例では全例が遺伝子変異割合が1%以下に低下した。また再発例では、従来の膀胱鏡検査や尿細胞診検査による再発確認よりも数ヶ月早い段階で、尿DNA中の遺伝子変異割合は1%以上に上昇していた。 本研究では、膀胱がん患者の尿中がん細胞由来DNAに対するデジタルPCR (dPCR) 検査が、再発早期予測、治療効果判定に有用であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例登録は完了し、最長2年間の観察期間を終了、各症例の腫瘍組織を用いたパネルシークエンス、尿DNAのdPCRによる実験(計990回分)を終了した。データはすべて統計解析を終了し、図表として結果をまとめ、国内外での学会報告を行い、論文は米国分子病理学会の公式ジャーナルであるThe Journal of Molecular Diagnosticsに受理された(J Mol Diagn. 2024 Apr;26(4):278-291.)。また、本研究に関する方法について特許出願を完了している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で示された”尿細胞DNA中の遺伝子変異モニタリングによる、膀胱癌再発診断バイオマーカーとしての臨床的妥当性”を踏まえ、本方法を補助的バイオマーカーとして用いることで、①不要な膀胱鏡検査の回数を減らせる可能性、②初回TURBT後に行われるBCG療法など追加治療の適応判断等に役立つ可能性、があると考え、現在更なる前向き研究の立案を行なっている。
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