研究課題/領域番号 |
22K09494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐塚 智和 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (90623679)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 膀胱癌 / 残尿 / 再発 / 尿路上皮癌 / 予防 / 膿尿 |
研究開始時の研究の概要 |
尿路上皮癌の術後の膀胱内再発率は高く、外科的治療を含む侵襲的な処置が必要になる。膀胱内再発のひとつの要因として術中の腫瘍の膀胱内播種がある。播種が生じる原因として、腎尿管全摘除術や経尿道的膀胱腫瘍切除術の際に、手術操作により腫瘍細胞が膀胱内に浮遊することや、癌細胞が混入した尿が粘膜に暴露し続けて膀胱粘膜に生着することが予測される。また上記疾患の好発年齢においては、残尿をきたす排尿障害を合併することが少なくない。本研究は「残尿」と「排尿障害による尿流停滞」に注目して再発のリスク因子を明らかにし、その是正による膀胱内再発予防法の基盤データを構築することである。
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研究実績の概要 |
2022年度は当科の非筋層浸潤性膀胱癌のデータをアップデートし既報の症例数の約1.5倍(450例)として追加の解析をした。特に今回の解析では残尿と関連する可能性の高い膿尿の有無に着目した。既報でも膿尿の存在は膀胱内再発のリスク因子であることが低から高リスク、かつBCG膀胱内注入療法を含めた予防治療の有無にかかわらない広い対象症例で確認された。今回は非筋層浸潤性膀胱癌における膀胱内再発の強力な予防因子となるBCG膀胱内注入療法の有無にわけて解析をした。結果としてBCG治療をしない群において膿尿は有意な再発リスク因子であった。既報と同様の結果であった。またBCG治療群においては膿尿の有無で有意な差はなかった。すなわち膿尿というリスク因子をBCG膀胱内注入療法で予防できる可能性が示唆された。このような報告は調べえた範囲で存在しなかった。すでにあきらかになっている臨床病理学的なリスク要因のみではなく「膿尿」のリスクの特性を明らかにすることができた。 この結果を2022年の日本泌尿器内視鏡ロボティクス学会で口演発表した。さらに詳細な検討を加え、Cancers (Basel). に「Relationship between Preoperative Pyuria and Bacille Calmette-Guerin Treatment in Intravesical Recurrence after Transurethral Resection of High-Risk, Non-Muscle Invasive, Bladder Carcinoma: A Retrospective Study of Human Data.」を論文発表した。 本研究初年度で自施設データをアップデートし詳細に解析したうえで論文としてまとめることができたことは有意義な研究の進展であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に自施設データをアップデートし詳細な解析をくわえ、学会ならびに英文発表をできた。本来着目している「残尿」については今までの解析での「30ml以上」という定義やBCG膀胱内注入療法による再発ハイリスク症例における十分な予防治療がされている影響も予測され想定していた結果にならなかった。残尿とも関連する「膿尿」についてはBCG膀胱内注入療法の有無別にアップデートができおおむね予測通りの結果であり、前述の論文化まで実現できた。 課題がさらに浮彫になり、適切なグループ化ならびにBCG膀胱内注入療法という強力な予防治療の影響を考慮しながらさらに解析をすすめる必要性が認識できた。
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今後の研究の推進方策 |
上述のアップデートした当科のデータによると、TUR-Btをうけた全対象患者における残尿の影響では、既報とやや異なり差が不鮮明になった。このことは「残尿が再発予測因子ではない」ことではなく、BCG膀胱内注入療法など強力な予防治療がはいることで本来再発していた可能性が高い症例群に再発が起きなかったと考察する。2023年度は詳細にグループ化すること、「残尿」の定義を今一度詳細に解析することで、残尿の膀胱内再発に対するインパクトを明らかにし、学会・論文公表をしていく。このグループ化・有意な残尿量を明らかにすることで前向き研究をより質の高いものにつなげることが可能になる。 また本邦の大規模な既存データベースによる膿尿の解析も可能であればすすめたい。研究代表者が所属している多施設研究で非筋層浸潤性膀胱癌における膿尿についてのデータ集積もされており、組織と検討のうえ進められれば理想的である。単施設での後方視的検討では詳細なグループ化による解析は症例数の点で限界もあり、大規模データベースを効率よく解析をすすめることでより精度の高い結果を導ける可能性がある。
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