配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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研究実績の概要 |
ODF4関連の研究を中心に行った。 ODF4遺伝子欠損(ODF4-KO)マウスは,余剰細胞質を巻き込んだヘアピン型尾部を持ち頭部を後ろにして逆泳する精子を持ち,運動率,直進速度,平均速度の全てが低下しており,自然交配では卵管を上昇できずに男性不妊を呈する。先行研究にて,KO精子は尾部に局在する機能タンパク質のほとんどが正常に存在するがAdenylate kinase 1と2(AK-1,2)が顕著に減少していること,また,KO精子のATP産生は正常であるが野生型と比較してATP,ADPともに異常に高くcapacitation前後の値が一定ではないことを発見した。これらの結果をまとめて,「OD4はAK-1およびAK-2と共同して精子内のエネルギー代謝に関与し,尾部の運動と余剰細胞質の除去による正常形態形成に必須である」ことを第68回日本生殖医学会にて発表した。 また,精巣上体尾部から採取したODF4-KO精子では脱膜テストにおいて余剰細胞質が除去された後では正常に近い動きが観察されることから,適切な培地を用いて体外授精を行うことで不妊症をレスキューできるのではないかと発想し,実験を行った。その結果,ODF4 KO精子は余剰細胞質を除去して正常形態となり,運動率,直進速度,平均速度の全てが上昇した。さらに培養した精子を用いて野性型卵と体外授精を行ったところ,約20%の卵が4細胞期まで発生した。ヘアピン型不動精子による男性不妊症を呈する患者の中にも原因がODF4異常の場合には,培地の工夫によって精子の運動能を向上させてより自然に近い治療法を行えることがわかった。以上の結果をまとめてRMB誌に投稿中である。 また,東京大学との共同研究によりKif6解析を行い,第129回日本解剖学会・学術集会講演にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精子の受精に関するODF4とAdenylate kinaseとの関係を初めて明らかにした。 また,ODF4-KO精子の実験において,弱い界面活性剤によって精子細胞膜を脱膜後にATPを投与する脱膜テストでは,余剰細胞質が除去された後に正常に近い動きをすることがわかったことから,適切なmediumを用いた人工授精を行うことでreuscueできるのではないかと発想し,実験を行った。ODF4-KO精子はATP産生には異常がないため、ATP産生に必要なピルビン酸やグルコースを含む培地を検討し実験を行った。その結果,KO精子に特徴的なヘアピン鞭毛が解消されるとともに精子の運動能が上昇した。この精子を用いて野性型卵子に体外受精を行ったところ,受精が成立し卵発生が進むことを明らかにした。この結果をまとめて現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,ODF4関連の研究を行う。精子OD4はAK-1およびAK-2と共同して精子内のエネルギー代謝に関与し,尾部の運動と余剰細胞質の除去により精子を正常形態にし受精を可能にする。今年度は,Adenylate kinase(AK)阻害剤によりODF4-KOと同じ症状が引き起こされるかどうかを解析する。AK阻害剤の最適濃度を調べ,それを用いて野性型およびODF4-KO精子運動能をSMASを用いて測定する。同時に精子形態に変化がないかを十分数の検体をもちいて解析する。AK阻害剤で処理した精子を用いて体外受精を行い,授精能の有無を検証する。AK阻害剤により精子運動能の抑制と受精の抑制が起こる場合, 避妊薬の開発の可能性も検証する。
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