研究課題/領域番号 |
22K09540
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
伊藤 敬一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 泌尿器科学, 教授 (90260091)
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研究分担者 |
松尾 洋孝 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 分子生体制御学, 教授 (00528292)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 包括的高感度転写産物プロファイリング / 次世代シークエンサー / 腎細胞癌 / 遺伝子発現データベース / バイオマーカー / 腫瘍マーカー / リアルタイムPCR / TCGA / NGS-HiCEP法 / LF-NGS-HiCEP法 |
研究開始時の研究の概要 |
腎癌の分子的背景は未だ不明な点が多く、その特性を解析し非侵襲的早期診断や病勢予測、治療効果の判定に繋がる技術開発が求められている。本研究では、腎癌患者の手術検体組織と手術前後の末梢血検体を採取し、日本発の技術であるHiCEP法に次世代シークエンサー(NGS)を組み合わせ効率化した新規の高感度解析法 (NGS-HiCEP法)を用い、腎癌特異的な分子の探索を行う。有望な候補遺伝子の発現と臨床病期、病理所見や治療効果等の臨床データとの関連性を解析し、さらに候補遺伝子をコードする分子の組織発現解析、細胞株を用いた生理学的、病態学的機能解析を行う。早期診断技術、予後予測マーカー等の臨床応用に繋げたい。
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研究実績の概要 |
本研究では包括的高感度転写産物プロファイリング(HiCEP)法に次世代シークエンサーを組み合わせた新規解析法(NGS-HiCEP法)により、腎細胞癌特異的な分子の探索を行っている。NGS-HiCEP法により腎癌組織の遺伝子発現データベースを効率的に構築できた。腎細胞癌6症例の癌部と肉眼的非癌部の遺伝子発現の違いを比較し、非癌部と比べて癌部において5倍以上発現が増加している12遺伝子を同定した。この12遺伝子は腎癌との関連が報告されている既知の8遺伝子に加え、腎癌との関連が報告されていない4つの新規遺伝子であった(Gene A-D)。この12遺伝子において、集積している別の腎細胞癌症例のサンプルを対象としたリアルタイムPCRによる再現実験を実施し、癌部ですべての候補遺伝子の発現増加が確認できた。さらにTCGA (The Cancer Genome Atlas)データを用いて、候補遺伝子の発現量と生命予後との関連について検討を行った。候補遺伝子について、TCGAの淡明型腎細胞癌のRNAシークエンスのデータセットを用いKaplan-Meier解析を行ったところ、SCARB1とGene Cの2つがそれらの発現量と生存について有意な相関を認めた。NGS-HiCEP法が腎癌のバイオマーカーの候補を同定法として効率的で優れた手法であることが確認され、この新規の手法を世界に先駆けて報告する予定である。さらに、我々が構築した遺伝子発現データベースを用い、様々な解析の条件下(癌組織における低悪性度と高悪性度の比較など)で遺伝子発現量を比較し、新たなコンセプトの候補遺伝子を同定することも可能であり、さらに解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規の高感度解析法であるNGS-HiCEP法により、腎細胞癌組織の遺伝子発現データベースの構築に世界で初めて成功した。癌部と肉眼的非癌部の遺伝子発現の違いを比較し、非癌部と比べて癌部において5倍以上発現が増加している遺伝子を12個同定した。これらの12遺伝子すべてにおいて、別の腎細胞癌症例のサンプルを対象としたリアルタイムPCRによる再現実験を実施し、癌部においてそれらの遺伝子の発現が増加していることが確認できた。このリアルタイムPCRの手法は修正を加えたため時間を要した。さらにTCGA に登録されているデータを用いて、候補遺伝子の発現量と生命予後との関連について検討し、淡明型腎細胞癌のRNAシークエンスのデータセットで検討したところ前述の2遺伝子が予後を予測するバイオマーカーの候補であることが分かった。このNGS-HiCEP法の新規性、有用性について現在論文作成中である。同定して個々の候補遺伝子については腎癌における機能解析を行っていく。これまでは、非癌部と比べ癌部において5倍以上発現が増加している遺伝子に注目していたが、発現増加のカットオフを4倍とした検討も現在進めており、さらに新しい知見が得られつつある。また癌部のデータベースにおいて低悪性度と高悪性度の比較も現在進めている。今後は癌患者の末梢血検体を用いたNGS-HiCEPの施行を進めていく予定である。腎細胞癌の手術検体だけではなく、末梢血検体についてもすでに50例以上の検体の収集がすでにできており、末梢血検体を用いたNGS-HiCEP法を開始できる準備は整っているが、資金面の問題もある。NGS-HiCEP法による解析は、様々な試行錯誤を繰り返した結果、方法論は確立し、現在は軌道に乗っている。本プロジェクトはおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
NGS-HiCEP法という新しい手法は試行錯誤を経て確立された。この方法により腎癌マーカーの候補が効率的に同定できることが確認された。非癌部と比べて癌部において5倍以上発現が増加している遺伝子について検討し有望な候補遺伝子を同定できた。現在、発現の比率のカットオフを4倍に変えた検討も行い、新規の遺伝子がさらに同定されてきており、この検討も進めていく。さらに、癌部のみの検討において、悪性度の比較により、悪性度の高い癌組織で発現が増加する遺伝子や、逆に発現が低下する遺伝子の検討も新たに行っていく予定である。これらの検討は遺伝子発現データベースの解析により可能である。同定された候補遺伝子はこれまでと同様にリアルタイムPCRによる発現確認を行っていく。さらに、資金面が許せば、癌患者の末梢血における検討において、手術検体と同様にNGS-HiCEP法を進めていく。末梢血上での遺伝子の変化は癌に反応する末梢血中の細胞上の遺伝子変化を検出できると考えられ、今後の検討結果を期待している。さらに、同定した候補分子の生体における役割を検討するために、個々の候補分子に対する抗体を用い、免疫組織化学染色による腎癌組織における局在解析を行う。また、必要に応じて、細胞レベルでのin vitro発現実験により候補分子の生理学的、病態学的機能を検討する。そして、本技術により検出した腎細胞癌に特異的な候補分子の発現と、症例における病期診断や病理診断、治療効果等の臨床データを対比させ、その関連について解析、検討する。個々の候補遺伝子はそれぞれに腎癌の発生、進展などに関与している重要な分子であり、さらに広がりを見せていく研究と考えている。
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