研究課題/領域番号 |
22K09555
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
本杉 奈美 東海大学, 医学部, 奨励研究員 (70465251)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ヒト多能性幹細胞 / lnc RNA XACT / ex vivoモデリング / ヒト初期発生胚モデル |
研究開始時の研究の概要 |
ヒト多能性幹細胞は、ヒト初期胚におけるex vivoモデリングツールとして最適な細胞である。近年、幹細胞の自己組織化能を基盤とした高次構造体作製も可能となり、時空間的なヒト発生学解析が可能となりつつある。ヒト初期胚は、サンプルの希少性や倫理的問題から逆遺伝学的なアプローチをとることが困難であり、基本的な発生学的知見が乏しいのが現状である。これまでに、ヒト多能性幹細胞特異的に発現しているlnc RNA XACTが神経細胞および胎盤系列細胞への遺伝子発現制御を担っていることを明らかにした。これらの知見をヒト初期発生胚モデルへ展開し、幹細胞を介したヒト初期胚細胞の細胞系譜への分子機序を明らかにする。
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研究実績の概要 |
ヒトの初期胚発生は、サンプルの希少性からex vivoモデリングが必須である。ヒト多能性幹細胞(ES/iPS細胞)は、ヒト初期胚エピブラストに類似した性質を備え、ヒトの初期発生を分子レベルで捉えるのに最適であり、近年では、幹細胞の自己組織化能を基盤としたオルガノイド作製も可能となり、多能性幹細胞を用いた高次構造体作製からの時空間的なヒト発生学解析が可能となりつつある。ヒト初期胚のex vivoモデリングを介し、原因不明不育症における「胚側」の影響を分子レベルで捉えることは、生殖医療の発展に重要な知見を提供できると考える。 これまでに我々の研究室では、ヒト初期胚特異的発現lnc RNA XACTが多能性幹細胞の分化能に影響し、胎盤系列遺伝子群の発現制御機能があることを明らかにした(Motosugi et al. Cell Reports. 2021)。 そこで本研究では、XACT遺伝子欠損ヒト多能性幹細胞を用い、着床前後の発生を模擬するGastruloidやBlastoidを作製することでヒト初期胚におけるex vivoモデリングを実施する。XACT遺伝子欠損株とsingle cell RNA-seq解析や蛍光染色等を組み合わせ、lnc RNAを介した時空間的な発生制御機構を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、我々の研究室が所持するヒト多能性幹細胞を用いて、効率良くGastruloidを作成する系の確立に取り組んだ。既報の条件に、前処理または分化誘導時に使用する低分子化合物の添加量も検討し、我々が所有する細胞株での作成条件の最適化を行った。その結果、安定して内胚葉、中胚葉、外胚葉の分化マーカーが発現するGastruloidの作出が可能となり、今後に予定している解析への土台が整った。 また、XACT遺伝子は従来考えられていた(Vallot et al. Cell Stem Cell. 2017)、X染色体の遺伝子量補正における機能よりも、分化制御を担っており(Motosugi et al. Cell Reports. 2021)、さらにヒト初期胚細胞におけるsingle cellトランスクリプトーム解析からも、XACT遺伝子が胎盤系列細胞において、有意に発現が低下していることが確認された(Petropoulos et al. Cell. 2016)。即ち、XACT遺伝子の欠損株とヒト初期胚細胞で相関性の高い結果が得られていることから、XACT遺伝子は、初期胚分化への影響を分子レベルで捉える極めて有用なツールとなることが考えられる。そこで、すでに作成したXACT遺伝子の欠損株に加え、XACT遺伝子の過剰発現株および発現抑制株を作成し、ex vivoモデルの作成に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の解析予定は、XACT遺伝子を欠損、過剰発現または発現抑制したヒトiPS細胞株を用いてヒト初期胚を模したex vivoモデルを作成し、経時的に蛍光免疫染色だけでなく、Fluorescence in situ hybridization法を組み合わせた検体で超解像度レベルでの顕微鏡観察を行い、クロマチンおよび転写因子群の状態とXACT遺伝子の関係性について、時空間的ダイナミクスでの解明を行う。 また、ex vivoモデル作成に用いるヒト多能性幹細胞でのRNA-seqを行い、得られたデータを超解像顕微鏡観察との統合解析を行うことで、XACT遺伝子と胎盤組織への分化へ必要な転写ネットワークおよび核内クロマチンダイナミクスの関係解明を目指す。
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