研究課題/領域番号 |
22K09562
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阿部 高也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 技師 (10720609)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | in vitro着床モデル / マウス初期胚 / 着床前後 / 胚培養 / 子宮組織 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトやマウスの初期発生において、着床はその後の胎盤形成に関わる非常に重要な発生過程の一つである。しかし、母体内で起きるこれらの現象を直接観察することは難しく、着床前後の胚と子宮間のシグナル伝達や分化メカニズムなど明らかにされていないことが多く残されている。この問題を解決するため、本計画ではマウスを用いて1)着床前後の胚培養と2)擬似子宮組織の三次元培養を確立する。これらを用いて擬似子宮組織で胚が上皮に接着し、胚周辺の間質細胞が脱落膜化する現象を再現させることを目指す。このin vitro着床モデルを用いることで、着床時期の関連因子や細胞動態を細胞レベルで解析することが可能となる。
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研究実績の概要 |
有胎盤類において、着床はその後の胎盤形成に重要な発生過程の一つである。しかし、母体内で起きるこの現象は直接観察することが難しく、胚と子宮間の相互作用メカニズムは不明な点が多く残されている。この問題を解決するためマウスを用いて、1)着床前後の胚培養と2)擬似子宮組織の三次元培養法を確立する。これらを組み合わせることでin vitroにおいて着床を再現することを目指す。ここでの着床は胚が子宮上皮細胞に接着して、着床後に子宮組織で起きる脱落膜化までの現象とする。マウスにおいて着床前後の胚培養技術は、近年に飛躍的に改善された。しかし、ディッシュ上で培養するため、胚が扁平に発生することや発生効率を上げるため胚体外組織となる部分を取り除く処置を施すため、in vivoの現象を再現することは難しいと考える。特に、マウスでは上記の取り除かれた領域は子宮上皮と接着することが知られている。これらの問題を解決するため、採取した胚盤胞期胚を三次元培養ゲルで培養する方法を進めてきた。また、従来の方法のもう一つの問題点として、胚のみを培養しており、つまり子宮組織を用いていないため、着床前後の胚と子宮間の相互作用を再現することはできないことが挙げられる。そこで、子宮組織より細胞を単利して、培養ゲルを用いて三次元培養を進めており、上皮組織と間質細胞を層状に培養する方法を確立した(擬似子宮組織)。今後は、胚培養の発生効率の向上、および擬似子宮組織をin vivoの子宮が胚を受け入れられる状態(receptive window)へ誘導する方法を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)着床前後の胚培養:交配後3.5日目(E3.5)に胚盤胞期胚を回収して、着床後E5.5-6.0日目胚までの養法を確立する。胚を立体的に発生させるため、三次元培養ゲルを用いた。また、培養ゲルを子宮内部の構造に似せるため、幅100-150umの窪みを作製して、胚をその中で培養させる方法を構築した。この方法により、10%未満の胚が着床後の円筒状に発生することが確認できた。円筒状に発生した培養胚を分化マーカー遺伝子(epiblast, Oct3/4;trophoectderm, Cdx2; primitive endoderm, Gata4)の抗体染色で解析したところE5.5-6.0日目胚と同様の発現パターンであることが確認できた。一方、培養条件の評価を効率的に生きたまま行えるように分化マーカー遺伝子のレポーターマウスの作製を進めてきた。まず、Oct4遺伝子座に蛍光タンパク質遺伝子を挿入してレポーターマウスを樹立した。2)擬似子宮組織の三次元培養:マウスの子宮組織より、子宮上皮細胞と間質細胞をそれぞれ単離して培養する方法を確立した。さらに、培養ゲルを用いてゲル上に上皮細胞、ゲル内に間質細胞をそれぞれ層状に培養する方法を確立した。in vivoでは着床後に間質細胞の脱落膜化が起きる。この現象を可視化するため、初期の脱落膜化領域(PDZ: Primary Decidual Zone)で発現することが知られているHb-egf、Cox2、BMP2、Wnt4に蛍光タンパク質遺伝子を挿入してレポーターマウスの作製を進めてきた。これらのレポーターマウスを使うことで、脱落膜化の指標とすることができる。
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今後の研究の推進方策 |
1)着床前後の胚培養:円筒状に発生した培養胚は、正常に分化マーカーが発現していることが確認されたので、今後は前後軸マーカーの一つであるCerl1のトランスジェニックマウス(Cerl1-Venus)を用いて、培養胚で前後軸が形成されるか検証する。一方、胚の発生効率は10%未満と低いためシグナル因子の添加やゲルの素材など培養条件をさらに検討する必要がある。また、樹立したOct4レポーターマウスの評価や他の分化マーカーのレポーターマウスの樹立を進める。2) 擬似子宮組織の三次元培養:培養条件下において、ホルモン(プロゲステロンとエストロゲン)などを添加して、receptive windowの状態に誘導する方法を検討する。樹立したPDZレポーターマウスの評価を進める。
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