研究課題/領域番号 |
22K09585
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
宇田川 理 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (50738466)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 卵子 / ミトコンドリア / 環境化学物質 |
研究開始時の研究の概要 |
負担の大きな動物での試験や疫学調査が追いつかず、知らず知らずのうちに妊孕性への影響の不明な無数の環境化学物質に対し、我々は絶えず曝露されている。少量の曝露であっても妊孕性への影響が大きな環境化学物質、あるいは妊孕性への影響がさほど大きくなくても単純に環境中の存在量が多い物質を察知し、優先的に排除する事が望まれる。 ヒト卵子の低妊孕性指標であるオルガネラクラスターに対し、ミトコンドリアの融合-分裂バランスの調整は分子レベルでの関与が現時点で唯一示唆される(加齢・栄養状態、のように具体的な標的が見えない要因とは異なり、特定の分子を標的として想定できるということ)。本研究では環境からの撹乱に着目する。
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研究実績の概要 |
卵子の妊孕性を吟味できるタイミングとして、顕微受精へ用いられる際の限られた裸化後の時間が挙げられる。健康な児の誕生までを鑑みて顕微鏡下短時間で視認可能なもののうち細胞内構造であれば、オルガネラクラスター(細胞小器官が群がって大きな塊の様に目視される構造体)形成が低妊孕性指標の一つとして位置付けられている。ミトコンドリアは融合と分裂を繰り返す動的なオルガネラである。融合-分裂バランスが不調となる遺伝子改変マウス卵子内ではオルガネラクラスターの発生がみられ、ミトコンドリアの融合-分裂制御タンパク質の分子レベルでの関与が示唆される。例えば副流煙曝露の指標に卵胞液中のニコチン代謝物が用いられるように、卵子は胎児期に形成されてから成人後の排卵に至るまで、環境中の化学物質に曝されるが、ミトコンドリアの融合-分裂バランスへ影響を与えるものは、これまでわかっていない。本研究では、環境化学物質による撹乱の標的としてミトコンドリア分裂に必須の因子であるDynamin related protein 1(Drp1)タンパク質を設定する。令和5年度は、Drp1との親和性を基にした候補物質の選抜を進めた。前年度に設定したDrp1 タンパク質表面ポケットに対し、バーチャル化合物を多く含むライブラリであるLigandBOXを用いた選抜により、ミトコンドリア形態を変化させる候補化合物を得た。一方で環境化学物質に関し、使用量データの取得可能なものとして2020年度に茨城県において使用された農薬に着目した。当研究所データベースWebkis-Plusを活用し、400化合物程度のライブラリを作成し同様にポケットに対する親和性について選抜を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一酸化炭素中毒のようにミトコンドリア呼吸鎖にダメージを与えエネルギー産生を阻害する物質は知られている。しかしながら、ミトコンドリアの融合-分裂バランスに対して影響を与える環境化学物質は全くわかっていない。選抜化合物をマウス卵子に作用させ、ミトコンドリアの形態評価によりバリデートを進めている。阻害活性の高い環境化学物質とその存在量について学術誌への投稿に向け準備を進めており、次年度中に報告したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスから採取できる卵子数には限りがあり、候補化合物数を増やし精度を高める上では培養細胞を適宜活用しながら対応したい。明確な表現型を指標にし、細胞種ごとのミトコンドリア形態の違いなどに留意し進めたい。
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