研究課題/領域番号 |
22K09623
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
池崎 みどり 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40549747)
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研究分担者 |
井原 義人 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70263241)
井箟 一彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60303640)
西辻 和親 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (40532768)
岩橋 尚幸 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (50750907)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | p53 / 卵巣癌 / アミロイドーシス |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣癌では、がん抑制遺伝子TP53に高頻度で変異が見られる。近年、TP53遺伝子産物であるp53タンパク質がアミロイド様凝集体を形成することが分かってきているが、p53変異癌病態への寄与は不明である。我々は以前、卵巣癌患者組織においてp53凝集体が沈着していることを報告した。本研究では、卵巣癌をp53変異癌のモデルとし、p53凝集体がどのようにして癌病態に寄与するのかを解明する。これにより、p53凝集体を標的とした従来にない治療戦略の分子基盤の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
卵巣癌は婦人科領域の腫瘍の中で最も死亡者数の多い疾患で、進行/再発症例の予後は不良であり予後改善のためには新規治療戦略の確立が必要である。卵巣癌のほとんどの症例でTP53遺伝子変異あるいは欠損が認められる。TP53遺伝子産物であるp53タンパク質がアミロイド様凝集体を形成することから、我々はp53凝集体依存的な卵巣癌病態機構の解明を目的とした。 TP53遺伝子変異が高頻度で見られる高異型度漿液性卵巣癌をp53変異癌のモデルとし、高異型度漿液性卵巣癌の121症例について、通常の病理検査でよく用いられるマウスモノクローナル抗p53抗体DO-7による免疫組織化学的解析を行った結果、高異型度漿液性卵巣癌症例のp53染色パターンが4種類(野生型p53、p53陰性、p53核強陽性、p53細胞質/核陽性)に分類できることが分かった。分類したp53陰性、p53核強陽性、p53細胞質/核陽性の症例の予後について、無増悪生存期間、全生存期間との相関を解析した。その結果、p53細胞質/核陽性である症例では無増悪生存率、全生存率ともに有意に不良であることが分かった。TP53遺伝子の変異は、高異型度漿液性卵巣癌組織のパラフィン包埋切片から腫瘍細胞DNAを抽出し、がん遺伝子パネル(275遺伝子)を用いて解析を行った。次に、予後不良であったp53細胞質/核陽性の症例ではp53凝集体の沈着が見られるのではないかと考え、タンパク質凝集体の検出に用いられるProteoStat試薬を用いて解析を行った。p53細胞質/核陽性の14症例のうち、10症例でp53凝集体の沈着が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究により、腫瘍組織を用いたp53変異癌の予後解析とTP53遺伝子変異解析を行い、Proteostat陽性のp53凝集体の沈着を認める卵巣癌の症例を複数同定し、p53凝集体の沈着が見られるp53変異型高異型度漿液性卵巣癌患者は予後不良であることを世界で初めて見出した。これらは当初の計画で予定していた内容であり、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
p53凝集体が癌の治療標的となり得るかどうかについて、p53凝集阻害剤と卵巣癌患者由来がんオルガノイドを用いて検証を行う。また、我々は硫酸化糖鎖依存的に細胞間を伝播したp53凝集体が受け手細胞側の野生型p53の機能を障害することを報告しているが、このように細胞間を伝播するp53凝集体が化学療法に対する耐性獲得に寄与するかどうかは不明である。令和5年度以降は、高異型度漿液性卵巣癌で問題となるプラチナ製剤に対する耐性獲得について検証を行う。
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