研究課題/領域番号 |
22K09626
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
加藤 容二郎 昭和大学, 医学部, 講師 (80408632)
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研究分担者 |
青木 武士 昭和大学, 医学部, 教授 (30317515)
吉武 理 昭和大学, 医学部, 准教授 (50297446)
山海 直 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 再雇用職員 (80300937)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 子宮移植 / トランスレーショナルリサーチ / 心停止ドナー / 温阻血・冷阻血耐性 / 少子化対策 / 動物実験モデル / カニクイザル心停止ドナー子宮移植モデル / ピッグ自家子宮移植モデル / カニクイザル心停止ドナー子宮移植 |
研究開始時の研究の概要 |
先天的、後天的に子宮の無い女性が子どもを望む場合、国内で認められているのは養子縁組のみである。海外では上記女性を対象に子宮移植の臨床試験が始められているが、まだ一般普及には至っていない。普及しない理由の一つとして、子宮移植の生体ドナー(=提供者)の手術が難渋で、ドナーのリスクが高いことが問題となっている。本研究では、カニクイザル心停止ドナー子宮移植モデルを確立し、心停止ドナーからの提供される子宮による出産の可能性および安全性を明らかにし、子宮移植の一般普及への一助を目指す。
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研究実績の概要 |
海外での子宮移植が、まだ一般普及には至っていない理由の一つとして、生体子宮ドナー(ドナー=提供者)の手術が難渋で、リスクが高いことが問題となっている。本研究では、心停止ドナーによる子宮移植での出産の可能性および安全性を明らかにし、子宮移植の一般普及への一助を目指す。 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センターへ共同利用施設利用の申請をしたところ、サルを用いた生体での研究を行う前に、サル以外での動物での検証を指摘されたため、当初の予定通り、サル屍体を用いた実験手技の検証から開始しつつ、それと並行してピッグを用いた子宮移植実験を開始した。 1)カニクイザル心停止ドナー子宮移植モデルの確立:サルで実験を開始するための準備として、安楽殺後のカニクイザル1頭を用い、心停止後の子宮グラフト摘出訓練を行った。手術開始から子宮グラフト摘出まで13分であり、以前、本研究代表者が行った生体ドナーモデルカニクイザル子宮移植では同手技に平均5時間以上要しており、本術式を用いることにより、短時間で子宮グラフトの摘出ができることを確認した。 2)ピッグを用いた子宮移植手術:ピッグでの検証を行うにあたり、ピッグ子宮移植モデル作成が必要であるが、3Rの法則に従い、使用頭数を最小限にするため、ピッグ自家子宮移植モデル作成から始めることにした。昨年度(令和4年度)は3件の実験を行い、灌流成功率50%、灌流成功後・血管吻合後血流確認率約0%であったが、今年度(令和5年度)は周術期管理の方法など変更し2件の実験を行ったところ、灌流成功率100%、灌流成功後・血管吻合後血流確認率約100%(全体の100%)と成功率が劇的に改善した。今後は、さらに実験手技を改善し、ピッグ子宮自家移植モデルを完成させた後、ピッグ心停止ドナーモデルでの検証を始めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)カニクイザル心停止ドナー子宮移植モデルの確立:コロナ禍の影響もあり、サル個体が高騰したままで、安楽殺後のサルを用いたドナー手術手技確認より先には進めていない。手術手技として、心停止下ドナーモデルの場合、生体ドナーモデルと比べ子宮グラフト摘出まで4時間以上短縮できる事を証明できた。 現時点での問題点として、サル個体単価が高騰したままで(カニクイザル500万円/頭:令和5年末)、今後もサル個体単価が変わらない場合、サルでの研究は安楽殺後の屍体でのトレーニングしか行えない可能性があり、ピッグでの心停止下ドナー子宮移植研究への移行も検討したい。 2)ピッグを用いた子宮移植手術:文献検索上、家畜ブタ子宮移植での成績を確認すると、子宮グラフト摘出後、灌流成功率約37%、灌流成功後・血管吻合後血流確認率約57%(全体の約21%)と成功率が低いため、より確実に子宮移植が行えるよう、ピッグ自家子宮移植トレーニングモデルの作製を始めた。昨年度(令和4年度)は3件の実験を行ったが、灌流成功率50%、灌流成功後・血管吻合後血流確認率約0%であった。今年度(令和5年度)は周術期管理の方法など変更し2件の実験を行ったところ、2件とも子宮グラフト摘出後の灌流は良好で、子宮グラフトが白色になり(灌流成功率100%)、さらに灌流成功後・血管吻合後血流確認率約100%(全体の100%)と成功率が劇的に改善した。この2頭間で灌流液を変更したところ、病理組織学的所見や、インドシアニングリーン+近赤外線を用いた血流評価で改善を認めた。ただ、今年度最後の実験では、右卵巣静脈を180度回転して吻合し、静脈吻合部狭窄を来したこともあったため、さらに実験手技を修正することで、ピッグ子宮自家移植モデルを完成させた後、ピッグ心停止ドナーモデルでの検証を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画発案当初と違い、新型コロナウイルスの流行によるサル個体価格の高騰や供給不足が、今後の研究を進めるにあたり足かせとなっている。本研究の目的は、カニクイザルを用い心停止ドナー子宮移植の安全性を確認することであるが、研究課題名「少子化対策としての心停止下提供子宮移植普及へ向けた基礎研究(動物実験モデル)」にあるよう、動物実験モデルによる研究のため、カニクイザル以外の動物(ピッグなど)での検証も進めることにより、本研究を遅滞なく進めなくてはいけない。カニクイザルでの子宮移植研究は、すでに実験モデルとして立ち上がっているため、サルの入手ができれば研究を進められるのに対し、ピッグでの子宮移植研究は、個体確保が比較的容易であるが、新たに有効な実験モデルの確立から始めなくてはいけない。 1)サル心停止提供下子宮移植の研究について:本研究の問題点は個体確保にあり、安楽殺された屍体サルでさえ、本研究用には1頭/2年の確保が限界であった。生体サル個体確保困難な場合は、ピッグでの研究への完全移行も視野に入れたい。 2)ピッグ心停止提供下子宮移植の研究について:本研究では、より確実に血管吻合ができるよう出産歴のある実験用ミニブタを使用するため、年間に確保できる頭数もカニクイザルほどではないが限られている。そのため、ピッグ自家子宮移植モデルが3件連続で成功し、手術手技や周術期管理が安定して行えることを証明した後、ピッグ心停止提供下子宮移植研究を開始する。その際には、3Rの法則に従い、まず、他実験で使用された安楽殺前のピッグを用い、心停止後に子宮グラフトを摘出する実験から始める。本邦では、心停止前よりカニュレーションができるため、カニュレーションの有無による灌流の違いも検討したい。安定して子宮グラフトが心停止後摘出後でも灌流されることを確認してから、心停止提供下の子宮移植実験を始める。
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