研究課題/領域番号 |
22K09641
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤田 健二郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00452392)
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研究分担者 |
小玉 美智子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70791391)
木瀬 康人 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90778531)
中村 幸司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00900151)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 卵巣がん / 環状RNA / 高異型度漿液性腺癌 / 子宮内膜症関連癌 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣癌の組織型の約75%を占める高異型度漿液性卵巣癌と子宮内膜症関連卵巣癌の組織および対側の正常卵巣より RNA を抽出し、circular RNA microarray を行い、卵巣がん特異的に発現が亢進している環状 RNA を同定し、その機能を明らかにし、腹膜播種進展に果たす役割を解明する。動物実験として、卵巣癌組織を免疫不全マウスに移植するPatient-derived xenograft (PDX) model を用い、臨床応用につながる成果を創出する。患者血漿を用いて、デジタル PCR 法により血漿中の環状 RNA の発現量を定量し、そのバイオマーカーとしての可能性を証明する。
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研究実績の概要 |
卵巣がんは現代でも少なくとも3分の1の患者が死亡する“致死的な”疾患である。卵巣がんの予後を根本的に改善させる方策の一つとして、早期発見につながる新規バイオマーカーの開発と新しい腹膜播種治療法の確立が挙げられる。そこで、予後不良な卵巣がんの腹膜播種制圧を目指し、血漿中に僅かであるが安定して存在する環状RNAに着目した。 令和4年度は、卵巣明細胞腺癌(以下OCCCとする)に焦点を当てた解析を行った。OCCCの2症例について環状RNAのマイクロアレイを行い、OCCC特異的に発現が上昇する環状RNA (circSOD2) を同定した。circSOD2がOCCCの細胞株で高発現であることをRT-qPCRで確認した。また明細胞癌組織においてもRT-qPCRを行い、circSOD2は正常卵巣や良性子宮内膜症に比べてOCCCで高発現だった。更にKaplan-Meier法でcircSOD2の発現量と患者の予後を分析すると、高発現群で全生存期間が短かった。circSOD2がOCCCの予後不良に関与する可能性が示唆された。 高異型度漿液性卵巣癌における環状RNAの発現とその働きを解明するため、高異型度漿液性卵巣癌2症例においても環状RNAマイクロアレイを実施した、両症例で対側の正常卵巣と比して高発現であったのはcirc ESRP1およびcirc ZNF778であった。この2種類のうちcircESRP1の方がより高発現(Fold change:18.9)であったためcircESRP1について機能解析を実施した。circESRP1の機能を調べるためsiRNAでcirc ESRP1をknock downさせた卵巣がん細胞株OVCAR-3およびCaov-3の細胞増殖能を検討したところ、それぞれknock down細胞株で有意な低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣癌明細胞癌2症例、高異型度漿液性腺癌2症例で環状RNAのマイクロアレイを行い、それぞれの組織型に特異的に発現が上昇する環状RNA、circSOD2とcirc ESRP1を同定することができた。また明細胞癌に関しては29症例でのcircSOD2の発現を検討し、臨床検体におけるバイオマーカーの可能性を提示した。さらにそれぞれの細胞株を用いた機能解析を行い、それぞれのがん浸潤や増殖能に関わる役割を同定することができた。おおむね計画どおりに研究が遂行しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度はこれまでの研究で同定した環状RNAの抑制の腹膜播種治療の可能性をsiRNAを用いて検討する。我々は先行研究で卵巣癌手術の際に摘出する大網より線維芽細胞を初代培養し、それより抽出したエクソソームに封入した siRNA が体内においても患者の免疫細胞からの捕捉やヌクレアーゼにより分解されずに安定して存在し、またモデルマウスに腹腔内投与をすると専ら腫瘍特異的にエクソソームが取り込まれることを報告し、新たな核酸治療のがん組織へのデリバリー方法を確立した。今回の実験ではその大網由来のエクソソームを用いることで臨床応用を目指したIn vivo実験を行う。 さらに、今回の研究では従来のヒト卵巣癌細胞株の免疫不全マウスへの腹腔内移植によるCell line-derived xenograftではなく、免疫不全マウスに患者由来の腫瘍組織の一部を移植することにより腫瘍のHeterogenicityを忠実に再現するPatient-derived xenograft (PDX) modelを用いる。卵巣癌組織片を小切開し、マウスovarian bursaに移植する同所移植PDXマウスモデルの作成はすでに開始しており、こまでに3例ですでに作成に成功している。同所移植PDXモデルはヒトの癌そのものの組織型・ゲノム異常・タンパク発現などを忠実に保ち、マウスモデルにおける抗腫瘍効果は、ヒトへの臨床効果と強く相関する。作成したPDXマウスモデルに対して、先行論文に準じて、0.20μgのsiRNA-engineered exosomesを48時間ごとに3週間、腹腔内投与し、その治療効果をマウスの腹水量、腫瘍重量、播種の個数で検討する。コントロールとして、PBS、エクソソーム単独、Scrambled siRNAを封入したエクソソームを用いる。
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