研究課題/領域番号 |
22K09642
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木瀬 康人 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90778531)
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研究分担者 |
澤田 健二郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00452392)
橋本 香映 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (90612078)
小玉 美智子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70791391)
中村 幸司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (00900151)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 婦人科がん / 卵巣がん / 子宮体がん / ARID1A / ドラッグスクリーニング / 3次元培養 / PDX |
研究開始時の研究の概要 |
予後不良である抗がん剤抵抗性卵巣癌・子宮体癌に高頻度に認めるARID1A変異に特徴的な脆弱性を利用した新しい個別化医療の開発を目指す。卵巣明細胞癌・子宮体癌細胞株を用いてドキシサイクリンによるARID1A発現誘導の有無でLarge scale drug library screeningを行い候補化合物を抽出する。従来の細胞株のみならず、我々が樹立した婦人科癌患者由来腫瘍同所移植マウスモデル(PDX)ならびにPDX腫瘍を利用した3次元オルガノイド培養、Ex vivo Patient-derived explants (PDE)によって抗腫瘍効果を確認し早期の臨床応用へと繋げてゆく。
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研究実績の概要 |
本研究では、予後不良である抗がん剤抵抗性卵巣癌・子宮体癌に高頻度に認めるARID1A変異に着目し、この遺伝子変異をもつ癌に特徴的な脆弱性を利用した新しい個別化医療の開発を目指している。 まず、大阪大学薬学研究科との共同研究でFDA承認された薬剤ライブラリーを用いたLarge scale drug screeningを行った。ARID1A変異を持つ (ARID1Aタンパク低発現) 卵巣明細胞癌細胞株OV207と同細胞株のDoxycycline誘導性ARID1Aタンパク強制発現株を用いて、各薬剤を三日間暴露しWST assayによって比較検討した。1134種の薬剤のうち、Cell viabilityが50%以下となり、ARID1A発現の有無でCell viabilityの差が30%以上となる薬剤を11種同定した。そこから再現性を検討し、PemetrexedとTopotecanがARID1A低発現株において有意に高い薬剤感受性を示すことを見出した。さらにPemetrexedとTopotecanの併用療法は低濃度で相乗効果を示し、アポトーシス細胞の増加を示した。 現在この併用療法の分子メカニズムをRNA sequencing、Western blotting、Cell cycle analysisにて検討している。また、動物実験に用いるARID1A変異を持つ TOV21Gと同細胞株のARID1A強制発現株を作成している。そして、婦人科癌患者由来腫瘍 (Patient-derived xenograft; PDX) 同所移植マウスモデルの作成も行っており、現在までに卵巣癌PDXを21モデル、子宮体癌PDXモデルを3モデル移植し、約75%でPDX腫瘍を樹立した。このPDXモデルのARID1A変異の有無とAIRD1Aタンパクの発現を確認し、今後PDXマウスを用いた薬剤投与実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究「PDXとドラッグスクリーニングによるARID1A変異婦人科がんの個別化医療開発」では、以下の4つの研究計画を挙げている。 「1.ARID1A変異型ならびにARID1A野生型の婦人科癌PDX同所移植マウスモデルの確立」については、現在までに多くの卵巣癌および子宮体癌PDXモデルの樹立に成功しており順調に進展している。「2.化合物ライブラリーを用いたLarge scale drug screeningによりARID1A変異を持つ婦人科癌細胞に特異的に抗腫瘍効果を示す候補薬剤を同定する」についても、drug screeningを終了し、この結果に基づいた候補薬の絞り込み、再現性の確認を実施し、順調に進展している。 現在「3.候補薬剤の抗腫瘍効果をIn vitroとEx vivoにおいてARID1A変異の有無で比較検討し、さらにARID1A変異癌に著効する分子メカニズムを解析する」と「4.婦人科癌PDXマウスモデルを用いて、ARID1A変異癌に選択的に作用する薬の抗腫瘍効果を確認する」の計画を推し進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
Large scale drug screeningによりARID1A変異を持つ婦人科癌細胞に特異的に抗腫瘍効果を示す候補薬剤の絞り込みを行い、PemetrexedとTopotecanがそれぞれARID1A変異OV207に特異的に効果を示すことを見出した。さらにPemetrexedとTopotecanの併用療法はARID1A変異OV207に相乗的な抗腫瘍効果を示した。 今後の研究として、この併用療法の分子メカニズムの解明と動物実験における抗腫瘍効果の確認を予定しており、以下の実験準備は概ね揃っており、精力的に研究を展開していく。 分子メカニズムの解明はRNA sequencingを行い網羅的な遺伝子発現変化から解析を行うとともに、Western blottingとCell cycle analysisでも検討を行っている。また、動物実験に用いるARID1A変異を持つ TOV21Gと同細胞株のARID1A強制発現株を作成しており、準備出来次第ヌードマウスに腹腔内投与し、In vivo imagingにて抗腫瘍効果を判定するとともに副作用発現についても評価する。婦人科癌患者由来腫瘍 (Patient-derived xenograft; PDX) 同所移植マウスモデルを用いて、発育したPDX腫瘍を用いた三次元オルガノイド培養によってもARID1A変異型とARID1A野生型で抗腫瘍効果を比較する。同PDXマウスを用いた薬剤投与実験でPemetrexedとTopotecanの併用療法の有効性と安全性を検討する。
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