研究課題/領域番号 |
22K09655
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
田中 智人 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (90411363)
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研究分担者 |
林 正美 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (00551748)
大道 正英 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (10283764)
田中 良道 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (10625502)
恒遠 啓示 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70388255)
上田 尚子 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (70920148)
藤原 聡枝 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (90707960)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 細胞外小胞 / 直接腫瘍移植モデル / 腫瘍免疫 / 癌免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞外小胞(EVs)は、細胞間のコミュニケーションを媒介し、免疫応答や血液凝固など様々なプロセスに関与している。EVsの中には抗腫瘍免疫における応答や、炎症を抑制する免疫寛容性などを誘導する様々なタンパクやメッセンジャーRNA (mRNA)、マイクロRNA (miRNA)が含まれており、癌細胞の免疫寛容や増殖や浸潤・転移に関わっている。我々のこれまでの実験では、癌細胞は自ら放出したEVsにより免疫寛容を引き起こしていることが示唆される。そこで本研究では、婦人科癌における癌特異的EVs内のmiRNAを同定し、EVsあるいはmiRNAが免疫細胞に及ぼす影響を解明する。
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研究実績の概要 |
子宮頸癌22例中11例のモデルマウス作成に成功し、成功率は50%であった。子宮体癌では92例中52例のモデルマウス作成に成功した。成功率は57%であった。腫瘍生着には腫瘍の悪性度が関与していると考えられた。病理組織学的に生着腫瘍は原発腫瘍の特徴を反映しており、免疫染色の特徴も一致した。さらに、DNA変異およびRNA発現も類似していた。また、EVs内のRNA発現も類似していることから、子宮頚癌および子宮体癌PDXは原発腫瘍の特性を維持しており、実験モデルとして適している事が確認された。 大腸癌および卵巣癌からの細胞外小胞の抽出に成功しており、卵巣明細胞癌では同一患者の正常卵巣と腫瘍組織から放出された細胞外小胞内に含まれるmiRNAについてマイクロアレイ解析を行い、正常卵巣組織と比較し癌組織で高発現を認めたmiRNA37種類を同定した。さらに、発現率が高く、特異的primerをもつmiRNA12種類を選択した。術前、術後の採血によりEV内miRNAを比較し、6種類(miR-30a-5p, miR-200a-5p, miR-200a-3p, miR-200b-5p, miR-200b-3p, miR-200c-3p)の癌特異的miRNAを同定した。また、大腸癌、卵巣癌ともに小胞径200nm程度のものが単球に有意に取り込まれていることを確認した。また、これらの小胞を取り込んだ単球からは種々のサイトカインが有意に放出されており、転移や浸潤に影響を与えていることが示唆された。In vivoではTe-EVsを投与した個体は明らかに癌の発育が早いことを確認しており、これらの癌組織から放出された細胞外小胞を特異抗体で制御することにより、免疫機構を利用した新薬の開発が可能であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、細胞外小胞(EVs)の免疫細胞に及ぼす影響について注目し、「癌細胞は自ら放出したEVsにより免疫寛容を受けている」と仮説を立て実験を進めている。EVsおよび、その内容物質は正常細胞と癌細胞でどのような差があるのか、またどのような物質がどの免疫細胞に取り込まれ、どのように免疫反応に影響するのかを検討する。 現在まで、卵巣癌および対側の正常卵巣からEVsを直接採取(Tissue exudative EVs; Te-EVs)することに成功し、EVsに含有される卵巣癌特異的miRNAを特定している。さらに、これらTe-EVsが末梢血単球細胞(PBMC)へ取り込まれていることも確認しており、癌細胞は自ら放出したEVsにより免疫寛容を引き起こしていることが示唆される。 さらに、子宮頸癌細胞株から抽出したEVsを用いてin vivo実験を行った。EVsを定期的に尾静脈注射した個体では、有意に腫瘍が大きく、EVsが腫瘍の増殖に関与していることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は抗EV抗体、免疫チェックポイント阻害剤などを用いて、実際の患者検体から作成した腫瘍モデル(PDX)による実験を行い、EVsが腫瘍免疫にもたらす影響を解明する予定である。
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