研究課題/領域番号 |
22K09734
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
加藤 伸郎 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10152729)
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研究分担者 |
三輪 高喜 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20229909)
小野 宗範 金沢医科大学, 医学部, 教授 (30422942)
山本 亮 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (30447974)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 嗅覚奪取 / アルツハイマー病 / モデルマウス / 認知障害 / 気分障害 / アミロイド沈着 / 扁桃体皮質部 / 嗅覚 / 情動調節 / うつ様行動 / アルツハイマー病モデル |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー病(AD)患者では、軽い物忘れから始まって認知症状が進行し、やがて情動障害が出現する。嗅覚障害と認知症状の間には相互増悪作用が見られるが、情動症状に関しては不明点が多い。ADモデルマウスでは、情動中枢である扁桃体のうち嗅覚と関りの深い部分にアミロイド集積が見られる。この集積を手掛かりにして、におい刺激による選択的脳賦活やアミロイド低減なども含めた新規AD治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
アルツハイマー病モデルマウス(3xTg-ADモデル)と野生型の2遺伝型マウスに対して、除嗅球またはシャーム手術を行って4実験群を作製した。嗅球除去はほとんどのケースで完全除去であり、少数例では不完全除去であっても前半分は除去されているので嗅覚入力は完全に奪取されたことになる。実際、生得的忌避行動を起こす物質としてキツネ尿抽出物の派生化合物である2MTを使い、高架十字迷路様の長方形のオープンフィールドを使ってマウス行動を解析したところ、除嗅球による忌避行動の減弱が観察できた。しかし、メチマゾールによる嗅上皮の破壊では忌避行動は残り、嗅覚情報の単純な低下によっては扁桃体経由とされる生得的忌避行動の損なわれないことが解った。 また、ADモデルおよび野生型マウスにおいて嗅球除去を施すことによって、不安様行動が出現し、その再現性も確認できた。モリス水迷路試験と新規物体識別試験で認知機能を調べたところ、野生型マウスにおいては認知機能低下が見られたが、ADマウスでは違いがなかった。ADマウスではそもそも嗅球除去をしなくとも認知機能が低下しており、嗅球除去により、これに加えてより一層の認知機能低下が起こっていると想定されるが、これを充分に検出できなかったものと考える。今後は行動テスト課題の容易化をはかり、悪化が検出できるようなシステムの構築に努めたい。 一方、嗅覚入力を受ける扁桃体皮質部(CoA)、および情動・認知と関連の深い海馬腹側部と背側部において、アミロイド沈着の組織学的検索を行い、除嗅球のアミロイド沈着への影響も免疫組織化学的に調べており、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
除嗅球の手法と、嗅覚奪取の行動的確認、そしてその後の認知および情動関連の行動試験について習熟した。アミロイド沈着とリン酸化タウ神経原繊維変化の免疫組織的検出、およびニューロンやグリアとの多重染色などもラボ内で容易に実現出るようにした。扁桃体皮質部において除嗅球がもたらす電気生理学的変化の検出については、陳旧化した防振テーブルの入れ替えを行い、記録チェンバー周りの還流装置を点検するなどチューニングは充分に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
ADモデルマウスにおける認知の増悪については、軽快とは異なり検出が難しいことを再認識しているが、これは認知テストパラダイムを容易化することによって対処する予定である。またT字迷路などこれまで使用してこなかったテストの利用も検討したい。 除嗅球後にもたらされるアミロイド沈着の変化を解析中であるが、並行して行っている他の研究によりアミロイド沈着には性差と部位差のあることが明確となり、また生後2年近くとなると沈着が極めて多数出現して定量化が容易になることが示唆されている。これを参考に、除嗅球の影響を定量化するために、対象をより高齢のマウスにも広げて、時間軸における変化率を評価することを予定している。 一方、アミロイド沈着より早期に出現していることが判明してきたリン酸化タウ神経原繊維変化へも解析範囲を広げる。
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