研究課題/領域番号 |
22K09750
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
若林 毅 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (40868600)
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研究分担者 |
大石 直樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (10348740)
中村 康平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (10775802)
和佐野 浩一郎 東海大学, 医学部, 准教授 (40528866)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 一側性聴神経腫瘍 / 網羅的ゲノム解析 / 全エクソーム解析 / メチル化解析 / MLPA法 / 臨床応用 / 孤発性聴神経腫瘍 / NF2遺伝子 / qPCR / 網羅的遺伝子解析 / 聴神経腫瘍 / ゲノム解析 / ドライバー遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
一側性聴神経腫瘍の発生には体細胞変化が関与し、また腫瘍の発育速度、嚢胞化、周囲神経への影響などは、腫瘍本体の遺伝学的な性質に影響されると考えられている。そのため腫瘍本体のゲノム解析が重要だが、その報告は少ない。一方、本施設は聴神経腫瘍手術について国内屈指の実績があり、現在、摘出した一側性症例の病理組織から次世代シーケンサーを用いて全エクソーム解析を行っている。そこから、多くの症例でNF2遺伝子がドライバー遺伝子として特定され、稀に例外も存在することが明らかになった。今回、網羅的な解析により腫瘍化や臨床的な性質に関与する遺伝学的な機構を明らかに し、病態の原因解明とともに創薬へとつなげたい。
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研究実績の概要 |
一側性(散発性)聴神経腫瘍の切除検体を用いてゲノム解析を行い、その結果と臨床的な特徴を比較することによって、腫瘍化あるいは臨床的な性質に関与する遺伝子の解明を試みている。昨年度は19サンプルを用いて全エクソーム解析(WES)を行い、16サンプル(84.2%)がNF2遺伝子の両Alleleで、3サンプル(15.8%)が片Alleleで変化しているという結果だった。 今回は同サンプルを用いて、さらに片AlleleのみのNF2遺伝子変化を有するケースについて、遺伝子突然変異を伴わずに遺伝子発現パターンが変化(エピゲノム変化)した可能性を考え、メチル化解析を用いたNF2 遺伝子プロモーター領域におけるエピゲノム変化を評価を行なった。十分量得られた17サンプルに同解析を行なったところ、6サンプル(35%)でメチル化が起こっていた可能性が示唆された。なおWESでNF2遺伝子が片Alleleのみで変化していた3サンプルのうち2サンプルでメチル化が検出され、この2サンプルについて変化が検出されなかったAlleleにはメチル化による変化が起こったことで腫瘍発生に至っていたと考えられた。 なお、WESでNF2遺伝子の両Alleleが変化していたケースでメチル化も検出されたものが4サンプル見られた。このようなケースの臨床所見への関与について調べてみると、腫瘍サイズはKoos分類IまたはIIであっても、初診時の聴力検査結果は全サンプルの平均(純音聴力検査:45dBHL、最高語音明瞭度:65%)よりも不良であった(純音聴力検査:52.5-93.8dBHL、最高語音明瞭度:0-25%)。このことからメチル化かが臨床表現型を修飾した可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々のここまでの網羅的解析の結果から、一側性(散発性)症例において多くがNF2遺伝子の体細胞ゲノム変化が関与していることがわかった。遺伝学的な機構の解明について、当初の予定通りおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析において、WESのみでNF2遺伝子の両Allele変化を指摘できたケースは19サンプル中16サンプル(84%)、さらにメチル化解析を追加すると18サンプル(95%)であり、逆に指摘できていないのは1ケースのみである。しかしながらこの唯一の1ケースのMerlinの免疫染色を調べると陰性であることから、ドライバー遺伝子はNF2遺伝子であると考えている。 一般的にWESではCNV(Copy number variant)は同定できないことも多く、今回我々で行なったWESにおいて片AlleleのみのNF2遺伝子変化を有するケースについては、CNVが見落とされている可能性も否定できないと考えた。そこで、今後はCNVの検出に優れたMLPA法(Multiplex Ligation-dependent Prove Amplification)を行う予定である。
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