研究課題/領域番号 |
22K09755
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野村 泰之 日本大学, 医学部, 講師 (20297815)
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研究分担者 |
弓削 類 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (20263676)
村上 正人 国際医療福祉大学, 臨床医学研究センター, 教授 (60142501)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | エクソソーム / アポトーシス / オートファジー / ツニカマイシン / 持続性知覚性誘発めまい / PPPD / 内耳前庭培養細胞 / miRNA / 前庭細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
めまい疾患にはさまざまな病態がある。そして持続性知覚性誘発めまい(PPPD)にともなうめまい症状などいまだに解明されていない病態も多い。 その病態の一端として、末梢内耳臓器と中枢間での臓器ストレスなどの情報伝達がめまい発症に関与するとも推察されるが、その詳細は不明である。 そこで本研究では近年着目されてきている臓器間におけるエクソソーム、miRNAを介した病態情報伝達メカニズムに着目し、培養内耳細胞、前庭細胞を用いてストレスなどに曝露された際の病態情報伝達のメカニズムを分子生物学的に解明していくものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、なぜ持続性知覚性誘発めまい(PPPD)という疾患が内耳前庭の障害に起因しつつも身体の他領域にも関わる多様な症状・病態を示すのか、という疑問の一端を、近年着目されてきているエクソソームによる細胞外への情報伝達機構をふまえた検討・解明を目指すものである。 PPPDの発端となるめまいなどの内耳前庭障害疾患においては内耳前庭細胞において小胞体ストレス誘導性細胞死が生じているとも考えられ、そこではアポトーシスやオートファジーなどの細胞処理機構が働き疾患病態を誘導していると考えられる。さらにPPPDは平衡障害のみならず心因性、視覚性、など内耳前庭とは隔たった遠隔臓器に関連する多様な機能的症状を呈することが知られている。 そこで本研究では、内耳前庭培養細胞(UB/UE-1)に対してツニカマイシン処理による小胞体ストレスを与えてアポトーシスやオートファジーの出現の有無を検討するとともに、多様な機能的症状をもたらす要因としてのエクソソームの細胞外情報伝達の可能性を検討するものである。まず、マウスの卵形嚢系内耳前庭培養細胞であるUB/UE-1にツニカマイシン処理をおこない小胞体ストレスを引き起こすことで、経時的な観察によりアポトーシスとオートファジーの有無を検証する。そこでは細胞死の有無を確認するとともに、アポトーシスとオートファジーの伝達経路の活性化の検証のためウエスタンブロット法でCHOP、cleaved caspase-3、cleaved PARP、LC3などの発現の有無を検証する。 さらにツニカマイシン処理したUB/UE-1細胞からエクソソームを含む細胞外小胞が放出されているかを検証する。そのためツニカマイシン処理細胞の培養上清からエクソソームの単離をおこない形態観察、ウエスタンブロット解析でのエクソソーム特異的表面マーカーの検証、ナノサイト計測による粒子の解析を行うものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、UB/UE-1細胞に対する小胞体ストレスの影響を検討するために、ツニカマイシン80μg/mlで処理したところ経時的な細胞死を示し、48時間処理で細胞生存 率が49.1%にまで低下した。また光学顕微鏡で経時的に細胞収縮およびblebbingといったアポトーシスに特徴的な所見を認めた。 次にツニカマイシン処理が小胞体ストレスに連動してアポトーシスおよびオートファジーの伝達経路を活性化するかをみるために、ウエスタンブロット法で CHOP、cleaved caspase-3およびcleaved PARP、LC3の発現を解析した。 ツニカマイシン処理12時間後にCHOPが発現増加し、24時間後にcleaved caspase3、cleaved PARPの発現増加を認めた。また、オートファゴゾームに特異的な局在を有するLC3-IIも処理後24時間で発現増加を認めた。処理後48時間の時点ではCHOP、cleaved caspase3、LC3-IIは発現抑制されたのに対し、cleaved PARPの発現 は維持されていた。以上から、UB/UE-1細胞のツニカマイシン処理による小胞体ストレスはアポトーシスとオートファジーを誘導していると考えられた。 そしてさらに、ツニカマイシン処理細胞の培養上清からExoQuick-TCによるエクソソームの単離を目指して観察した。その結果、電子顕微鏡では細胞外小胞抽出 液内に二重膜構造を持つ100-200nm程の小胞を認め、ウエスタンブロット 解析でCD-9およびCD-81の発現がみられた。 これらの結果から、抽出された細胞外小胞にはエクソソームが含まれ、すなわちツニカマイシン処理したUB/UE-1細胞からはエクソソームを含む細胞外小胞が放出され ている可能性が考えられ、本研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ、予定してきた研究実験内容としての、内耳前庭培養細胞UB/UE-1に対するツニカマイシン処理による小胞体ストレスでアポトーシスとオートファジーが誘導されることを検証し、また、ツニカマイシン処理したUB/UE-1細胞からはエクソソームを含む細胞外小胞が放出されている可能性を検証することができた。 今後の推進方策としてはまず、これまでに得られた結果の再現性の確認実験を実施する。すなわち今回同様にUB/UE-1に対するツニカマイシン処理を用いた小胞体ストレスモデルを作成しアポトーシスとオートファジーが呈されることを確認するとともに、ツニカマイシン処理細胞上清からエクソソーム単離を試みて同様の確認実験を実施して実験系の再現性を確認する。とくにエクソソームを含む細胞外小胞の検証によってより正確なエクソソーム単離を確立したい。 その上で細胞死由来のエクソソームがアポトーシスとオートファジーを誘導することを確認し、さらに細胞死由来のExo-miRNAのプロファイリングをおこない、内耳前庭細胞において特異的にアポトーシスとオートファジーの細胞内バランスを崩して細胞死誘導する可能性のあるmiRNAをピックアップする。 そして今度はエクソソームが細胞内に取り込まれるか否かを、エクソソーム膜細胞をexo-表面マーカーCD63の金コロイド染色をおこなって透過型電子顕微鏡下に観察する。またアポトーシスとオートファジーの細胞内バランスをオートファジーの分解能から確認するためにオートファジープローブを用いてオートファジー分解能を検証したい。
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