研究課題/領域番号 |
22K09758
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
小鎌 直子 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究部, 主任研究員 (30390892)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | がん / 上皮間葉転換 |
研究開始時の研究の概要 |
癌幹細胞(CSC)は、頭頚部癌の治療標的として期待されている。申請者は、独自に樹立した頭頚部癌細胞株を用いてCSCのプロテオミクス解析を行い、S100A10がCSCに特異的に発現していることを突き止めた。本研究では、S100A10に焦点を絞り、①がん幹細胞(CSC)を誘導・活性化する分子基盤は何か?、②転移と浸潤における細胞骨格の役割は何か?、③EMTにおける役割は何か?、④診断マーカーおよび治療標的としての妥当性はあるか?、を検討することにより、S100A10による頭頚部癌の悪性化のメカニズムを解明し、治療・診断標的としての有効性を検証する。
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研究実績の概要 |
癌幹細胞(CSC)は、頭頚部癌の治療標的として期待されている。私達は、独自に樹立した頭頚部がん細胞株(HPCM2)を用いてCSCのプロテオミクス解析を行い、S100A10がCSCに特異的に発現していることを突き止めた。S100A10はこれまで、がんとの関わりについては、ほとんど未解明な分子であるが、予備的解析から、S100A10は癌幹細胞性や悪性度と相関しており、S100A10ノックアウト細胞は、細胞骨格系に顕著な異常を生じた。また、共焦点顕微鏡を用いて細胞骨格を観察したところ、中間径フィラメントを構成するビメンチンがほぼ完全に消失していることを発見した。ビメンチンは、上皮間葉系転換(EMT)の最重要分子であることから、S100A10が頭頚部癌の悪性度を制御している可能性が急浮上した。本研究でS100A10に焦点を絞り、①CSCを誘導・活性化する分子基盤は何か?、②転移と浸潤における細胞骨格の役割は何か?、③ビメンチン制御とEMTにおける役割は何か?、④診断マーカーおよび治療標的としての妥当性はあるか?を検討する。本研究により、S100A10による頭頚部癌制御の分子基盤を解明し、診断と治療に向けた研究を展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S100A10の同定は、癌幹細胞(CSC)の解析から得られたので、ヒト頭頚部癌PDX細胞株(HPCM2)について、S100A10のノックダウン・ノックアウト細胞を樹立し、癌幹細胞との関連性を、in vitroおよびin vivoから解析した。その結果、in vitroでは、S100A10ノックアウト細胞で、スフィア形成能、がん幹細胞マーカーレベル、薬剤耐性遺伝子の発現が低下しており、癌幹細胞性との関わりを示した。しかし、一部のがん幹細胞マーカー遺伝子、薬剤耐性遺伝子には、親細胞との差がないものもあった。一方、in vivoでは、超免疫不全マウス(NOG)を使って、造腫瘍性の比較を行った。その結果、親細胞とは対照的に、マウスに移植されたS100A10ノックアウト細胞は、腫瘍を全く形成できないことが判明し、S100A10と癌幹細胞性との強い関連性が示された。 その後、in vitroで、対照細胞に比べ、S100A10ノックダウン細胞およびS100A10ノックアウト細胞の創傷治癒能、細胞遊走能、細胞浸潤能が有意に低下していることが判明した。 また、細胞遊走能・浸潤能低下のメカニズムを探るために、共焦点顕微鏡下でのタイムラプス観察を行った。すると、対照細胞が非常に活発に移動しているのに対し、ノックアウト細胞はほとんど静止しており、両細胞の移動距離に有意な差が出たことから、S100A10は、細胞運動に欠かせない分子であると結論付けた。 ここまでの解析により、S100A10が、がん幹細胞性やがん転移浸潤・遊走と深く関わっていることが明らかとなり、今後のS100A10のがん悪性化に関するメカニズム解明が順調に進められると考えるから。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析から、S100A10は、がん幹細胞性やがん転移浸潤・遊走と深く関わっており、頭頚部扁平上皮癌におけるがん悪性化分子として、見逃せない存在であることが示された。さらにS100A10は、浸潤・転移において重要な細胞の運動機能、すなわち細胞骨格系の活性化に必須であることが明らかとなった。 したがって今後は、頭頚部扁平上皮癌の悪性化に及ぼすS100A10のメカニズムを、さらに詳細に分析する。まず、①細胞運動に関わっている代表的な分子であるMyosin-9(NMHC-A: nonmuscle myosin heavy chain)およびMyosin-10(MHC Ⅱ-B)に注目し、S100A10とのアフィニティーを調べる。また、②細胞骨格マーカーとしてビメンチン・Actin・Tubulinを共焦点顕微鏡で観察し、これによって細胞形態と骨格系に対する影響、遊走・浸潤での役割を解明する。また、EMTは頭頚部扁平上皮癌の浸潤・転移においても必須であるが、S100A10によるEMT制御については未解明である。これまでの解析によって、S100A10をノックアウトするとVimentinの発現が消失するという驚くべき結果を得ている。そこで、③間葉マーカーVimentinと上皮マーカーE-cadherin等への影響、また、細胞間接着に対するS100A10の役割を解析する。
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