研究課題/領域番号 |
22K09760
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
菅野 江里子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70375210)
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研究分担者 |
富田 浩史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40302088)
田端 希多子 岩手大学, 理工学部, 特任准教授 (80714576)
小松 三佐子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 客員研究員 (00525545)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | アデノ随伴ウイルス / 視細胞 / オプトジェネティクス / 遺伝子導入 / 網膜 |
研究開始時の研究の概要 |
我々が新規に開発した光感受性クロライドイオンチャネルChimGt12 (特許出願PCT/JP2021/012283)を変性前の視細胞に発現させることで、変性を遅延させることに成功した。しかしながら、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV) の網膜下投与により遺伝子導入を行ったために、その効果は遺伝子発現部位に限局していた。より広範囲に遺伝子導入を行うことで、保護効果を高められる可能性がある。 本研究では、バイオインフォマティクスによりAAVのcapsidタンパク質を新たにデザインすると共に、細胞への透過性を改善する薬剤の検討により、硝子体内投与でも、効率よく視細胞へ遺伝子導入を行う方法を開発する。
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研究実績の概要 |
我々は新規光感受性クロライドイオンチャネルChimGt12を始めとした様々な特性を持つオプトジェネティクス遺伝子を開発している。動物実験において、視細胞へChimGt12を変性前に発現させることで、局所において視細胞変性を遅延させることに成功した。しかしながら、視細胞をターゲットとした遺伝子導入のためアデノ随伴ウイルス(AAV)の網膜下投与を行った結果、遺伝子導入部位が投与部に限局されていた。この結果として、網膜電図において評価が困難であった。一方、硝子体内投与は視細胞への到達は困難であるが、広範囲に導入するには理想的である。本研究では、広範囲に遺伝子導入を行うためのベクターおよび細胞へのAAV送達を改善する薬剤について検討を行う。 我々が行ったこれまでの実験において、既存報告のあるAAVのVP3キャプシドにコードされたチロシン残基変異体の硝子体内投与においても、投与遺伝子の視細胞への到達による発現は、十分ではなかった。そこで本年は、表面抗原と網膜におけるAAV受容体の結合のモデリングを行い、AAVの細胞への結合を変化させる候補capsidをデザインした。今後、細胞への感染効率および網膜組織への遺伝子導入効率を調べ、候補を絞る。 内境界膜の分解酵素として、植物由来酵素に着目し研究を行っている。培養細胞を用いた事前実験において、植物由来酵素がAAVの血清型に依存せず、使用した全ての血清型においてAAVの遺伝子導入効率を改善した。そこで本年度は、処理時間および濃度等について、細胞毒性を調べると共に、遺伝子導入効率について調べた。今後は、遺伝子導入効率の改善が見られ、30時間の継続暴露においても毒性の見られなかった酵素濃度において、内境界膜分解と遺伝子導入効率の改善を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、硝子体投与において内境界膜においてトラップされず、また、網膜内部までAAVが到達するためにAAV結合サイトのモデリングを行い、AAVの細胞への結合を変化させる候補capsidをデザインした。今後、これらについて、細胞培養および組織培養を用い、遺伝子導入効率および細胞毎の遺伝子導入効率を観察する予定である。組織培養としては、豚眼およびラットを用いたIn Vitroでの評価系を検討している。 また、我々は既に、植物由来酵素がAAVの血清型に依らず、細胞への遺伝子導入効率を改善することを確認している。そこで、導入改善が可能な濃度における毒性評価を詳細に行った。その結果、酵素の存在下においては細胞接着力の低下が見られるが、24時間までの処理後、培地交換を行った群においては細胞数の減少はなかったが、酵素処理30時間では細胞の減少が観察された。一方、培養開始時点からの植物由来酵素添加では細胞数の減少が見られた。 植物由来酵素添加時に細胞の結合力低下が見られたことから、細胞を浮遊させた状態でAAVの感染を行ったが、浮遊感染では遺伝子導入効率の増加が見られなかったことから、細胞とAAVの接する面積の変化による影響ではなく、酵素処理によりAAVの細胞膜への結合変化が起きていると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
AAV結合サイトのモデリングにより得られた、AAVの細胞への結合を変化させる候補capsidを含むベクターを遺伝子改変により作製する。作製したベクターからAAVを精製し、AAVの感染基準細胞であるHT1080細胞を用い、感染効率の変化を調べる。しかし、AAVの受容体との結合を変化させているため、HT1080での感染効率と標的細胞(視細胞や網膜色素上皮細胞)との遺伝子導入を反映していない可能性も考えられる。そのため、豚眼あるいは、げっ歯類の眼球を用いた組織培養において、網膜における部位発現を確認する。 植物由来酵素を用いた遺伝子導入においては、植物由来酵素(15mg/ml)暴露では細胞毒性が示唆されたため、硝子体内投与を考慮する場合は、低濃度で遺伝子導入改善効果が見られるか、が鍵となる。30時間においても毒性のない濃度であり、遺伝子導入効果もみられた植物由来酵素(5mg/ml)において、遺伝子導入効率の改善が見られるか、組織培養を用いて調べる。硝子体投与においては、植物由来酵素が内境界膜の細胞外マトリックスタンパク質を分解し、網膜組織への到達を高める可能性がある。 また、植物由来酵素の感染効率改善に関するメカニズムについて、細胞へのAAV結合および内在化(細胞内へのAAV遺伝子の取り込み)能力の改善の面から調べる。更に、フローサイトメーターにより、遺伝子発現レベルが1細胞において亢進しているかを調べ、植物由来酵素のAAV遺伝子発現増加への影響を明らかにする。
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