研究課題/領域番号 |
22K09768
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
井上 みゆき 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 医学教育部研究員 (20631766)
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研究分担者 |
井上 俊洋 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (00317025)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 緑内障 / TGF-β2 / 線維柱帯細胞 / 結膜線維芽細胞 / 線維化 / TGF-β |
研究開始時の研究の概要 |
緑内障は失明原因の上位を占められていることが既に報告されている。緑内障の要因の一つである眼圧上昇は網膜視神経節細胞死を誘導し、その結果失明に至る。この眼圧上昇には房水中のTGF-β2やサイトカインが関与し、房水流出に関わる細胞の機能を変化させることで房水流出を妨げ、さらには緑内障手術の治療成績にも影響を与え、緑内障病態を悪化させていると考えられている。我々はこの細胞の機能変化はTGF-β2等による遺伝子発現を制御するエピゲノム変化に寄るものではないかと考え、緑内障病態におけるエピゲノム変化を調べることにより緑内障治療および新規薬剤開発へ貢献することが出来るのではないかと考え、本研究を実施する。
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研究実績の概要 |
緑内障は失明原因の上位であり、日本においても有病率は40歳以上で5%と高値であることが報告されている。治療としては点眼薬にて眼圧上昇を抑えることであるが、点眼薬によって眼圧上昇が抑えられない場合には手術によって流出路を形成し、房水流出を増加させ、眼圧を下げる治療を選択することとなる。緑内障患者房水中に多く含まれているTGF-β2やサイトカインは房水流出調節に関わる線維柱帯細胞やシュレム管内皮細胞の機能を変化させ(線維化)房水流出を妨げ、さらに緑内障手術の治療成績にも関与し緑内障病態を悪化させる。現在までエピゲノムの変化が細胞増殖、分化、癌、老化、線維化に関与していることが数多く報告され、エピゲノム変化に伴う遺伝子発現制御において細胞内代謝の変化が鍵を握っていることが明らかにされつつある。緑内障病態においては細胞の機能変化にDNAメチル化やヒストンのメチル化・アセチル化といったエピゲノムの変化が関与しているかは明らかではなく、特にそれに伴う細胞内代謝における遺伝子制御については未だ不明な点が多い。 現在まで申請者は、緑内障と関連している生理活性物質であるTGF-β2に着目し、線維柱帯細胞や緑内障手術成績に関わる結膜線維芽細胞を用い、TGF-β2による細胞の変化について研究を行ってきている。これまでにTGF-β2による線維柱帯細胞や結膜線維芽細胞にもたらす線維化様の変化がヒストン脱メチル化酵素であるLSD1の阻害剤によって抑制され、さらに代謝関連遺伝子の発現にも関与していることが明らかになり、この変化がどのようなメカニズムで生じているかなど検討している。本研究は基礎的研究観点から、緑内障病態と細胞内におけるエピゲノムの変化、またそれに伴う細胞内代謝に関わる遺伝子制御機構との関連性を探り、新しい知見が今後の緑内障治療および新規薬剤開発へ貢献することを目的とし実施することとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの緑内障病態関連の研究においては、TGF-βシグナルの活性化が房水流出を抑制すること、線維柱帯細胞においては細胞外マトリックスの産生増加や下流シグナルの活性化を導き線維化様の変化を誘導し、房水流出の機能を妨げていることが示唆されており、申請者も同様に研究結果を導いてきた。現在の研究室においてもヒト線維柱帯細胞または結膜線維芽細胞において、TGF-β2刺激下での細胞外マトリックス関連のコラーゲン、アクチン重合に関わるα-SMA等の遺伝子発現解析を行うと共に遺伝子発現を検討するための最適な培養条件検討も行ってきた。細胞培養条件を検討した結果、コントロール群、TGF-β2刺激群、TGF-β2刺激とLSD1阻害剤群において、既存の遺伝子発現変化を確認でき、実験を行う条件を決定した。TGF-β2刺激によって発現変動する遺伝子群はWestern blot法やreal-time RT-PCR法によって検討を行い、さらにLSD1の阻害した場合の発現については阻害剤だけでなくsiRNA技術を用いて検討を行っている。結膜線維芽細胞においてLSD1阻害剤を添加により、TGF-β2刺激によって発現誘導されてくるタイプ1コラーゲン1型、2型、αSMA、また解糖系代謝経路に関わる遺伝子(GLUT1、LDHA)が抑制されており、再現性についても調べている。またLSD1機能阻害によって影響を受ける他の代謝に関わる遺伝子についても同時に調べ、TGF-β2刺激によって発現が影響されるのかどうかについても検討している最中である。 RNA -シーケンス解析については細胞のロット、細胞培養状態が安定している条件を見つけ次第、コントロール、阻害剤を組み合わせ行えるように準備したいと考えている。これらについては所属研究室において常時行われている研究であるため、条件が整い次第、次の実験計画に移りたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカより購入するヒト線維柱帯細胞、及び結膜線維芽細胞においてはロットによって遺伝子発現に差が見られることから、どのロットを発現実験やRNA -シーケンス解析に用いるかをTGF-β2刺激によって発現誘導されるタンパク発現変化等で検討し決定する予定である。発現誘導が安定している細胞条件を見つけ次第、コントロール群、TGF-β2刺激群、阻害剤群を組み合わせ行い、解析するための準備、計画を進めていく。また、TGF-β2刺激後1時間から48時間まで経時的に線維化マーカーであるタンパク質発現変動について調べ、阻害剤との差が一番大きいポイントを決め、刺激後何時間後の細胞をRNAシーケンス解析に用いるかを決定する。RNAシーケンス解析は申請者所属研究所内にある次世代シーケンサーを用い、データを収集し、得られたデータからトランスクリプトーム解析を行い、増減に変動の大きかった遺伝子を選考する。データ解析、選考については研究分担者と共に議論、検討し決定することとする。 RNA -シーケンス解析で見出された遺伝子に関しては、ヒト線維柱帯細胞および結膜線維芽細胞において実際にTGF-β2刺激によって発現変動するかどうかをWestern blot法やreal-time RT-PCR法によって確認する。さらにTGF-β2刺激下においてLSD1を機能阻害した場合にも見出した遺伝子の発現変動についても調べる。またsiRNA技術を用いて見出された遺伝子を細胞内にて機能阻害した場合も、線維化に影響を及ぼすのかどうかも確認する。
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