研究課題/領域番号 |
22K09775
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
岡田 アナベル・あやめ 杏林大学, 医学部, 教授 (50303962)
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研究分担者 |
中山 真紀子 杏林大学, 医学部, 学内講師 (30736278)
渡邊 交世 杏林大学, 医学部, 非常勤講師 (90458901)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 網膜外層障害 / microRNA |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではAZOOR complex患者血清のmiRNAの発現、およびMEWDS、およびAZOORにおいて各々に特異的に発現、または共通して発現しているmicroRNAを同定、さらにその結果からBioinformaticsの手法を用いて予測される遺伝子ネットワーク、遺伝子pathwayを明らかにすることで、AZOOR complexの病態機序、またMEWDS、およびAZOORの分子レベルでの病態の違いについて理解し、予後予測バイオマーカーの確立、新たな治療標的分子の同定に繋げることを目的とする。
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研究実績の概要 |
急性帯状潜在性網膜外層症(acute zonal occult outer retinopathy: AZOOR)は若年女性に好発し、急激な視力低下と網膜外層障害が生じる視力予後不良の疾患であり、その発症に自己免疫学的な機序が指摘されている。一方、多発消失性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome: MEWDS)は患者背景がAZOORと共通している一方で視力予後の比較的良好な疾患であることから全身的な炎症・免疫学的な反応の違いも推測される。本課題ではMEWDSとAZOOR患者血清中のmicroRNAの発現パターンを比較することでepigeneticな視点からの各疾患の病態理解・分類に有用なバイオマーカーの確立を目指すことを目的とした。 令和4年度はAZOOR、およびMEWDSと診断された症例と健常人より血清採取し、マイクロアレイ解析、クラスター解析を行った。その結果、健常人、AZOOR群、MEWDS群の3群比較では健常人と疾患群(AZOOR+ MEWDS)は異なるクラスターに分類されたが、AZOORとMEWDSは同一クラスター内に分布していた。健常人と比較しAZOOR, MEWDSで共通して上昇を示したmiRNAは5種類、MEWDSのみで上昇を示したmiRNAは5種類、AZOORのみで上昇したmiRNAはみられなかった。一方、AZOOR, MEWDSで共通して低下を示したmiRNAは3種類、MEWDSのみで低下を示したmiRNAは2種類、AZOORのみで低下を示したmiRNAは22種類であった。これらの結果からAZOORとMEWDSでは近似したmiRNAの発現パターンを示す一方で、個々のmiRNAのレベルでは発現の違いがみられるものもあり、これらの発現の違いが各疾患のphenotypeの違いに関連している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度では悪性腫瘍などのバイオマーカーとして注目されている microRNA (miRNA)に着目し、MEWDSとAZOOR患者血清中のmicroRNAの発現パターンについてマイクロアレイの手法を用いて解析を行った。さらにそれらの結果から、クラスター解析、主成分解析などの機械学習の手法を用いて発現パターンの類似性について検証した。その結果、1) MEWDSとAZOORのmiRNA のプロファイルは健常人とは異なった発現パターンを示した。2) MEWDSとAZOORで比較したところ、ともに近似した発現パターンを示した。3) 健常人と比較した場合にMEWDSとAZOORで共通して発現上昇、低下していたmiRNAが存在していた。その一方でMEWDSのみ、AZOORのみで発現上昇、低下していたmiRNAが存在していた。 以上の解析結果からはepigenetic な変化としてはMEWDSとAZOORで共通している面があるものの、個々のmiRNAのレベルでみると両疾患の間で違いがみられることから、これらの発現の変動の差異がMEWDSとAZOORとの病態の違いに関連していることが推測された。来年度は症例数をさらに増やし、同様の結果が得られるかさらに検討を行う予定である。上記の結果から今年度の達成度は総合的にみて中程度であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は以下の2点について検討を行う。 1)今年度に得られた結果をもとに、MEWDSとAZOORの新規症例から血清を採取し、gene chipを用いたマイクロアレイ解析、クラスター解析、主成分解析を行い、miRNAの発現パターンの近似性についてさらに検討を加える。マイクロアレイ解析で得られた結果について抽出されたmiRNAを基に公共データベースKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)を用いて、gene-network pathwayを明らかにし、各疾患に共通したpathway、または特異的なpathwayを抽出することで病態形成の分子機序について考察する。 2) 解析を行ったMEWDS、およびAZOOR症例の経過中の視力、治療内容などの情報と、miRNAの発現パターンとの関連について検討し、予後予測に繋がる新たなバイオマーカー について探索を進める。 3) MEWDS、およびAZOORで発現の低下、または上昇したmiRNAについてぶどう膜炎の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を誘導し、眼内、または全身にそれらのmiRNAを補充することでEAUの病態に変動がみられるか評価し、miRNAを用いた眼炎症疾患に対する治療の可能性について検討する。
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