研究課題/領域番号 |
22K09781
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
竹内 悠記 沖縄科学技術大学院大学, 神経発生ユニット, スタッフサイエンティスト (00754904)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 水晶体 / FGF / ゼブラフィッシュ / 網膜 |
研究開始時の研究の概要 |
水晶体は上皮細胞と線維細胞から成り、水晶体前方に位置する上皮細胞は増殖を繰りかえしながら水晶体後方へと移動し、水晶体赤道面において線維細胞への分化を開始する。この赤道特異的線維細胞分化は、眼球内前後軸に沿って形成された線維芽細胞増殖因子(FGF)の濃度勾配によって規定されると考えらえているが、生体における実証は不十分であることに加え、実際に機能するFGFリガンド分子種は不明な点が多い。本研究はゼブラフィッシュ水晶体上皮細胞が線維細胞分化にいたるまでの多段階の動態を制御するFGFリガンドを特定し、多種のFGFリガンドが水晶体緯度依存的な細胞挙動の空間制御機構を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュの水晶体は、眼包に隣接する表皮外胚葉の肥厚による水晶体板の形成から始まり、細胞増殖による水晶体塊の形成と表皮外胚葉からの分離を経て形成される。その後、水晶体は単層の上皮細胞が水晶体核前方を覆う球形構造をとり、上皮細胞が水晶体赤道面で二次線維細胞に分化することで、線維細胞が水晶体核に規則正しく追加される。これら一連の水晶体発達における細胞の増殖や線維細胞分化は網膜から分泌されるFGFによって制御されると考えらえているが、FGFリガンドの種類や役割は不明であった。本研究では、ゼブラフィッシュの水晶体発生制御を担うFGFリガンドを同定し、その役割を調べた。その結果、水晶体発生初期では、神経網膜においてFgf3が発現し、MAPKおよびAKT経路を活性化することで水晶体プラコード/水晶体胞の細胞増殖と生存を促進することを発見した。興味深いことに、FGF3は網膜にも作用し、その成長を促進することで、網膜と水晶体のサイズバランスの調整にも関与する可能性が示唆された。一方、水晶体発生後期では、細胞分化初期の網膜神経節細胞においてFgf8aが発現し、水晶体の赤道の上皮細胞に作用することで、水晶体線維細胞への分化を促進することを発見した。網膜での網膜神経細胞分化が遅延するゼブラフィッシュ変異体では、FGF8aの発現時期が長くなるが、それに伴い、水晶体線維細胞分化も亢進していた。このことから、FGF8aは網膜神経細胞分化と水晶体線維細胞分化を介在するmediatorとして機能する可能性が示唆された。以上から、水晶体形成初期の細胞増殖と水晶体形成後期の線維細胞分化は、それぞれ異なるFGFリガンド種を介し、網膜の発達段階に応じて段階的に制御されると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュの水晶体発生過程において、Fgf3およびFgf8aが網膜から異なる発達タイミングで分泌され、水晶体の発達を制御することが示唆されていた。これら2種のFGFリガンドのシグナリング下流について調べた結果、水晶体発生初期に機能するFGF3は、シグナル伝達下流においてAKT経路とERK経路をともに活性化し、水晶体の細胞生存と増殖をそれぞれ促進することが示唆された。このFGF3は網膜自身の増殖と生存も制御することが示唆されたことから、網膜と水晶体の成長はFGF3を介して協調するように制御されると考えられた。 一方、水晶体発生後期には、FGF8aがERK経路を活性化し、水晶体線維細胞分化を誘導することが示唆された。実際、EGFPで標識したFGF8aを網膜で強制発現すると、FGF8aが水晶体カプセルの後方半球に蓄積することを観察できたことに加え、FGF8aは水晶体線維細胞への分化が開始される水晶体赤道面に隣接する分化中の網膜神経節細胞で発現することが確認された。これらの結果から、水晶体線維細胞分化は網膜の神経細胞分化とFGF8aを介して共役することが示唆された。 これらの研究結果は、水晶体発達を制御するFGFリガンド種の同定にとどまらず、眼の器官発生において水晶体と網膜の正しい大きさを決める新たな仕組みを提唱するものであり、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本課題の最終年度となることから、本課題で得られた成果に関する論文を投稿し、年度内の採択を目指す。
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