研究課題/領域番号 |
22K09788
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
近藤 峰生 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80303642)
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研究分担者 |
杉本 昌彦 山形大学, 医学系研究科, 教授 (00422874)
生杉 謙吾 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10335135)
松原 央 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (20378409)
加藤 久美子 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (50642071)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 網膜電図 / ERG / 小型化 / 皮膚電極 / 非侵襲化 / 自然瞳孔 / Stiles-Crawford効果 / 自動診断 / 無散瞳 / 低侵襲化 |
研究開始時の研究の概要 |
今回の研究の目的は、低侵襲化、短時間化、低ノイズ化、自動診断化を備えた次世代のERG装置の開発を推進することである。まず、あらゆる瞳孔面積に対してERG変化が最も小さいStiles-Crawford係数決定する。次に、小型ゴーグルを装着して、5分程度の短時間暗順応によるERG記録が可能かどうかを研究する。この結果は国際ERG標準化委員会で評価し、標準記録方法の1つとして検討する予定である。さらに、直流増幅と左右差し引きによるERGの低ノイズ化への試みを行う。最後に、遺伝性網膜疾患の診断に人工知能を用い、ERG波形および画像を組み合わせて自動診断を行うための基礎研究を実施する。
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研究実績の概要 |
今回我々は、患者の瞳孔面積(mm2)をリアルタイムに測定し、それに応じて眼内に照射する光量(cd/m2)を変化させて刺激照度(Td-s)を常に一定に保たせるシステム(現在臨床で使用されているRETeval装置)でERGを記録した場合、あらゆる瞳孔面積に対して同じERGが記録できるかどうかを研究した。その結果、刺激照度(Td-s)を常に一定にして刺激をしたとしても同じERGが記録できるわけではないこと、そしてその理由はStiles-Crawford効果を考慮していないことであることを発見した。Stiles-Crawford効果とは、視細胞に対して刺激光が斜めから照射された場合に視細胞に対して刺激効果が低下する生理現象である。また多数の正常者データを解析すると、このStiles-Crawford効果を考慮していないことによりERGの潜時は瞳孔面積に依存し、瞳孔が大きくなるほどERGの潜時が延長する傾向がみられることも報告した。これらの結果により、我々は無散瞳でERGを記録する装置にはStiles-Crawford効果の係数で補正する必要があるという仮説を立てた。そこで今回の研究では、無散瞳でERGを記録する際に、眼内刺激照度(Td-s)を一定にするだけでなく、Stiles-Crawford効果の係数で補正することによって、あらゆる瞳孔面積に対して同じERGが記録できるかどうかを多数の正常者のデータを解析して研究した。4種類のStiles-Crawford係数 (ρ, 0, 0.05, 0.085, 0.12)を用いて10名の正常者で実験を行った結果、ρが0.05から0.085の間においてあらゆる瞳孔径において比較的安定したERGの潜時が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において解決すべき重要な問いの1つとして、「無散瞳でERGを記録する場合の光量調節にStiles-Crawford効果の因子を考慮するべきか?」という問いがあった。これに対して我々は仮説からシミュレーションモデルを作成し、正常者から様々な瞳孔径の状態(散瞳剤点眼後の瞳孔径をリアルタイムにモニター)でフリッカーERGを記録し、そのfundamental componentの振幅と潜時をフーリエ解析で計算し、瞳孔の大きさにかかわらず安定したフリッカーERGが記録できるStiles-Crawford係数 (ρ)を推定することができた。この結果により、自然瞳孔(無散瞳)ERG検査における最適のStiles-Crawford係数(具体的には、ρが0.05から0.085の間)を決定することができたと考えられる。これにより、現時点において我々の解決すべき問い1はほぼ達成できたと考えられ、おおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで遺伝性疾患のERGの結果については一般の眼科医による診断が困難で、ERGや遺伝性網膜疾患の専門家による評価・診断が必要であった。そこで今後の研究では、ERGの評価対象となる主たる4つの波形(DA0.01、DA10.0、LA3.0、LAフリッカー)を標準化する試みを行う。正常者の波形を参考としてnormalizationし、その波形を使用して人工知能(AI)により診断することが可能かどうかを検討する。まず、我々の施設で過去に記録した患者のERG波形と診断名によるデータベースを作成し、AIに学習させ、それによりERG波形のみでどの程度の臨床診断率が得られるのかを検討する。さらに症例数を増やす目的で、全国の遺伝性疾患およびERGの専門家のグループで共同研究を行い、患者の性別や年齢、眼底、OCT、眼底自発蛍光も含めたAI診断の可能性を探る。ERGの評価対象となる主な4つの波形を、正常者の波形によりnormalization(標準化)して枠内に表示する。方法1では、あらかじめ正常ERG波形をもとに4つのERG成分の振幅と潜時を自動計測し、その数値データを用いる。方法2では、波形そのものをライン画像データとしてそのままAIに学習させる方法を試す。
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