研究課題/領域番号 |
22K09810
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
兼子 裕規 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20647458)
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研究分担者 |
田中 寛 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60850899)
田崎 啓 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80333326)
西川 義文 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (90431395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 網膜フェロトーシス / Toxoplasma gondii / LA-ICP-MS / Malondialdehyde / GPx4 / 寄生虫 / トキソプラズマ / シリコーンオイル / フェロトーシス |
研究開始時の研究の概要 |
フェロトーシスは2012年に提唱された細胞死の新概念であり、脂質過酸化と鉄(Fe)の関与を特徴とし、またこれを阻害することによって細胞死を抑制できる可能性がある。本研究の学術的「問い」として、ヒトの眼トキソプラズマ症やシリコーンオイル注入眼では網膜がFeを過剰に取込んでおり、これら疾患で見られる網膜障害にフェロトーシスが深く関与しているという仮説を立てた。本研究では、ヒトの眼トキソプラズマ症や、原因不明とされるシリコーンオイル関連視力障害におけるフェロトーシスの関与を科学的に証明し、これまで国内外で全く報告されていない「網膜フェロトーシス」という新概念を提唱することである。
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研究実績の概要 |
本研究では研究課題の核心をなす学術的「問い」として、ヒトの眼トキソプラズマ症やシリコーンオイル注入眼では網膜がFeを過剰に取込んでおり、これら疾患で見られる網膜障害にフェロトーシスが深く関与しているという仮説を立て研究を進めている。2022年度の研究によって、Toxoplasma gondii(T.gondii)感染ヒト眼球切片の網膜内からFeがLA-ICP-MS法によって検出された。またT.gondii感染後に眼球内に投与した安定同位体Fe57がマウス網膜内に有意に多く検出された。Fe57は自然界に約2%しか存在しないことから、ここで検出されたFe57は人工的に硝子体投与したFeと判断できる。この実験結果から、感染後に硝子体液中Feが網膜内に有意に取り込まれることが確認された。このT.gondii感染マウス網膜における鉄関連遺伝子を調べたところ、Fe取込に関与するTfrcやDmt1、Fe蓄えに関与するFthやFtlが亢進し、Fe排出に関与するFpnが抑制されたいたことから、網膜がFeを取り込む遺伝子的な動きが観察された。また、脂質酸化のマーカーであるmalondialdehydeや4-hydroxynonenal(4-HNE)が亢進しており、Glutathione Peroxidase 4(GPx4)が低下していた。これらのことからT.gondii感染によって網膜のFe取込だけでなくフェロトーシスの関与が強く示唆された。2023年4月に報告した2023年度実績状況報告書で報告した研究実績をもとに論文を作成し、2023年11月に眼トキソプラズマ症とフェロトーシスの関係を証明する論文が受理された。現在、シリコーンオイルとフェロトーシスの関係を証明する研究を再開し論文投稿の準備をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年11月に眼トキソプラズマ症とフェロトーシスの関係を証明する論文が受理された。現在、シリコーンオイルとフェロトーシスの関係を証明する研究を再開し論文投稿の準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
網膜フェロトーシスという概念が新規性があり、眼トキソプラズマ症という非常に国際的認知度が高い感染症での論文報告に成功した。現在、より眼科領域に限定された環境であるシリコーンオイルとそれに伴う視力障害に対してフェロトーシスという細胞死の新概念がどのように関係するかを証明する研究を再開し論文投稿の準備をしている。これらの成果を研究論文として報告するには追加実験がまだまだ必要と考えられる。また網膜フェロトーシス概念にはFe抑制による治療効果も期待できるため、Feキレート剤の投与による治療の検証を行う必要がある。これらの実験成果も得られつつあるが、さらに確認実験や追加実験を行うことでより確信に近い結果とすることが求められる。
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