研究課題/領域番号 |
22K09814
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
三田村 佳典 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (30287536)
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研究分担者 |
仙波 賢太郎 徳島大学, 病院, 助教 (10745748)
江川 麻理子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (70507657)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 外科 / 細胞・組織 / 生体分子 / 糖尿病 / 臨床 |
研究開始時の研究の概要 |
現在に至るまで増殖糖尿病網膜症などの増殖性疾患の眼内でのCdk5とERK活性は不明である。今回、硝子体手術時に得られた臨床検体サンプルを用いてPPARγ濃度、Cdk5、ERKの眼内での活性を検索するとともに、in vitroおよびin vivoでのCdk5、ERKの血管新生促進効果を確認し、Cdk5/ERK回路によるPPARγの調節機構と糖尿病網膜症の関連について検討し、将来的にCdk5またはERK/MEK阻害剤を投与することで増殖糖尿病網膜症の進行を抑制する治療薬としての可能性を探求する。
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研究実績の概要 |
我々は脈絡膜血管新生に関与しているPPARγ (peroxisome proliferator-activated receptor gamma)が糖尿病網膜症の進行にも関与していることを報告した。脂肪組織で特異的にサイクリン依存性キナーゼ5(Cdk5:Cyclin-depedent kinase 5)をノックアウトしたマウスで細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK: extracellular signal-regulated kinase)がPPARγを直接リン酸化する機序とインスリン抵抗性との関連性や、Cdk5がERKを制御することでPPARγの機能が調節されることが示された。そこで、今回、硝子体手術で得られる糖尿病網膜症の増殖膜、硝子体液を用いてCdk5とERKの活性を検索することを目的として本研究を立案した。 現在に至るまで増殖糖尿病網膜症などの増殖性疾患の眼内でのCdk5とERK活性は不明である。今回、硝子体手術時に得られた臨床検体サンプルを用いてPPARγ濃度、Cdk5、ERKの眼内での活性を検索してCdk5/ERK回路によるPPARγの調節機構と糖尿病網膜症の関連について検討する。 硝子体手術時に総計110以上の検体を採取済みで、得られた検体を解析するに当たっては倫理委員会での承認を取得し対象患者からは充分なインフォームドコンセントを得た。黄斑円孔・黄斑上膜(新生血管を含まないコントロール)、増殖糖尿病網膜症の手術時に灌流液を流す前に前房水・硝子体を吸引した後、直ちに-80℃にて保存した。また、黄斑上膜、増殖糖尿病網膜症の増殖膜検体を採取し、免疫染色用検体については直ちにOCT compoundに包埋し凍結させた後、-80℃にて保存した。RT-PCR用の検体についてはトリゾール0.5ccに浸し4℃にて保存した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象である増殖膜と硝子体液の検体は、増殖糖尿病網膜症ならびに黄斑円孔・黄斑上膜(新生血管を含まないコントロール)の硝子体手術時に順調に採取が進んでおり総計110以上の検体を採取済である。 Cdk5は主に神経細胞に発現しているリン酸化酵素であり、活性化サブユニットであるp35と結合することによって活性をもつようになる。そこで、Cdk5の活性化を調べる目的で、硝子体液中のp35濃度をenzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) kit(LS-F12376-1, LS-F11104-1; LifeSpan Bio- Sciences, Inc., Seattle, WA, USA)を用いて測定した。PDRを有する患者の硝子体液中のp35濃度の上昇は、眼局所でp35が産生されただけではなく糖尿病網膜症に伴う血液網膜関門の破壊により血漿中の成分が漏出して上昇した可能性があるため、この漏出による影響を最小限にするためp35の各濃度は総蛋白質濃度で除した値として評価した。硝子体液中の全蛋白質濃度あたりのp35濃度は、対照患者(188.86 ± 123.92 ng/mg)よりもPDR患者(367.13 ± 520.70 ng/mg)で有意に高かった(p=0.014)。以上の結果は研究の目的と照らし合わせると非常に有望なものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)令和4年度に引き続き、硝子体切除開始時に灌流液を流す前に硝子体カッターにて硝子体液を採取する。白内障手術併用時には白内障手術の前に前房水を採取する。採取した前房水・硝子体液検体はすぐに-80℃にて保存する。 2)増殖膜および特発性黄斑上膜の網膜前膜(新生血管を含まないコントロール)のヒト手術検体について、Cdk 5、p35、p20(p35の分解産物)タンパク質の発現量をWestern blotting法により確認する。また、同時に硝子体手術にて採取した硝子体液や前房水についてCdk5活性を測定するとともにPPARγ濃度も測定し両者に相関がないかを確認する。また、最近、眼科領域にて抗VEGF抗体による治療が盛んに行われており、増殖糖尿病網膜症手術前に抗VEGF抗体を硝子体内注射し、増殖糖尿病網膜症の活動性を低下させることがある。この抗VEGF療法後の眼内のPPARγ濃度、p35濃度、Cdk5活性の変化についても解析を行う。
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