研究課題/領域番号 |
22K09829
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
忍足 俊幸 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (40546769)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 神経保護 / 神経再生 / 神経細胞死 / 神経栄養因子 / 電気刺激 / 視神経挫滅 / 神経変性 / 視神経再生 / 多角的アプローチ / translational research |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では種々の神経保護・再生促進作用を有する数種類の戦略を組み合わせることにより、実現性の高い視神経再生治療を確立することを目的としている。そのためラット視神経挫滅モデルを用いて再生治療の多角的アプローチを計画し、その有用性と実現可能性について検討を加えることにした。本研究は視神経再生戦略の臨床応用を目的としたtranslational researchである。
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研究実績の概要 |
視神経再生治療は研究レベルにおいては既に視交差を越え大脳皮質まで再生線維を誘導できるようになってきている。そのいくつかの成功例の共通点は多角的アプローチによってなされていることである。ただし、遺伝子操作など実用性に乏しい手段を含み、再生効率も低いのが現状である。より実用性・汎用性に富み、かつ再生効率をあげるための工夫が必要である。また用いる視神経挫滅モデルはあくまで急性疾患のモデルであり、我々は確立した多角的治療戦略を糖尿病網膜症や緑内障などの慢性疾患へ応用することを最終目標としている。本研究では慢性疾患で治療戦略を確立する前に、より簡便で再現性の高い視神経挫滅モデルを用いて多角的でかつ臨床応用可能な神経保護・再生治療戦略を確立することを目的に実験を行ってきている。
我々は過去の報告で3種の神経保護剤の合剤を用いて神経保護・再生促進効果を検討しており3種混合剤が単剤よりも有意に神経保護・再生促進作用があることがin vitro網膜3次元培養及びin vivo視神経挫滅モデルで証明してきた。ただし、神経栄養因子であるNT-4は点眼では有意に作用しないため同じ方法では治療効果に限界が出ることも確認された。過去に最も視神経再生を長く誘導できた報告では電気刺激が治療の1つに選択されていた。はっきりしたメカニズムは不明であるが恐らく細胞内cAMP濃度上昇したこと、神経の生理的活動に近い刺激によりgrowth coneが健全な状態に保たれれていたことが理由として推察される。そこで我々も戦略の1つにTESを用いた電気刺激治療を選択肢の1つに含むこととした。growth coneを健全に保ちながら種々の神経保護因子を組み合わせることで視機能回復に十分な高い再生率を得られるか検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視神経挫滅モデルによって得られた過去の保存標本がすでにいくつかあるため、新規に動物を用いる前に検討項目である内因性神経保護・再生関連因子、生存・細胞死・再生に関わる内因性因子の発現状態を検討した。preliminary dataとして概ね予想通りの結果を得ているので、関連因子の検討についてはだいたいのメルクマールがついている。ただし、動物用電気刺激装置は故障のため新たに購入することになり、2023年4月中旬頃に注文できる状態にしてある(本年度予算繰り越しと他の科研費を合わせた上で購入可能)。入手次第本格的に新たに新規動物を用いた動物実験を計画・施行していく予定である。
また、将来的に視神経挫滅モデルで得られた知見は慢性疾患への動物に応用する予定であることから、糖尿病網膜神経細胞に終末糖化産物(AGEs)が与える影響について大々的に総説を記載した。AGEsは緑内障やアルツハイマーなどの脳疾患においても病態に関与していることが知られており抗AGEs治療は糖尿病網膜症や視神経疾患、脳変性疾患の治療にも応用可能である。それ故AGEsの病態や抗AGEs治療について現在の知識や最先端の報告をまとめておくことは今後の研究の方向性を定める上でも重要である。本総説はInternational Journal of Molecular Science (IF=6.208);2023:24:2927に無事掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
200gのSDラットを用いて視神経挫滅モデルを作成し、NT-4硝子体投与群(ただし1回のみ)、NT-41日2回点眼群、TUDCA1日2回点眼群、及び1W間隔の電気刺激単独群を作成し、1ヶ月後の神経保護・再生促進作用をBrn3a及びneurofilament+GAP43免疫染色で評価する。次いでNT-4点眼+TUDCA点眼+電気刺激群、NT-4硝子体投与+TUDCA点眼+電気刺激群で神経保護・再生促進作用を同じ手法で評価する。各々の群でリン酸化S6及びリン酸化S6K1の発現量、及びリン酸化elF-2α、CHOPの発現についても検討を加える。また細胞内cAMP濃度についても検討を加える。NT-4付加群ではS6、S6K1の活性増加、TUDCAではelF-2α及びCHOP発現量抑制(必要に応じてJNK活性についても検討を加える可能性あり)、電気刺激で細胞内cAMP濃度上昇が有意に高いかについて検討を加える。また再生促進が最も得られた群においてはコレラトキシン順行性ラベルで再生線維が視交差あるいは視交差を越えて伸張しているかどうかについても検討を加える予定である。時間があれば蛋白の抽出のためにまた別の系を作成し、検討項目にWestern blot解析を加えて評価する。また、副作用の確認のためVEGFの発現量を眼球全体で評価する。角膜障害については主に内皮細胞数について評価検討を加える予定である。
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