研究課題/領域番号 |
22K09842
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
藤枝 弘樹 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70280972)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 網膜 / ミュラーグリア / 増殖 / グリオーシス / p38 / ミュラー細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトを含む哺乳類の網膜は一度傷害されると再生しない。しかし魚類では網膜のミュラー細胞が増殖して神経を再生する。哺乳類のミュラー細胞が神経再生できない理由を明らかにするために、p38MAPKと呼ばれる酵素の役割に着目し、この酵素がミュラー細胞の増殖を抑制し、グリオーシスと呼ばれる反応を促進することで神経再生を阻害している可能性を検討する。ミュラー細胞におけるp38MAPKの役割の解明は、網膜疾患の新規治療法の開発に寄与することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、網膜傷害後に起きるミュラーグリアの増殖、脱分化、反応性グリオーシスの相互関連性とその仲介因子としてのp38の役割を明らかにすることにある。本年度は、ミュラーグリアの増殖と遺伝子発現を定量的に解析するための新規実験モデルを確立し、さらに阻害剤を用いたp38の機能解析を行った。我々はこれまでげっ歯類にメチルニトロソ尿素(MNU)を腹腔内投与することで視細胞変性モデルを作製し、傷害後のミュラーグリア増殖制御機構を解析してきたが、新たにメタンスルホン酸メチル(MMS)を用いた視細胞変性モデルの確立を進めており、網膜傷害およびミュラーグリアの反応性増殖の経過がMNUモデルとMMSモデルで異なること、MMS毒性に対する神経細胞の感受性がマウスとラットで異なることを明らかにした。また、MMS投与後に網膜を器官培養する実験系を確立するとともに、チミジンブロック法によりミュラーグリアの増殖を阻害し、細胞周期に依存した遺伝子発現変化を同定するための実験モデルを作製した。さらにミュラーグリアを分散培養により増殖させ、培養ミュラーグリアの核内タンパク質発現を画像解析により定量化し、種々の制御因子発現と細胞周期との関連性を解析する手法を確立することができた。これらの新規に確立した実験系を用いて、p38の機能解析を開始した。MMS投与後のラット網膜をp38阻害因子の存在下で器官培養したところ、ミュラーグリアの増殖および変性領域への細胞移動がp38阻害により有意に亢進することが明らかになった。したがって、p38が網膜傷害後のミュラーグリアの増殖および細胞移動を抑制的に制御していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MMSを用いた新規網膜傷害モデルの確立、培養ミュラーグリアの解析手法の確立に予想外の時間がかかった。また、当初リン酸化p38抗体を用いた解析も予定していたが、経年劣化で抗体が使用できなくなり、新規抗体の購入および評価に時間を要したため、年度内に十分な成果が得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、リン酸化p38抗体を用いて、傷害後のミュラーグリアにおけるp38活性化を定量化し、今年度確立した新規実験モデルを用いてp38の活性化がミュラーグリアの細胞周期進入に依存して起きる可能性を検討していく。さらに、p38阻害剤を用いた実験系により、p38の活性化がミュラーグリアの増殖や細胞移動を阻害し、かつ反応性グリオーシスを促進することを示し、そのメカニズムとしてp53やpStatとの関連性を解析していく予定である。
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