研究課題/領域番号 |
22K09847
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
杉岡 孝二 近畿大学, 奈良病院, 准教授 (50399119)
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研究分担者 |
岡田 清孝 近畿大学, 医学部, 教授 (20185432)
日下 俊次 近畿大学, 医学部, 教授 (60260387)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | コラーゲン合成能 / 角膜線維芽細胞 / substance P / TGF-beta / 神経麻痺性角膜症 |
研究開始時の研究の概要 |
神経麻痺性角膜症は、極めて難治性であるが、その発症機序は明らかではなく現在のところ確実で有効な治療法はない。近年、神経性因子は線溶系因子の発現を規制する働きがあることが報告されている。線溶系因子の中でurokinase-type plasminogen activatorは角膜潰瘍の病態に深く関与している。そこで今回、角膜神経障害の際に、神経性因子と線溶系因子が相互作用を持ち潰瘍の病態に関与しているという仮説を立てた。本研究では、コラーゲンゲル内でマウス角膜実質細胞を培養し神経伝達物質であるSubstance P(SP)によるuPAの発現およびコラーゲンゲル分解能の変化を検討する
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、神経麻痺性角膜潰瘍の根底にあるメカニズムを理解するために、神経伝達物質の一つであるsubstance P (SP)が、IL-1などの種々の因子で刺激された角膜線維芽細胞によるuPAの発現やコラーゲン分解にどのような影響を与えるかについて、角膜線維芽細胞をコラーゲンゲル内で3次元的に培養するin vitroモデルを用いて検討することである。 令和4年度は、まずはじめにヒト培養角膜線維芽細胞を用い、SP添加による細胞生存率をcell viability assayで検討した。その結果、SPの濃度に依存して、有意に細胞増殖を促進した。次にSP単独、あるいはIL-1, IL-6, TGF-beta, IGF-1の存在下でのSPの有無によるコラーゲン分解能を、fibrin zymographyによるuPAの発現、およびbヒドロキシプロリン測定による定量化試験で検討した。その結果、すべての群においてSPはuPAの発現およびコラーゲン分解能に影響を与えなかった。この結果により、SPがケラトサイトによるコラーゲン分解能に単独で影響を与えないだけでなく、IL-1, IL-6, TGF-beta, IGF-1の存在下においてもコラーゲン分解に影響を与えないことが明らかになった。 そこで、SP単独、あるいはIL-1, IL-6, TGF-beta, IGF-1の存在下でのSPの有無によるコラーゲン合成能を検討した。その結果、SPは単独ではコラーゲン合成に影響を与えなかったが、TGF-betaの存在下でSPはTGF-beta単独に比べ、コラーゲン合成を有意に促進させた。またMMP-1をコラーゲンの分解能の指標に、1型コラーゲンをコラーゲン合成能の指標に設定し、real time PCRにより角膜線維芽細胞のMMP-1および1型コラーゲンの発現を検討したところ、TGF-betaの存在下でSPを加えると、1型コラーゲンのmRNA量は有意に上昇していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定していたSPがケラトサイトのコラーゲン分解能に与える影響について、詳細に検討を行ったが、SPがケラトサイトのコラーゲン分解に影響を与えるという結果を得ることはできなかった。しかしながら、SPがTGF-betaによるコラーゲン合成能をさらに促進させるというデータを得ることができた。この結果によりケラトサイトによるコラーゲン代謝にSPが関与しているという知見を得ることができたことは、本研究を継続していく上で大きな前進となったと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果により、SPはTGF-betaの存在下でコラーゲン合成能を有意に促進させることが明らかになった。このTGF-betaによる角膜線維芽細胞のコラーゲン合成能に対するSPの増強作用のメカニズムについては、以下の項目を中心に令和5年度以降さらに検討していく予定である。 1.SPのレセプターであるNeurokinin-1 receptor-1(NK-1R)の発現や細胞内シグナル伝達経路にSPやTGF-betaが与える影響についての検討 2.TGF-betaによるコラーゲン合成に関与する細胞内シグナル伝達経路(Smad signaling)にSPが与える影響についての検討
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