研究課題/領域番号 |
22K09852
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56070:形成外科学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田中 顕太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20569503)
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研究分担者 |
植村 法子 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (10568017)
並木 剛 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (50401352)
加藤 小百合 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (70866839)
森 弘樹 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80345305)
横関 博雄 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (90210608)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 組織移植 / 移植組織の質 / 皮膚付属器 / 汗腺組織 / 術後機能回復 / 自律神経支配 / 発汗機能評価 / オーダーメイド再建術式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、周術期に種々の程度の血流障害を受け、かつ周囲の自律神経系を完全に切断された移植組織に含まれる皮膚付属器、特に汗腺組織が、術後どのような経過をたどりどの程度まで機能回復するのかを明らかにすることである。いままでに口腔内に移植された皮膚組織の術後組織学的変化について少数の報告はあるが、組織学的検討のみでは形態学的な評価しか行えない。本研究では汗腺の機能評価を行うことにより、形態学的評価に加えて、自律神経の再支配を受けてどれだけ機能が回復しているかまで踏み込んだ研究を行う。本研究を深めることにより、将来的に再建部位に応じた適切な皮膚機能を有する組織移植を行うことができる。
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研究実績の概要 |
形成外科では欠損した組織を再建するため自家組織移植を行う。必要な移植組織容量の評価については多くの研究が行われてきた。しかし移植組織の“質”に関する研究は現在までほとんど行われていない。術後移植組織の質の評価に迫る第一段階として、われわれは移植皮膚に存在する皮膚付属器の機能に着目した。中でも汗腺の働きは組織の質の決定に大きな比重を占めると考えた。 そこで移植された組織に含まれる汗腺組織が術後に受けるダメージと、そこからの回復過程を明らかにすることを目標とした。最終的には再建部位に応じた適切な皮膚機能温存(あるいは破壊)程度を基にしたオーダーメイドの再建術式開発を目指している。 本研究はヒトを対象とする臨床研究とラットを用いる動物実験の2本立てで行う計画である。ヒトを対象とする臨床研究では、実際に移植再建手術を受ける患者を対象に、手術前、術直後、一定期間経過後の移植皮膚組織を採取し、汗腺組織の形態や数量を計測する。また一度完全に切離された自律神経の再支配様式を立体画像として捉える。さらに移植された皮膚組織の発汗機能評価を行い、形態学的回復、自律神経再支配の様態、実際の発汗機能の3者の関連性について明らかにする。 それと同時進行でラットを用いた動物実験を進める。手術によって虚血や鬱血などの血管ストレスや自律神経支配の喪失といった侵襲を受けた皮膚の汗腺組織を、より条件の揃った状況下で観察することが目的である。 初年度はこれらの実験を行うために必要な環境整備として、臨床研究の本学医学部倫理審査委員会への申請と承認、動物実験計画書の申請と承認を行った。また適切な研究対象者の選択も進めている。ラットなどのげっ歯類では足底にしか汗腺組織が存在しないため、足底部の支配血管や支配神経を遮断するために新たな動物実験モデルを作成しなければならない。初年度はそのための文献的検索を中心に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究を推進するマンパワーとなる大学院生の入学が1年間遅れてしまい、研究に必要なマンパワーを確保できなかったことが、進捗状況が遅れていることの主原因である。また他に前例の少ない研究内容のため、本学の倫理審査において承認されるまでにやや時間を要した。 すでに先行して汗腺研究に関する業績を上げている本学皮膚科学研究室との研究協力体制を確立しているが、本年はその中心となる研究者が他病院の勤務で十分な情報交換ができにくかった。
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今後の研究の推進方策 |
大学院生の人員が確保されて研究推進に必要なマンパワーは整った。また汗腺研究を積極的に行っている皮膚科研究者も本学に帰学する。臨床研究の医学部倫理審査および動物実験計画書はすでに承認されており、研究を推進する環境は十分に整った。 現在は当初の計画に則り、順次研究を進めているところである。具体的な内容は以下に示す通りである。 ヒトを対象とした汗腺評価: 当科で遊離組織移植術、全層植皮術を行った患者を研究対象とする。患者属性や基礎疾患、手術部位や手術手技などを登録する。移植手術後の適切な経過観察時に、移植皮膚に含まれる汗腺の形態および機能評価を行う。具体的には、ミノール法による色調変化、サーモグラフィーによる体表温度評価、発汗カメラによる観察、発汗計による定量的軸索反射性発汗試験(QSART)を用いる。QSARTは節後性交感神経機能と汗腺機能を判定する方法であり、再現性に優れ無侵襲のため自律神経検査法として広く用いられる。以上の測定は、同一部位での術前術後の比較実験、同一部位での健側患側の比較実験を原則とする。 動物実験モデルの作成: SDラットを用いて組織移植実験モデルを作成する。測定に分布する汗腺組織へと至る血管や自律神経を遮断、あるいは切断する動物モデルを開発する。手術後の一定期間経過後に足底の発汗機能評価を行う。また足底組織を採取し汗腺の形態学的評価、自律神経の分布評価を行う。
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