研究課題/領域番号 |
22K09881
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56070:形成外科学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒田 一也 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00882292)
|
研究分担者 |
久保 盾貴 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00362707)
松崎 伸介 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (60403193)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | LIMK2 / ケロイド / アポトーシス / 皮膚線維芽細胞 / RhoA / 肥厚性瘢痕 |
研究開始時の研究の概要 |
ケロイド、肥厚性瘢痕の形成機構において、機械的刺激が重要な役割を果たしており、その中核を担うのが、Rho/ROCK/LIMK2/cofilin pathwayである。その中でも本研究で我々が着目するのは、LIMK2というタンパク質である。LIMK2はneurofibrominによって抑制されているが、neurofibrominの変異を病態とする神経線維腫症1型患者では、ケロイドの発生率は低い。また、LIMK2はDRP 1を介してネクローシスを誘導するという報告もあり、ケロイドの発生に深く関わると予想される。LIMK2の解析を通じて、ケロイド・肥厚性瘢痕形成機構の解明と治療法の開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
①活性型LIMK2を正常皮膚線維芽細胞に遺伝子導入することで、本来起こるはずの伸展刺激で筋線維芽細胞への分化促進が抑制されることが分かった。ケロイドの皮膚線維芽細胞では細胞死が抑制されることがすでに報告されており、またLIMK2はアポトーシスやネクローシスを制御しているタンパク質でもあるため、その解析も行なった。しかし皮膚線維芽細胞に活性型LIMK2を遺伝子導入しても細胞死の増減は見られなかったため、方針を変更した。
②不活性型LIMK2を正常皮膚線維芽細胞へ導入することでどのような変化が見られるか検討を行なった。非遺伝子導入群(control)、GFP導入群(GFP)、不活性型LIMK2-GFP導入群(LIMK2-negative)の3群での比較を行なった。まず、細胞増殖能について検討した。細胞播種後の細胞数を経時的に計測したところ、Control群およびGFP群では有意差を認めなかったものの、LIMK2-negative群においては48時間以降で有意に細胞数が少なく、ほとんど増殖しないことが分かった。またBrdUによる免疫染色でもLIMK2-negative群では有意に増殖能が抑制されていることが分かった。
③皮膚線維芽細胞の、伸展刺激を加えた際に生じるアポトーシスや筋線維芽細胞への分化の変化についても検討を行なった。Control群、GFP群、不活性型LIMK2-GFP導入群(LIMK2-negative)に対して、伸展刺激を加え、ウエスタンブロットでBAX、Bcl-2の発現を解析した。Control群、GFP群において伸展刺激群では非伸展刺激群と比較し、BAXの発現が減少、Bcl-2の発現は増加することが分かった。一方、LIMK2-negative群ではBcl-2の発現はその他の群と比較し有意に低く、 またBAX、Bcl2共に伸展刺激には反応しないことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたLIMK2活性型を遺伝子導入したところ伸展刺激に対する筋線維芽細胞への分化誘導は抑制することが可能であったが、アポトーシスや細胞死との関連を見出すことができず、方針を変更した。不活性型LIMK2を発現するアデノ随伴ウイルスは既に準備ができており、速やかに実験に取り掛かることができたため、時間のロスを最小限に新たな実験系に取り掛かることが可能であった。ケロイドや肥厚性瘢痕では機械的刺激が大きな原因となり、正常瘢痕と比べ筋線維芽細胞への分化促進やアポトーシスへの抵抗性が特徴となっている。我々の実験では、皮膚線維芽細胞は伸展刺激により筋線維芽細胞への分化を誘導しかつアポトーシスが抑制される可能性を見出しており、その制御因子としてRho経路に注目することで解析を行なっている。実際LIMK2を不活性化されることで、これらの伸展刺激に対する反応を起こさなくなることが示唆された。当初の計画とは異なる過程となっているが、概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
タンパク質レベルでアポトーシスの解析を行なっていたが、今後はBcl-xlやBAK、Caspaseなど他のアポトーシス関連タンパク質でも同様に解析を行う。また実際にどの程度の細胞がアポトーシスをきたしているのか、免疫染色を用いた解析も検討している。今回の実験では、活性型および不活性型LIMK2を遺伝子導入することで解析を行なっているが、今後あ新たな治療の開発を視野に入れた際、RhoA inhibitorやLIMK2 inhibitorが市販されており汎用性が高いと考えるため、これらを皮膚線維芽細胞に投与した場合どのような反応を示すのかも検討を行う。
|