研究課題/領域番号 |
22K09900
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
舩橋 誠 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (80221555)
|
研究分担者 |
乾 賢 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (40324735)
吉澤 知彦 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (70825744)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 悪心 / 嘔吐 / 最後野 / 孤束核 / 迷走神経 / 条件付け味覚嫌悪 / 味覚反応試験 / ラット / 忌避行動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の最大の問いは,「腹部が気持ち悪いという心の動きである悪心と胃の内容物を吐くという反射的な運動である嘔吐が起こる中枢神経の仕組みが異なっている可能性」についてである。これは,ガン化学療法における予期性悪心・嘔吐の機序の解明や,条件付け悪心誘発の中枢機序解明と治療法の確立につながる。悪心を感じても嘔吐しない場合もあり,悪心と嘔吐を区別して発現機序を解明できれば新たな概念を作ることができる。さらに,悪心と嘔吐の新たな制御方法の創出に道を開くことができる。さらに,条件付け悪心を誘発する中枢機序が解明できれば,神経性無食欲症の発症機序の解明や摂食障害の新たな治療法の開発にも繋がる可能性がある.
|
研究実績の概要 |
悪心の誘発機序について嘔吐と明確に区別して解明することを目的としてラットを用いた動物実験を行った。ラットは嘔吐しない動物であるが、悪心を感じて条件付け味覚嫌悪(CTA:conditioned taste aversion)を獲得する。CTAの記憶は薬物誘発悪心の重症度に比例して1日から1週間続くことが分かっている。特に本研究では、急性の強力な催吐性を有する吐根の成分であるエメチン,副作用として急性および遅発性の重篤な悪心・嘔吐を惹起する抗悪性腫瘍薬であるシスプラチンは重篤な悪心を誘発することが知られているが、シスプラチンによる悪心を誘発してサッカリンの甘味に対して味覚条件付けを行った場合に起こるサッカリン忌避行動が,サッカリン再摂取時に条件付け悪心を伴うかいなかが不明であったため、先ずはじめに味覚反応試験(Taste reactivity test:TR test)を行った。他に催吐作用のあるエメチン、トラネキサム酸についてもTR testを行った。ラットがCTAを獲得した場合に、甘味の再摂取時に条件付け悪心を感じているか否かはゲーピング行動の有無によって判定した。エメチン、シスプラチン、トラネキサム酸はいずれもCTAを惹起し、TR testでもゲーピング行動の著しい増加を確認でき、これら全ての薬物は悪心を誘発するとともに味覚に対する嫌悪感を伴う条件付け悪心を示すことが確定できた。次に最後野切除群と迷走神経求心路切除群およびそれぞれの偽手術群を作成して同様の実験を行ったところ、エメチン誘発悪心は最後野切除によってCTA獲得はほぼ消失するが、シスプラチン誘発悪心は最後野および迷走神経求心路切除の両方を行ってもラットのCTA獲得は消失しないことが分かった。さらに、このシスプラチン誘発のCTAはデキサメタゾン投与によりほぼ消失することが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種催吐物質を腹腔内投与することによるCTA獲得について着実に実験を行っており、また、新たにとりいれたTR testの実験手法も着実に実行してデータを得ることができるようになり、進捗状況は概ね予定通りである。国内学会における発表は対面形式で行い、有意義なディスカッションの機会を得た。しかし、国際学会はオンライン開催が主流のため十分な意見交換を行うことができたとは言い難い。できる限り早く国際的学術雑誌へ結果を公表をするために準備を始めている。以上から、おおむね順調な進捗状況であると判定した。
|
今後の研究の推進方策 |
最後野および迷走神経求心路切除の両方を行ったラットにおいて、シスプラチン誘発のCTA獲得を認めることと、これがデキサメタゾン投与によりほぼ消失することについては、できる限り早く国際的学術雑誌へ論文投稿できるように準備を進めている。今後の研究においては、最後野および迷走神経求心路切除を行ったラットを用いてTR testを行い、シスプラチンおよびエメチンの悪心誘発に関わる神経機序を明らかにする。さらに、甘味に対する味覚嫌悪を獲得したラットは、甘い溶液の摂取を忌避することは分かっている一方で、甘い餌の摂取を嫌悪するかどうかは不明であるため、これについても実験を行う予定である。これにより喉の渇きによる飲水欲求に対して味覚嫌悪記憶が飲水行動を抑制するのに対して、空腹感による食欲に対して味覚嫌悪記憶がどのように働くのかを考察することが可能となるのではないかと考えている。
|