研究課題/領域番号 |
22K09902
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10432650)
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研究分担者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (20112063)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90221936)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | S-adenosylmethionine / polyamine / droplet / chondrocyte / LLPS / cartilage |
研究開始時の研究の概要 |
SAMは関節炎に有効であることが示唆されているが、その作用機序は解明されていない。本研究では、SAMがポリアミン合成の材料源となるのみならず、ポリアミン合成の律速酵素ODCを誘 導してポリアミン合成を促進し、その結果として軟骨基質合成が亢進することを明らかにすること、およびその過程に軟骨再生因子CCN2の遺伝子発現誘導が関与しているのか否か、を解明する。さらにポリアミンの軟骨基質産生の制御機序について近年注目されている液-液相分離に注目して基質関連遺伝子の発現制御機構を明らかにすることでSAMの軟骨細胞に対する作用とその分子機序の全貌を解明し、SAMの臨床応用へ向けての分子基盤の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
S-アデノシルメチオニン (SAM) は、ポリアミン合成などさまざまな細胞内代謝経路において機能することで知られており、抑うつや肝疾患、変形性関節症(OA)などの症状を緩和することが報告されている。 しかし、そのメカニズムは明確にされていない。そこで、本研究ではSAMのOA症状緩和作用のメカニズムを解明するため、培養軟骨細胞に対するSAMの作用を調べた。ヒト軟骨細胞様細胞株 HCS-2/8、ラット軟骨肉腫由来軟骨細胞株 RCSを用いて細胞増殖および基質合成に及ぼすSAMの影響を検討したところ、SAM添加群で軟骨基質合成は昂進したが、細胞増殖促進作用は見られなかった。このことはSAMが単純に細胞増殖させるのではなく基質合成そのものを促進する効果があることが分かった。また、細胞内のポリアミン量をPolyamineRed染色およびHPLC分析で測定したところ、SAM添加群でポリアミン量が増加していることが分かった。次にSAMによる基質合成促進経路を明らかにするために複数のポアミン合成阻害剤を用いて検討したところ、ポリアミン合成経路がSAMによる基質産生促進作用に必須の経路であることが分かった。さらに、SAM は軟骨特異的マトリックス(アグリカン、II型コラーゲン)および軟骨形成関連因子 (CCN2、BMP2/4、ODC) の遺伝子発現を促進した。これらのことから軟骨細胞に対するSAMの分化促進の作用機序には、ポリアミンの合成促進と軟骨形成関連遺伝子の発現亢進の両者が関与していると考えられる。また、このことはSAMがメチル基供与体としてだけでなくODC発現においても促進的に働くことでポリアミン合成を全体的に正に制御する作用があることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SAMによる軟骨細胞への細胞生物学的な検討が順調に進展しており、ポリアミン合成の関与を明らかにすることができた。さらに各種阻害剤を用いて作用経路の解析についても研究中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは主にSAMを培養系に添加する実験を行ってきたが、内在性のSAM産生の影響を明らかにするためにSAMの合成酵素を阻害することで内在性SAMを低下させ、その作用を明らかにする。また、軟骨細胞分化および成熟における各過程でのSAMの影響を詳らかにするため、軟骨前駆細胞であるATDC5をITS刺激下で分化誘導し、軟骨細胞の初期分化、成熟、最終分化の各過程の分化マーカー、細胞形態、基質産生などにSAMがもたらす変化を観察する。さらに、SAM合成酵素阻害剤をマウスに投与し、胎生期から老年期までの軟骨分化、形成、維持にどのような影響が見られるかを総合的に明らかにする。それに加えてポリアミンによる細胞内での液滴生成を確認し、それによる遺伝子発現への影響を明らかにするために、PolyamineRedおよび抗spermine抗体で染色した細胞を共焦点蛍光顕微鏡での観察を行う。さらに液滴形成阻害した時の各種遺伝子発現変化を網羅的に解析する。
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