研究課題/領域番号 |
22K09903
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
馬場 麻人 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (90251545)
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研究分担者 |
守田 剛 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (40804513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 象牙芽細胞 / 象牙質形成 / FGFーFGFRシグナリング / Sprouty / 遺伝子発現 / 基質形成 / 修復象牙質 |
研究開始時の研究の概要 |
象牙芽細胞は、歯冠―歯根象牙質あるいは原生―二次―修復象牙質の形成のようなステージに応じて遺伝子発現を変化させていることが示唆され、本研究ではまずin vivo の系において、ステージ特異的な遺伝子発現を解析し、象牙芽細胞のSwitchingを明らかにする。また、in vitro の系では、培養象牙芽細胞で遺伝子発現を確認するとともに、in vivo の系で確認できたkey factorを導入することで、象牙芽細胞の基質分泌を再現させる。またマウス臼歯髄腔を開放し、key factor(FGFs)を投与し、硬組織形成、特に象牙質形成について確認し、局所的な象牙質の再生についても検討する。
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研究実績の概要 |
象牙芽細胞により、象牙質形成が活発に行われ、歯冠と歯根が形成され(一次象牙質形成期)、その後形成能は低下する。一方歯の萌出後も僅かであるが象牙質形成(二次象牙質と修復象牙質形成期)は継続するが、以上のステージの制御機構は未だ明確ではない。 今回、我々はまずin vivo における歯冠~歯根形成における、象牙質形成のステージに特異的な遺伝子発現(Key Factor:特にFGFsと関連因子)の描出を行うこととし、マウスの生後1、7、15日齢の上・下顎骨より第一臼歯を摘出した後Total RNAを抽出し、Key Factor候補となるFGF3, 10, 18について、Real-time PCRにより分析を行った。Fgf3,10は、これまで歯の発生時に間葉組織側で発現していることが報告されており、特にFgf10は歯冠形成から歯根形成期に移行するために重要な遺伝子とされている。また我々の過去の報告ではFgf18はラットにおいて歯根形成時に発現が増加することがわかっている。 結果、Fgf3は1日齢において発現量が高く、7日齢では顕著に低くなった。Fgf10の発現量は生後1日齢から7日齢で減少したが、14日齢における発現量は2倍に増加した。一方Fgf18の発現量は経時的に増加した。また、FGFシグナリングを抑制的に制御すると知られているSprouty familyについても検索を行い、Sprouty3, -4の発現量が経時的に増加し、Spred1, -2, -3が1日齢から7日齢で2倍以上に増加することを見出した。一方、In situ hybridizationの結果、Fgf18転写産物の局在は、14日齢において歯冠部および歯根部の象牙芽細胞に認められた。また、歯槽骨に隣接する骨芽細胞と、歯根膜相当部の線維芽細胞にも認められた。以上FGFおよびこれを抑制的に制御するSproutyが、象牙質形成の重要なSwitchとなっている可能性と歯周組織形成への関与も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は2021年度までの研究において、Dsppおよび Fgfr2c 転写産物の発現レベルが歯冠および歯根の形成期で高くその後低下すること、またFgfr1 と Fgfr3c 転写産物のレベルは歯の形成・萌出後も一定であることをReal-time PCRで確認し、さらにin situ hybridizationにより象牙芽細胞に Dspp、Fgfr1、Fgfr3c 転写産物が検出され、さらに8 週齢において修復(反応)象牙質に面した象牙芽細胞の一部に Dsppと Fgfr1 の転写産物が認められたことから、FGF-FGFR シグナル伝達が、二次・三次象牙質形成を含めた萌出後の象牙質形成の制御に関与している可能性を提唱し、本研究を企図した。今回、これらFGF受容体の発現パターンに加えて、そのリガンドであるFGF3が歯冠形成初期で,そしてFGF10は,歯冠形成初期と歯根形成期に、FGF18は歯根形成期に発現が亢進することで、各種FGFリガンドの入れ替わりながらのSwitchingが示唆され、さらにこれらを抑制的に制御すると考えられるSprouty familyの遺伝子発現の漸次的亢進が確認でき、これらの組み合わせによる象牙芽細胞の制御の形が見えてきている。そしてこれらの結果は、次に計画している、培養細胞もしくは器官培養の系へのこれら因子の導入に重要な情報のため、順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まずin vivoの系において臼歯萌出後(歯根形成終了後)の象牙芽細胞のFGF3, 10, 18をはじめとするFGFおよびSprouty familyの遺伝子発現を解析することで、二次象牙質と修復象牙質形成を制御する因子を検討する。次に、培養象牙芽細胞を用い、一般的な硬組織分化培地の中での細胞分化(Ⅰ型コラーゲン分泌・DSPPやDMP1発現・石灰化)とFGFおよびSprouty familyの遺伝子発現を確認する。逆に、遺伝子発現がない状態で、それらの因子を培養液中に転化した際の、細胞分化を含めた変化(DSPP、DMP1等の遺伝子発現や基質形成・石灰化等の形態学的変化)についても観察する。一方、器官培養においては、培養液中では、歯冠形成期までの再現が限界のため、歯根形成期へのFGFおよびSprouty添加実験のため、培養歯胚をこれらの因子を含浸したビーズとともに、腎被膜下に移植し、その変化を観察する。以上により、FGFおよびSprouty familyの培養象牙芽細胞や器官培養歯胚における発現が明らかになるとともに、それら因子の象牙芽細胞への効果も明らかになると考える。
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