研究課題/領域番号 |
22K09904
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
溝上 顕子 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (70722487)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 性差 / アルツハイマー型認知症 / オートファジー / ミクログリア / テストステロン |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)の発症・進行には性差があり、女性に多い。AD 発症には、ミクログリアの異常活性化とそれに伴う神経炎症が重要である。ミクログリアの特性にも性差があり、これがAD発症における性差の一因である可能性がある。しかし、その生命科学的な分子基盤は未だ明らかにされていない。GPRC6Aは、テストステロンの細胞膜受容体として機能することが解明され、従来のステロイドホルモン受容体を介した細胞内情報伝達とは異なる新しい細胞制御機構を提案できると考えられる。本研究では、ミクログリアおいて、テストステロン-GPRC6AシグナルがAD発症・進行の性差を規定する一因となることを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度の成果は、テストステロンがミクログリアにおけるオートファジー経路を亢進することを明確にしたことである。 ミクログリアは、オートファジー系を駆動してアミロイドβ(Aβ)を分解している。マウスミクログリア由来細胞株MG6におけるオートファジー系を、その指標であるLC3-IIの蓄積によって評価し、MG6細胞でもAβによってオートファジーが誘導されることを確認した。MG6をテストステロンで刺激すると、ERKのシグナル経路が抑制され、その下流にあるmTORの活性化が抑制された。mTOR活性の抑制は、オートファジー系を活性化することが知られている。そこで、MG6を用いてAβ刺激によるオートファジーを評価した。MG6細胞をテストステロン存在下・非存在下でAβ刺激し、オートファゴソームのマーカーとAβ抗体で免疫染色を行ったところ、テストステロン存在下ではオートファゴソームの数と、それと共局在するAβが増加していた。また、テストステロン存在下でLC3-IIの蓄積も増加しており、テストステロン存在下ではAβ刺激によるオートファジーが亢進していることが明らかになった。 ミクログリアには、テストステロンの受容体となる古典的な核内アンドロゲン受容体はほとんど存在しない。しかし、テストステロンの細胞膜受容体であるGPRC6Aは発現していることを確認している。GPRC6Aを介したシグナルは、ERKの活性化を調節することが知られることから、テストステロンはGPRC6Aを介してmTORの活性を調節し、オートファジーを亢進することによってAβ除去に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ミクログリアにおいて、テストステロンがGPRC6Aシグナルを介してAβが誘発する炎症反応を抑えるメカニズムを明らかにし、ADにみられる性差の背後にある分子基盤の一端を解明することである。 培養細胞を用いた実験で、テストステロンがオートファジーを介したAβ除去を亢進させることを明らかにした。In vitroの実験はほぼ終了し、Aβによって誘発される炎症反応をテストステロンが抑制することを示唆するデータを得ている。現在は動物実験を行う準備に入っており、本研究は計画どおり順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の2つの柱で実験を行う。 1. GPRC6A阻害剤を用いた実験と、GPRC6Aノックダウン細胞を用いた実験を行い、in vitro実験で観察されたテストステロンの効果がGPRC6Aを介したものであることを検証する。 2. 疾患モデルを用いた、テストステロン/GPRC6AシグナルによるAD発症抑制の検証を行う。 具体的には、約4ヶ月齢よりAβの蓄積がみられる3xTgマウスのオスに対して精巣除去手術を行い、テストステロン減少による認知機能への影響を経時的な行動解析によって評価する。また、脳の形態学的な変化、Aβの蓄積の有無とその程度を解析して比較する。この実験によって、テストステロン減少がAD発症を早める、あるいはより重篤な症状をもたらすことが分かる。また、GPRC6A欠損マウスと交配し、GPRC6A欠損ADモデルマウスを作製する。雌雄のモデルマウスを用いて同様の実験を行い、ADの発症とその程度を比較する。この実験によって、GPRC6Aを介したテストステロンの、AD 発症における役割が判明する。
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