研究課題/領域番号 |
22K09905
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 朝日大学 (2023) 九州大学 (2022) |
研究代表者 |
岩田 周介 朝日大学, 歯学部, 助教 (60780062)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 内因性カンナビノイド / 甘味受容体 / 甘味 / エンドカンナビノイド / T1R2/T1R3 / SGLT1 / 味覚 / 甘味受容経路 |
研究開始時の研究の概要 |
食欲促進因子内因性カンナビノイド(eCBs)は、舌で甘味感受性を増強し、中枢と同様に、食欲抑制因子レプチンと拮抗しながら甘味受容感度を調節することで食嗜好性を制御することが明らかになっている。レプチンの甘味受容細胞標的分子が明らかになる一方で、eCBsの甘味受容経路における標的分子や、レプチンとの甘味修飾の拮抗性や優位性の細胞内機構は不明である。本研究では、甘味受容細胞に存在する2つの甘味受容経路を構成する分子に着目し、エネルギー調節に協調して働く味覚センサーのシグナル受容・調節・伝達 の分子神経基盤を解明することで、それが破綻した際の暴食や過食といった病的状態の発生メカニズムの理解を目指す。
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研究実績の概要 |
ここまでの研究で、鼓索神経応答記録術を用いた実験により、野生型マウス(C57BL6Jマウス/B6)では、5分おきの2時間にわたる単一味溶液の舌繰り返し刺激で、人工甘味料(SC45647;SC)、二糖類(スクロース)では経時的な神経応答の増強が認められたが、一方で単糖類(グルコース)刺激では、同様の増強は認められなかった。また、他の味質(うま味;モノグルタミン酸カリウム、塩味;塩化ナトリウム・塩化カリウム、苦味;キニーネ塩酸塩、酸味;塩酸)では、同様の繰り返し刺激により自身の応答を増強する効果は認められないことが確かめられた。次に甘味受容体構成分子のT1R3遺伝子欠損マウス(T1R3-KO)を用いたところ、SC、スクロースで生じた応答の増強作用が消失することが明らかとなった。内因性カンナビノイドの関与を検証するため、次にカンナビノイド受容体阻害薬AM251投与下におけるこれらの増強効果を調べた結果、SC、スクロースで認められた甘味応答の増強作用は消失した。これらの結果から、この単一味溶液による繰り返し刺激で生じた応答の増強作用は、T1R2/T1R3を介した甘味受容機構で生じており、近年我々が報告したグルコーストランスポーターを介したT1Rs非依存性の甘味受容経路では生じないことが明らかとなった。また、我々が以前報告した甘味受容細胞にはカンナビノイド合成酵素が発現していることから、AM251で増強作用が消失したことを併せ考えると、T1Rsの持続的な活性化により、その下流でカンナビノイドの合成分泌が進み、自己増幅的な甘味応答の増強が生じていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、九州大学から朝日大学への転勤が必要となり、約一年間、鼓索神経応答解析に必要となるマウス用の神経応答記録装置の作成や、動物舎でのマウス育成環境を整える必要性に時間を要した。このため、実験計画書では、マウス味蕾オルガノイドを用いたカンナビノイドバイオセンサーの構築を予定していたが、設備の補充のための予算や、残された時間の関連も考え、一部の計画に変更を生じる必要性に迫られた際の準備を同時に行なっている。神経応答記録台や、免疫染色、PCR等に必要な器具類の補充は今期中に完了しており、実験に必要な野生型マウス飼育管理設備も整った。また、遺伝子組み換え動物についても、米国モネル化学感覚研究所 Robert F. Margolskee教授とMTA契約を行い、岡山大学口腔生理学教室の吉田竜介教授の研究室より譲渡の準備を進めているところである。このことから、来期以降の研究の存続に問題はないと考え、進捗状況を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの鼓索神経応答の結果から、本研究で認められた経時的な甘味応答増強効果は、繰り返しの甘味受容体刺激により、その下流での内因性カンナビノイドの合成・分泌が生じ、それが自身のカンナビノイド受容体に結合することで自己増幅的に生じていることが予想される。そこで、今後の研究方針としては、実際に味蕾周囲で自己増幅的な内因性カンナビノイド濃度が生じているかを検証する必要がある。実験計画書では、味蕾オルガノイドによる検証をここで記載したが、同時にRT-qPCRを用いた検証を行う。内因性カンナビノイドは非常に計測が困難な物質であることから、この内因性カンナビノイドの甘味受容細胞に発現する合成酵素、および分解酵素が、鼓索神経応答で検証を行った条件下において、そのmRNA発現量を変化させるか検証を行う。
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