研究課題/領域番号 |
22K09907
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 特任教授 (60160115)
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研究分担者 |
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 教授 (20362238)
小野 堅太郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40316154)
林 良憲 日本大学, 歯学部, 准教授 (80582717)
人見 涼露 日本大学, 歯学部, 講師 (70548924)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | シスプラチン / ミクログリア / マクロファージ / グリア細胞 / 疼痛 |
研究開始時の研究の概要 |
がん治療薬として使用されるシスプラチンは、神経系に対して強い有害作用を引き起こし、痛覚過敏やしびれなどの多様な症状を生じる。これらの有害事象は末梢神経障害に起因することが報告されているものの、中枢神経系に対するシスプラチンの影響については不明である。本研究では、シスプラチン投与により口腔顔面に生じる病的異常疼痛に対し、活性型グリア細胞やマクロファージがいかなるメカニズムで関与するのかモデルラットを用いて明らかする。さらに、すでに使用されている承認薬を用いて、シスプラチン誘発異常疼痛に対する有効性を検証し、臨床応用を目指す。
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研究実績の概要 |
本プロジェクトは抗がん剤として広く知られているシスプラチンの全身投与によりその副作用として口腔顔面領域に発症する痛覚過敏のメカニズム解明およびその新たな治療法の開発を目指した基礎研究である。特に本研究ではシスプラチン誘導性神経障害モデルラットの三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)および上部頸髄(C1/C2)に発現する活性型ミクログリアおよびマクロファージに注目し、各細胞がいかなるメカニズムで口腔顔面領域に発症する痛覚過敏に関与するかを明らかにし、またそれらの細胞に注目した新たな治療法の開発を目指す。 初年度は、シスプラチン誘導性痛覚過敏モデルを作製し、顔面皮膚への機械刺激に対する頭部引っ込め反射閾値(HWT)の経日的変化を解析した。本研究ではシスプラチン誘導性神経障害モデルラットにおいてvehicleラットに比べ有意なHWTの低下が観察された。また、同モデルラットのVcおよびC1/C2領域に発現する活性型ミクログリアの発現状態の解析を行った。その結果、モデルラットのVcおよびC1/C2からは多くの活性型ミクログリアの発現を認めた。さらに初年度は同モデル動物のVcおよびC1/C2領域から単一ニューロン活動記録を行いシスプラチン誘導性神経障害モデルラットの侵害受容ニューロン活動の変化についても解析を行った。初年度の研究結果から、モデルラットにおいては顔面皮膚の機械刺激に対して強い機械アロディニアが発症し、その原因としてVcおよびC1/C2領域に発現する活性型ミクログリアの発現およびそれぞれの領域における神経活動の増強が関与する可能性が示された。 本年度はさらに本研究を進め、マクロファージの発現状況の解析およびそれぞれの細胞に対する活性化阻害薬投与の効果について解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は7週齢雄ラットに対して,シスプラチン(3 mg/kg/day)または,vehicle(生理食塩水)を1週間に2回,合計5回投与し、シスプラチン誘導性神経障害モデルを作製した。それぞれにラットの顔面皮膚に機械刺激を与え、頭部引っ込め閾値(HWT)の経日変化の解析を行った。その結果シスプラチン投与3週目から顔面皮膚への機械刺激に対するHWTの有意な低下および足底部皮膚への機械刺激に対する足底部機械逃避閾値(PWT)の有意な低下が認められた。 シスプラチン5回投与後、有意に逃避閾値の低下が観察されたラットを深く麻酔して4%パラフォルムアルデヒドにて灌流固定し、延髄を取り出して通法に従って免疫染色を行った。その結果、シスプラチン誘導性神経障害モデルのVcおよびC1/C2領域においてvehicle投与群に比べ有意に多くのIba1陽性細胞(活性型ミクログリア細胞のマーカ-)発現を認めた。これはシスプラチン投与によって末梢神経が障害を受け損傷神経の興奮性が増強し、その結果としてミクログリアの活性が亢進したものと考えられる。 そこで、シスプラチン誘導性神経障害モデルの延髄に存在する侵害受容ニューロン活動が増強しているかどうかを確かめるために、VcおよびC1/C2領域から侵害受容ニューロン活動を検出し、各ニューロンの応答特性を詳細に調べた。その結果、検出された侵害受容ニューロンの多くは機械刺激に対して、有意に高頻度のスパイク応答を示していた。この結果は末梢神経からの入力が著しく増強していることを意味している。 さらに現在はこれらの領域に存在するニューロンにおいて、侵害受容ニューロンの活性化マーカーである extracellular signal-regulated kinase (ERK)のリン酸化が誘導されるかどうかについても解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究によってシスプラチン誘導性神経障害モデル動物の作製が完成し、この動物の顔面皮膚あるいは後肢足底部への機械刺激に対する逃避閾値の低下が認められことから、本年度は同モデル動物を用い、ミクログリアの活性化阻害薬であるミノサイクリンを大槽内に投与することによって顔面皮膚への機械刺激によるHWTの変化およびVcおよびC1/C2領域におけるミクログリアの活性化変化について免疫組織学的手法を用いて解析を行う。また、ミノサイクリン投与が侵害受容ニューロン活動に及ぼす影響に関しても初年度と同様の方法で単一ニューロン活動を導出し、その応答様式を解析する。 また、活動性の増強を示すニューロン数を総合的に解析するため、初年度に引き続いて解析を行っているVcおよびC1/C2領域の侵害受容ニューロンにおけるERKのリン酸化についても解析を進める。また、同時にミノサイクリンおよびvehicle投与群においてそれぞれの発現様式について、比較検討を加える。さらに、本年度からはマクロファージの関与についても上記に示した方法を用いて解析をスタートさせる。マクロファージに関してはGFAPを活性化マーカーとして用い、その分布状態あるいはマクロファージ除去薬(LCCA)投与の効果について免疫組織化学的、行動薬理学的および電気生理学的手法を用いて解析を行う。 また、初年度は雄ラットのみを研究対象としてきたが、本年度は雌ラットにおいても同様にシスプラチンを投与し、シスプラチン誘導性神経障害モデルを作製し、逃避閾値の変化およびVcおよびC1/C2領域に出現する活性型ミクログリア細胞およびマクロファージの分布様式につて解析する。さらに、VcおよびC1/C2領域に存在する侵害受容ニューロン活動についても解析を行いニューロンの活動性に対するミノサイクリン投与あるいはLCCA投与の効果についても解明する予定である。
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