研究課題/領域番号 |
22K09916
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
倉本 恵梨子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60467470)
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研究分担者 |
大野 幸 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (00535693)
後藤 哲哉 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (70253458)
柏谷 英樹 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (70328376)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 青斑核 / 痛覚 / ノルアドレナリン / 視床核 / 光遺伝学 / 視床 / 三叉神経脊髄路核 |
研究開始時の研究の概要 |
痛みの感じ方は、気分、意欲、覚醒度といった身体内部の状態により変化する。青斑核は覚醒に働き、痛みの感度の日内変動に関与すると考えられる。青斑核の下降性痛覚抑制における作用機序はよく調べられているが、痛みが視床から皮質感覚野へと伝わる回路での痛みの調節機構は研究が進んでいない。視床―皮質回路には少なくとも2種類ある。一つは痛みを伝達・増強する回路、もう一つは痛みを抑制する回路である。2つの拮抗する視床-皮質回路が青斑核によりバランシングされ、大脳皮質において身体内部の状態に応じた痛覚の認知を生じるのではないかと仮説を立てた。本研究では青斑核による2つの視床―皮質回路のバランシング機構を解明する。
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研究実績の概要 |
痛みの感じ方は、気分、意欲、覚醒度といった、身体内部の状態により変化する。例えば歯痛の発生はランダムではなく、一日のうち早朝に発生頻度のピークがある。青斑核は覚醒に働くため、痛みの感度の日内変動に重要であると考えられる。青斑核の下行性痛覚抑制における作用機序はよく調べられている。しかし、痛みが視床から大脳皮質感覚野へと伝わる回路での痛みの調節機構は研究が進んでいない。 申請者は最近、大脳皮質6層の皮質-視床投射ニューロンが抑制性介在ニューロンと特殊な局所回路を形成し、皮質4層のニューロンを抑制することを解明した。この特殊な局所回路は、視床の正中核群により活性化され、感覚入力の感度を下げる回路として働くと考えられる。一方、最近の国際共同研究において、痛みを大脳皮質に伝える視床の後核群(Po/VPM)は、覚醒状態で、皮質への入力を増強させることを発見した。つまり後核群-皮質投射は、感覚入力の感度を上げる回路と考えられる。さらに共同研究において、覚醒度の違いにより、痛み刺激に対する反応の強さが変化することを明らかにした。このように、痛みを伝える視床-皮質回路には、痛みを伝達・増強する回路。そして、痛みを抑制する回路の、少なくとも2種類があると考えられる。この2つの拮抗する視床-皮質回路が、青斑核によりバランシングされ、大脳皮質において、身体内部の状態に応じた痛覚の認知を生じるのではないか、と申請者は考えた。 本研究では、視床における青斑核の機能に注目する。痛みを大脳皮質へ伝達して感度を増強する回路と、感度を抑制する回路、この2つを、青斑核がどのようにしてバランシングし、身体内部の状態に応じた痛みの認知を生じるのか?が、学術的な「問い」である。青斑核による2つの視床-皮質回路のバランシング機構を明らかにして、このバランシングを標的とした新しい鎮痛薬の開発に必要な基礎データを提供する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、光遺伝学、行動解析、電気生理学を融合した、新しい実験系を立ち上げる必要がある。この高度な技術を習得するため、Professor Acsady (Thalamus lab, KOKI, Hungary) のラボと、国際共同研究を開始した。そして昨年度は、光遺伝学、行動解析、電気生理学を融合したclosed loop systemを立ち上げることができた。このclosed loop systemを用いた実験技術の実際の運用において、細かい問題が発生したため、再度Professor Acsadyのラボを訪問して技術交換を行う予定にしていたが、コロナウイルスにより渡航予定を延期したため、実験の遅れを生じた。 しかし今年度はコロナウイルスによる渡航規制が解除されたため、ハンガリーに渡航して、共同研究を再開するため、研究を予定通り推進できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、2つの形態学的解析を行う。①視床におけるアドレナリン受容体サブタイプの発現パターンを解析する。②青斑核から視床後核または正中核への軸索投射パターンを解析する。具体的には、①視床におけるアドレナリン受容体サブタイプの発現を、免疫組織化学染色により解析する。アドレナリン受容体はサブタイプにより、興奮性または抑制性に働く。どのタイプが視床核に発現しているか明らかにすることで、視床ニューロンに対する青斑核の作用を解明する。②青斑核から視床後核または正中核へ投射するニューロンをアデノ随伴ウイルス (AAV) で標識し、軸索投射パターンを解析する。ノルアドレナリン作動性ニューロンが、Cre組換え酵素を発現するTH-Creマウスの視床後核または正中核へ、逆行性に感染するAAVを注入する。Cre-loxシステムによる遺伝子組換えが生じ、回路特異的に遺伝子が発現する。青斑核ニューロンは、視床後核と正中核に同じ情報を送るのか、または、それぞれに異なる情報を送るのかを明らかにする。これらの形態解析から、視床におけるノルアドレナリンの作用を理解し、次年度以降の介入実験にフィードバックする。 次年度以降は、③頭頚部の痛覚を担う三叉神経脊髄路核に光活性化チャネルChR2を発現させて急性痛マウスを作製し、視床後核または正中核へ投射する青斑核ニューロンの、痛みによる活動変化を調べる。④視床後核または正中核に投射する青斑核ニューロンを、光遺伝学により活性化または不活化する。そして、痛みの感度の変化を電気生理学・行動学・組織学的に評価する。
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