研究課題/領域番号 |
22K09918
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
中村 史朗 昭和大学, 歯学部, 教授 (60384187)
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研究分担者 |
井上 富雄 昭和大学, 歯学部, 教授 (70184760)
弘中 祥司 昭和大学, 歯学部, 教授 (20333619)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 生後発達 / セロトニン / 三叉神経運動ニューロン / 抑制性シナプス伝達 / 顎運動 / 摂食機能 / パッチクランプ |
研究開始時の研究の概要 |
近年、「食べる」機能に問題を抱える子どもの割合が高まっている。吸啜から咀嚼への発達期には、これらの摂食機能を司る中枢神経機構が変化するが、同じ時期に脳内物質セロトニンを放出する神経系も発達することから、吸啜から咀嚼への発達にセロトニン神経系が重要な役割を果たす可能性が高い。本研究では、摂食機能を司る神経機構の発達に対するセロトニン神経系の役割を解明するため、①発達期マウスのセロトニン神経を遺伝子工学的に除去し、成長後の顎運動機能を解析する、②セロトニン神経除去の影響を受ける脳部位を検索する、③セロトニン神経除去により生じた顎運動機能の変化に対して、セロトニン投与による回復効果を検証する。
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研究実績の概要 |
ヒトは生まれてすぐに母親からの母乳を吸う(吸啜)ことができ、その後訓練期間を経て固形物を咀嚼するようになる。この吸啜から咀嚼への発達期には、歯や顎などの末梢器官とともに摂食機能を司る中枢神経機構が大きく変化する。これまで咀嚼筋を支配する運動ニューロンの興奮性・抑制性シナプス伝達の性質がこの時期に大きく変化することを見出してきた。しかしこの変化の引き金となる因子については未だ不明である。一方この発達期には、情動や運動などの多くの脳機能の調節に関わるセロトニン神経系もまた成熟する。吸啜期にセロトニンの作動薬を脳内投与すると吸啜から咀嚼への転換時期が変化するという報告がある。したがって、吸啜から咀嚼への発達にセロトニン神経系が関与している可能性が極めて高い。本研究では、電気生理学的手法や遺伝子工学的手法を用いて、摂食機能を司る中枢神経機構の生後発達に対するセロトニン神経系の役割を解明することを目指す。 2022年度には、まず咀嚼関連ニューロンへの抑制性シナプス伝達に対するセロトニンの影響を検索した。生後3~10日齢の咬筋運動ニューロンからパッチクランプを行い、AMPA受容体、NMDA受容体、GABAA受容体の拮抗薬であるCNQX(20 μM)、APV(20 μM)、bicuculline(10 μM)をそれぞれ投与した状態で、三叉神経上核刺激により誘発される抑制性シナプス後電流(IPSC)を記録し、5-HT(10 μM)の潅流液投与による効果を検証した。その結果、5-HTの投与によりIPSCの振幅が減少した。以上の結果から、セロトニンは三叉神経上核から三叉神経運動ニューロンへの抑制性シナプス伝達を抑制する効果があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
哺乳類は吸啜から咀嚼への発達過程で、萌出した歯から食物の硬さや性状の感覚情報を受けとり、硬さに応じて噛む力を調節するようになる。この噛む力の微細なコントロールは、抑制性シナプス入力によって三叉神経運動ニューロンの活動を細かく制御することで行われる。したがって、抑制性シナプス入力が咀嚼の獲得に向けて発達・成熟する可能性が極めて高い。そこで2022年度は、咀嚼を司る抑制性神経機構に対するセロトニンの関連を明らかにするため、まず咀嚼関連ニューロンへの抑制性シナプス伝達に対するセロトニンの影響を検索した。生後3~10日齢Wistarラットの脳幹スライス標本を作製した。逆行性標識色素(dextran, tetramethylrhodamine, 3000 MW)により標識した咬筋運動ニューロンからパッチクランプを行い、興奮性シナプス伝達を遮断した状態(CNQX(20 μM)、APV(20 μM)をそれぞれ潅流液投与)で、三叉神経上核刺激により誘発される抑制性シナプス後電流(IPSC)を記録した。記録中に5-HT(10 μM)を潅流投与し、その効果を検証した。その結果、5-HTの投与によりIPSCの振幅が減少した。したがって、セロトニンは三叉神経上核から三叉神経運動ニューロンへの抑制性シナプス伝達を抑制する効果があることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
咀嚼筋へ出力を送る三叉神経運動ニューロンの活動は、同ニューロンへの興奮性および抑制性シナプス入力のバランスとタイミングで決まる。これまで我々は、グルタミン酸を介する興奮性シナプス伝達の性質が生後発達期に変化することを明らかにしてきた。そこで、2023年度には、三叉神経運動ニューロンへの興奮性シナプス入力に対するセロトニンの作用およびその生後発達様式をパッチクランプ法を用いて解析する。
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