研究課題/領域番号 |
22K09921
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
稲井 哲一朗 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (00264044)
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研究分担者 |
平木 昭光 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (60404034)
吉本 尚平 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (70780188)
緒方 佳代子 金沢大学, 医学系, 助教 (70830123)
大谷 崇仁 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (80759738)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | squamous cell carcinoma / Lymph node metastasis / E-cadherin / Desmoglein-1 / Desmoglein-2 / Desmoglein-3 / デスモソーム / 細胞運動 / リンパ節転移 / ケラチノサイト |
研究開始時の研究の概要 |
細胞間接着分子E-cadherin(Ecad)の消失と運動性亢進は腫瘍の形成・転移において重要とされているが、リンパ節転移でEcadの発現低下がない例やデスモソーム接着分子desmoglein(DSG)3が発現するという報告がある。本研究では、Ecadの発現低下がなく、DSG1とDSG3の発現の有無が扁平上皮癌のリンパ節転移のリスクファクターとなるかを調べる。リンパ節転移と扁平上皮癌細胞でこれらの接着分子の発現パターンを調べる。次に、DSG1とDSG3の一方または両方を欠失しEGFPを発現する角化細胞を作製し、三次元培養で再構築した重層上皮内で細胞移動・運動性、細胞分化、浸潤性を調べる。
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研究実績の概要 |
本研究は、アドヘレンス結合蛋白E-cadherin (Ecad)、デスモソーム蛋白Desmoglein (DSG) 1、DSG3の発現の組合せに着目し、口腔扁平上皮癌(OSCC)で集団運動が起こっている可能性と上皮層内部で起こる初期変化を調べることを目的とする。令和4年度は、DSG1およびDSG3をゲノム編集により、遺伝子破壊した安定細胞株をマウスケラチノサイト(K38)で作成すること、OSCC患者の生検試料を収集することが当初の計画であった。 令和4年度は、DSG3遺伝子をゲノム編集で破壊したK38細胞株DSG3KO、さらにEGFPを発現するEGFP-DSG3KOを作製した。Ca添加による細胞接着形成過程で、DSG1の細胞接着部位への集積がDSG3KOではWT(野生型K38)に比べ遅延することがわかった。細胞接着形成後の接着強度をDissociation assayで調べると、DSG3KOはWTより接着強度が減弱し、1日後より3日後でさらに接着強度が弱まることが分かった。DSG3とp38 MAPKとの関連が報告されており、今回の結果がp38 MAPKの活性化と関連があるか来年度は調べる。また、K38はDSG1, DSG2, DSG3が発現しており、デスモソーム形成において、同種のDSGによるホモ結合か異種のDSGによるヘテロ結合かは明らかでない。WTとEGFP-DSG3KOを混合培養して、異種細胞間結合 (WTとEGFP-DSG3KOの間の結合)を免疫染色で調べた。その結果、DSG1, DSG2はすべての異種細胞間結合にみられたが、DSG3は異種細胞間結合には一部を除いてみられなかった。この結果から、DSG3の大部分はDSG3同氏のホモ結合で接着していると考えられた。 これらの結果を総合すると、DSG3の欠失は、デスモソーム形成を遅延し、細胞間結合を弱めることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスケラチノサイト(K38)において、ゲノム編集技術によりDSG1またはDSG3を遺伝子破壊した安定細胞株を作成することと、OSCC患者の生検試料を収集することが令和4年度の主要な研究計画であった。DSG3を遺伝子破壊した安定株(DSG3KO)を作製できたので、この細胞について2次元培養系で解析を行った。DSG1については、遺伝子破壊した安定株(DSG3KO)を作製できていない。DSG1遺伝子は、異なる染色体にDSG1a, DSG1b, DSG1cがあり、同時に3つの遺伝子を破壊することが難しい可能性がある。そこで、来年度は、DSG2の遺伝子を破壊したK38細胞を作製する。また、OSCC患者の生検試料については、令和4年度は7例が採取できた。来年度に数を増やして、解析を始める。
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今後の研究の推進方策 |
細胞間接着形成過程で、DSG1の細胞接着部位への集積がDSG3KOではWT(野生型K38)に比べ遅延した。Dissociation assayによる細胞間接着強度解析で、DSG3KOはWTより接着強度が減弱し、1日後より3日後でさらに接着強度が弱まった。これらの変化が、p38 MAPKの活性化(リン酸化)と関連するかどうかをWBで解析する。 DSG1については、遺伝子破壊した安定株(DSG3KO)を作製できていない。DSG1遺伝子は、異なる染色体にDSG1a, DSG1b, DSG1cがあり、同時に3つの遺伝子を破壊することが難しい可能性がある。そこで、来年度は、DSG2の遺伝子を破壊したK38細胞を作製する。 OSCC患者の生検試料の数を増やし、リンパ節転移との関連を、アドヘレンス結合蛋白E-cadherin (Ecad)、デスモソーム蛋白Desmoglein (DSG) 1、DSG3の発現の組合せに着目して、免疫染色で調べる。
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