研究課題/領域番号 |
22K09926
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
毛利 安宏 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (80464353)
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研究分担者 |
工藤 保誠 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (50314753)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 口腔がん / 免疫 / T細胞 / 免疫環境 / 免疫チェックポイント阻害療法 / サイトカイン |
研究開始時の研究の概要 |
我々は口腔がんの公共トランスクリプトームデータの解析によって一部の口腔がん症例が非常に高い免疫細胞浸潤を示すことを見出している。意外にも、これらの症例の予後は他の症例とほとんど差がない。その理由として、免疫細胞高浸潤症例の組織にはTregといった抑制性免疫細胞の浸潤も高いこと、PD-L1の発現が高いことが考えられた。そこで、本研究ではこれらの症例のがん組織で高発現しているサイトカインと免疫細胞浸潤の関係、PD-L1発現制御機構を移植実験系を用いて明らかにする。本研究によって新たな口腔がん免疫療法が提案できると期待している。
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研究実績の概要 |
これまで口腔がん組織における免疫細胞浸潤はがん組織のbulk RNAシークエンスデータを用いて、single sample gene set enrichment(ssGSEA)解析によって行われてきた。この手法では、既に報告されている各免疫細胞のマーカー遺伝子の発現値を基に浸潤度を計算する。しかし、マーカー遺伝子の選び方によって浸潤度計算の正確さが左右されるため、全ての免疫細胞の浸潤度が正確に計算されるとは限らない。このため、実際の口腔がん組織に浸潤している免疫細胞の遺伝子発現状態を反映する解析を行う必要がある。近年、がん組織の1細胞RNAシークエンスデータを事前情報として与えることによってbulk RNAシークエンスデータを簡便にdeconvolutionし、浸潤している各免疫細胞の割合を正確に算出する手法が報告された。またこの手法では、各免疫細胞の推定の遺伝子発現値も計算可能である。そこで、この手法を用いてTCGAが取得した514症例の口腔がんデータを用いてがん組織に浸潤する免疫細胞の割合を再検討した。その結果、これまでの検討と異なり、T細胞浸潤が患者予後と強く相関することが明らかとなった。このため、臨床応用の面からT細胞浸潤を規定する因子を同定することが重要と考えられ、本研究で用いる実験系を見直す必要があった。T細胞浸潤を詳細に検討するために、現在4NQO発がんモデルを作製している。このモデルは喫煙による発がんと類似しており、TP53遺伝子の変異を高頻度で引き起こす。我々の研究室では口腔がん症例において高頻度に変異を示すFAT1とCDKN2Aの変異マウスを保有しており、野生型に加え、これらのマウスの4NQOモデルも現在作製している。予備実験として4NQOで発生したがん組織に浸潤した免疫細胞をフローサイトメトリーで検討し、様々な免疫細胞が浸潤していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述したように多くの論文がssGSEAによって口腔がん組織中に浸潤した免疫細胞を検討しているが、より正確に口腔がんのbulk RNA-seqデータから免疫細胞浸潤を検討するために新規deconvolution法(BayesPrism)を用いて解析を行った。その結果、T細胞浸潤と患者予後が非常に強く相関すること、T細胞と他の免疫細胞の浸潤度が異なることが明らかとなった。ssGSEAによる検討では、ほとんどの免疫細胞の浸潤度が連動していたため、症例を免疫細胞浸潤度が低い症例と高い症例に分け、高免疫浸潤症例に高発現しているケモカインを同定し、それらの機能解析を行う予定であった。しかし、deconvolutionの結果から、T細胞浸潤を規定するケモカインを同定する必要があると考え、現在再検討を行っている。また、口腔がん組織へのT細胞浸潤を検討するのに適した実験系を構築する必要があるため、4NQOによる口腔がん発がんモデルによる検討を開始した。このように、解析対象となる症例や免疫細胞を変更したため、解析標的となるケモカインの再同定や実験系の変更を行う必要があり、当初予定していたよりも進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、T細胞の浸潤が高い口腔がん症例で高発現しているケモカインの同定を行っている。ケモカイン同定後は、標的ケモカインを高発現している口腔がん細胞株を用いてIn vitro chemotaxis assayを行う。また、標的ケモカインのノックダウンを行いT細胞遊走とケモカイン発現の関係を明らかにする。vivoでのケモカイン機能解析実験は、当初nudeマウスNOGマウスへのヒト口腔がん細胞移植系を想定していたが、4NQO発がんモデル系に変更を行う。昨年から4NQO発がんモデルマウスの作製を行っており、T細胞浸潤とマウス口腔がんにおけるケモカイン発現の関係を検討する予定である。
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