研究課題/領域番号 |
22K09958
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 圭祐 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (30431589)
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研究分担者 |
宍戸 駿一 東北大学, 歯学研究科, 助教 (20850613)
白土 翠 東北大学, 歯学研究科, 助教 (60708501)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 紫外線 / ブラックライト / 第三象牙質 / 歯髄 / 酸化ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、低出力のブラックライトを歯に照射することで、歯の内部の歯髄組織中で新たな象牙質の形成を促進させる技術の研究を行う。ブラックライトは波長が315~400 nmの紫外線であり、低出力・短時間の照射による軽度酸化ストレスは象牙質の形成を促進することが分かってきている。これは、毒性を発揮するストレスを加えても、低用量領域では生体にとって有益な効果を発揮するホルミシス効果の一種であると考えられる。そこで、本研究では、組織傷害を伴わず象牙質形成促進効果を得るための条件を明らかにする。また、本技術による齲蝕治療と知覚過敏治療における有効性を検証する。
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研究実績の概要 |
これまでの研究において、ラットの上顎第一大臼歯に対して2 W/cm2の条件でブラックライト(波長365 nmのLED)を90秒間照射すると歯髄腔において第三象牙質の形成が誘導されることを実証してきた。今年度は、ブラックライト照射がラットの歯髄において第三象牙質を形成するメカニズムを解明するために、ラット由来の歯髄細胞を用いた実験を実施した。 ラットの下顎前歯から歯髄を採取し、α-MEM培地中で培養・増殖した歯髄由来細胞を実験にも用いた。細胞試験に先立って、ラットの大臼歯にブラックライトLEDを照射した際の透過率を分析した。その結果、ブラックライトの透過率が18%であることが分かったため、動物実験で用いた放射照度(2 W/cm2)の18%、すなわち、360 mW/cm2を細胞試験でのブラックライト照射条件とした。ブラックライト照射直後に細胞の生存率を、WST-1試薬を用いて調べたところ、照射を行った群(テスト)と照射を行わなかった群(コントロール)では生存率に有意差は認められなかった。しかしながら、細胞のアポトーシスについてApoptotic/Necrotic/Healthy Cells Detectionキットと共焦点レーザー顕微鏡を用いて評価したところ、テスト群では照射後の時間依存的にアポトーシスが認められることが分かった。また、細胞内活性酸素生成を、H2DCFDAを用いて調べたところ、テスト群では有意に活性酸素生成が増加していた。さらに、歯髄細胞の脂質過酸化をTBARSアッセイで調べたところ、テスト群では有意に脂質過酸化が進んでいることが分かった。 以上の結果より、ブラックライト照射によって、比較的軽度な酸化ストレスが歯髄細胞に引き起こされることが分かった。この酸化ストレス状態からの回復の過程で修復象牙質が形成されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた歯髄由来細胞を用いた細胞実験を実施し、ブラックライト照射による軽度酸化ストレスによる刺激が第三象牙質形成のトリガーとなることを示唆するデータを得ることができた。予定していた動物実験の一部が未達となっているが、これまでに得られた結果は研究の仮説をサポートするものであり、詳細なデータが得られているため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によって、ブラックライト照射によってラットの歯髄腔で第三象牙質形成が促進されるメカニズムに、酸化ストレスが関与していることが明らかとなった。ブラックライト照射は、歯髄細胞のネクローシスを引き起こすことはないが、一部の細胞でアポトーシスを引き起こす。この理由としては、ブラックライト照射によって細胞が有する生体分子が酸化されるためであると考えられる。今後は、当初の研究計画に従って、このブラックライト照射による第三象牙質誘導が歯科医療、特にう蝕治療において有効に利用できるのかどうかを動物実験を通して検証する予定である。これまでと変わらず、研究分担者との連携を緊密にし、各自の役割分担の明確化と定期的な報告会を実施する。
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