研究課題/領域番号 |
22K09959
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
兼平 正史 東北大学, 歯学研究科, 非常勤講師 (30177539)
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研究分担者 |
八幡 祥生 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (30549944)
齋藤 正寛 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40215562)
角田 洋一 東北大学, 大学病院, 助教 (50509205)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 唾液 / プロテーム解析 / 診断機器 / 唾液バイオマーカー / SOMAscan |
研究開始時の研究の概要 |
クローン病や潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患は、腸の粘膜に持続性の炎症が起こる難治性疾患であり、近年患者数は増加している。本患者では治療が奏功し寛解の状態になってから再び悪化するケースが多々あり、重症化を防ぐためには継続的に管理し疾患の再燃を早期に把握する遠隔診断補助装置の開発が必要である。これまで我々は東北大学病院消化器内科との共同研究により、唾液中には同疾患に特徴的な炎症性サイトカインが増加する事を明らかにした。この研究成果をふまえ唾液中から疾患活動度を予測するバイオマーカーを革新的技術であるSOMAscanを用いて検出し、体外診断用医薬品の製造に繋がる基盤技術の開発を目指している。
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研究実績の概要 |
人生100年時代を迎える本邦において、基礎疾患を有する国民の健康寿命を延ばす事が大きな課題となっている。クローン病や潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患(IBD)は、大腸および小腸の粘膜に持続性の炎症が起こる難治性疾患であるが、本邦での患者数は増加の一途をたどっている。 クレブシエラ菌は健常者の口腔内にも存在するが、抗生物質の多用などにより腸内細菌叢が乱れると腸管内に定着し、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を引き起こす可能性が示唆され、IBDの原因として口腔常在菌により免疫細胞が過剰に活性化される事が近年明らかにされた。さらに、口腔内で抗原提示を受けたリンパ球が腸に移動すると腸炎を悪化させ、歯周病が腸炎の悪化に関わる事も報告された。IBD患者は治療が奏功して寛解の状態になっても再燃するケースが多々あり、重症化を防ぐためには疾患活動状態を継続的に管理して、再燃を早期に予測する遠隔診断補助装置の開発が求められている。 これまで研究代表者は東北大学消化器内科と共同でIBD患者の口腔内検査を行い、IBDでは歯周病リスクが高まるばかりではなく、唾液中にIL-23を含む同疾患に特徴的な炎症性サイトカインが増加する事を明らかにした。本年度我々は東北大学消化器内科と共同で炎症性腸疾患と診断された患者の唾液を集めてプロテオーム解析を行った。7名の炎症性腸疾患の患者と3名の健常者の患者より採取した唾液のSOMAscan解析を実施した結果、炎症性腸疾患患者の唾液には特徴的に上昇しているタンパク質群200種類以上が検出された。これらのほとんどは細胞質内タンパク質であり、炎症性細胞が唾液中に出てきて細胞死を起こしている可能性が示された。現在候補タンパク質10種類のELISA試験を実施しており、炎症性腸疾患において特異的に検出される唾液バイオマーカーをスクリーニングする事を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で必要なクローン病患者の唾液サンプル採取に関しては、「炎症性腸疾患患者の経時的疾患活動性を反映する唾液バイオマーカー検索のための探索的研究」として本学消化器内科と共同で重篤な炎症性腸疾患患者の唾液サンプルを採取する計画を進めていたが、本年度においては重篤な炎症性腸疾患の症状を呈し内視鏡検査を予定している患者の唾液サンプルを採取し、SOMAscanを用いたプロテオーム解析を予定通り実施する事ができた。これらの試料群からは予想していた炎症性細胞に関連するバイオマーカーを唾液から検出する事が出来ており、引き続き次年度に実施予定の唾液を用いたELISA解析の実験手技・方法の確立を進めており、ほぼ計画どおりと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度のプロテオーム解析で得られたバイオマーカーの候補分子に関して、ELISA法を用いた解析を実施する。具体的にはこれから内視鏡検査を予定している30名の炎症性腸疾患患者の中で、東北大学病院に入院中で症状の悪化傾向を示している患者から唾液を採取し、前年度に得られたバイオマーカーの候補分子の抗体を用いて炎症性腸疾患患者の唾液サンプルのELISA試験を行い、同患者で特異的に発現しているタンパク質の同定を試みる。これらの結果から得られた最終候補分子に関しては、炎症性腸疾患患者の症状が落ち着いている臨床的寛解期と症状が悪化している活動期の識別可能性を検討するために、同患者の唾液、血液および便のサンプルを採取し、それぞれの検査項目(血液ではアルブミン濃度、便では便中カプロラクチン濃度)について比較検討を行う。得られた結果を詳細に解析する事により炎症性腸疾患患者の疾患活動度を検証できる唾液バイオマーカーを確定しその有用性を評価する事を目標とする。
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