研究課題/領域番号 |
22K09963
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池上 久仁子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (80779116)
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研究分担者 |
柏木 陽一郎 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (20598396)
山下 元三 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (90524984)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 老化 / 歯周病 / microRNA / 歯根膜細胞 / CXCR4/SDF-1 |
研究開始時の研究の概要 |
歯周組織の修復、治癒、再生過程において、歯根膜の組織幹/前駆細胞の歯周組織欠損部への遊走は不可欠である。申請者らは、高齢マウスの歯周病モデルやin vitroの実験系により、老化歯根膜における細胞外基質タンパク産生や細胞遊走の異常を見出している。しかしながら細胞老化による歯根膜細胞並びに組織幹/前駆細胞の運動能、遊走能低下の分子メカニズムは未だ不明である。本研究では、高齢者に特徴的な歯周組織の修復・治癒能低下の分子機構を明らかにする為に、歯根膜の細胞老化が、細胞の遊走において重要なCXCR4 /SDF-1(stroma derived factor-1)経路に及ぼす影響を分子レベルで検討する。
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研究実績の概要 |
歯周病の発症と進行において、加齢は単一で最大のリスク因子である。その細胞性機構として、細菌バイオフィルム、咬合力などの環境ストレスが歯周組織の細胞レベルの老化、すなわち“細胞老化”を誘導することが推察されるが、その分子メカニズムは未だ不明な点が多い。申請者らは、老化歯根膜細胞がmicroRNAsを介した炎症性SASPタンパクの産生制御により、歯周組織の慢性炎症と骨吸収に関係していることを報告した。そして、ヒト歯根膜細胞に発現している約360種のmiRNAsにおいて細胞老化に特徴的な発現を示すmiR-146aを同定し、その標的遺伝子としてCXCR4に着目した。CXCR4はSDF-1の受容体として免疫細胞、血管内皮細胞、上皮細胞、間葉系幹細胞など様々な細胞に発現し、細胞遊走やホーミングといった重要な免疫応答に関与することが明らかとなっている。本研究ではmiR-146a- CXCR4軸を中心にCXCR4を発現している免疫細胞、歯根膜幹/前駆細胞や血管内皮細胞の歯周組織局所への遊走能を解析すし、免疫老化ならびに幹細胞老化が高齢者の刺繍組織の修復、治癒、再生をに及ぼす影響を検討する。 研究開始初年度の2022年は、細胞老化がヒト歯根膜細胞におけるmiR-146a-CXCR4制御機構に及ぼす影響ならびに細胞機能に及ぼす影響について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始初年度の2022年は、老化ヒト歯根膜細胞におけるmiR-146a-CXCR4制御機構の解析、ならびにCXCR4/SDF-1シグナルが老化ヒト歯根膜細胞の細胞機能に与える影響について解析した。初代ヒト歯根膜細胞(HPDL)の複製老化の誘導により、老化HPDLを得た。異なる継代毎にmiR-146a、SDF-1の遺伝子発現をRT-PCRにて検討した結果、継代数の増加、すなわち細胞老化の亢進に伴ってmiR-146aの発現は増加する一方でSDF-1の発現は減少する傾向がみられた。 FGF-2は、歯周組織の再生部位において、組織幹/前駆細胞の増殖と遊走を誘導することで再生を促進することが明らかとなっている。マウス歯根膜細胞(MPDL)は、FGF-2添加培養下ではCXCR4の遺伝子レベルでの発現増強がみられた。スクラッチアッセイを用いてMPDLの細胞遊走能を評価したところ、FGF-2、SDF-1単独添加群では無添加群と比較して遊走能の増加を認めた。興味深いことに、FGF-2とSDF-1の添加により遊走能の増強効果には協調作用がみられた。これらの結果より、歯周組織の修復、再生において、CXCR4/SDF-1経路が歯根膜の遊走能制御に重要な役割を担っていることが示唆された。また、正常HPDLのエクソソームの単離に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年は、前年度に樹立した遊走能の評価系を応用し、老化HPDLにおけるmiR-146a-CXCR4制御機構、ならびにCXCR4/SDF-1シグナルが老化HPDLの細胞機能に及ぼす影響についてのさらなる解析を実施する。具体的には、HPDLに老化誘導刺激である口腔細菌感染、メカニカルストレス、活性酸素種ストレスを誘導し、miR-146a,CXCR4,SDF-1の遺伝子並びにタンパク発現量をモニタリングする。また、miR-146aの発現量が低い正常HPDL(継代数<10)にmimic miR-146a、もしくはmiR-146aの発現量が高い老化HPDL(継代数>35)にinhibitor miR-146aを導入後に、スクラッチアッセイ・チャンバーアッセイを用いて遊走能を検討する。また、正常HPDLに老化HPDL由来エクソソームを老化HPDLに正常HPDL由来エクソソームを添加し、同解析にあたる。そして、HPDL由来エクソソーム中のmiR-146ならびにmiR-155の発現量を検討する。実施が困難な場合は正常HPDLにCXCR4のsiRNAを添加し、CXCR4のノックダウンを行い、同解析にあたる。 次に、in vivo 実験的歯周炎モデルを用いて歯周組織の組織治癒・再生にはたすCXCR4/SDF-1シグナルの役割について検討を行う。具体的には老齢野生型マウス(C57/BL6)の歯周組織にP.g.菌を感染、絹糸を結紮することでマウス歯周炎モデルを構築する。結紮絹糸を撤去1週間後の顎骨をmicro-CTにて計測し、後に、歯周組織切片を作製し、HE染色、老化マーカーであるSA-βGAL、P16/INK4aと、CXCR4の免疫組織学的解析により、老化歯根膜におけるCXCR4の発現と局在ついて検討する。
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