研究課題/領域番号 |
22K09989
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
黒川 弘康 日本大学, 歯学部, 准教授 (10291709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 根面齲蝕 / ペン型超音波トランスデューサー / 治療指針立案 |
研究開始時の研究の概要 |
根面齲蝕の多くは,歯肉縁に接するセメント質あるいは象牙質に初発するが,その臨界pHはエナメル質と比較して高いため,歯冠部での齲蝕リスクが低い場合でも,根面齲蝕の発症が優勢となることが懸念されている。とくに,口腔のセルフケアが困難な認知症患者や要支援・要介護高齢者では根面齲蝕が急激に進行し,短期間で口腔崩壊を招く場合も少なくない。したがって,実質欠損を生じる以前の初期段階で根面齲蝕病変を検出し,患者個々のリスク因子を考慮して治療方針を立案することは重要である。そこで,根面齲蝕の治療指針立案にペン型超音波トランスデューサーの応用が可能か検討する。
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研究実績の概要 |
根面齲蝕モデルにサホライド液歯科用38%(SDF)を応用した際の状態変化を,超音波透過法を用いて数値化するとともに,同一試片を写真撮影し,デジタル画像解析処理によって色調を確認することで,これらの相関性について検討した。 ウシ歯歯根部象牙質ブロックを,乳酸緩衝液(pH 4.75)に10分間浸漬した後に人工唾液に保管した。この操作を12時間毎に1日2回,それぞれ1,7,14,21および28日間行う5条件(AC1,AC7,AC14,AC21,AC28)を設定し,脱灰程度の異なる根面齲蝕モデルを製作した。 超音波測定は,ペン型超音波トランスデューサーを用いて,各試片を透過する超音波の伝搬時間を計測し,試片の厚さとの関係から超音波縦波音速を求めた。超音波測定は,次の2条件に対して行なった。1)未処理群:SDF未塗布の根面齲蝕モデルAC28について超音波測定を行なった。2)処理群:根面齲蝕モデルAC1からAC28に対してSDを塗布し,塗布直後および塗布後精製水中に1,7,14,21および28日間保管した条件について,それぞれ超音波測定を行なった。 処理群の各試片を超音波測定後にデジタルカメラで撮影し,この画像を専用ソフト(Image J, Wayne Rasband)を用いて解析することで,各条件での根面齲蝕モデルの黒色度を確認した。 その結果,超音波縦波音速はSDFの塗布により変化するもののその傾向は根面齲蝕モデルの脱灰程度によって異なる傾向を示した。黒濃度はSDFの塗布により低下するものの,その程度は根面齲蝕モデルの脱灰程度によって異なる傾向を示した。また,超音波縦波音速と黒濃度の相関係数はr=0.56であり,相関性が認めらた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するために必要な根面齲蝕モデルの製作および超音波透過法による測定手技は確立されており,研究計画通り順調に進行している。また,これまでに得られた研究成果を国内学会にて発表し新たな知見を得たことで,令和5年度以降の研究のさらなる進展を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究において,脱灰程度の異なる根面齲蝕モデルにSDFを塗布した際の状態変化を,ペン型超音波トランスデューサーおよび写真撮影によるデジタル画像解析処理で観察することが可能であることが判明した。また,ペン型超音波トランスデューサーの音速値と画像解析による黒色度には相関があることが示された。今年度は,根面齲蝕モデルにSDFを塗布した際の状態変化を,微小硬さ測定装置を用いてヌープ硬さを測定するとともに,象牙質表層における形態的変化をレーザー顕微鏡(LSM)および走査電子顕微鏡(SEM)によって観察することで,根面齲蝕モデルの脱灰抑制ならびに再石灰化程度と黒色度の関係性を明らかにする。
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