研究課題/領域番号 |
22K10020
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
横瀬 敏志 明海大学, 歯学部, 教授 (90245803)
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研究分担者 |
加藤 邑佳 明海大学, 歯学部, 助教 (10906697)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 培養歯髄細胞 / 象牙質形成 / 半導体レーザー / エピジェネティクス / Wnt10a / Ectodin / DNAメチル化 / レーザー照射 / 歯髄培養細胞 / 歯髄組織再生療法 / レーザー / Dentinogenesis / 象牙芽細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでにレーザー照射によって象牙質形成が亢進し、その作用にはWntシグナルが関与することを確認した。しかし、wntシグナルがそのようにコントロールされているかはわかっていない。そこで本研究ではEctodinとLef-1の遺伝子のエピジェネティクスに焦点を当て、DNAのメチル化に対してレーザーがどのように作用するかを明らかにする。さらに、Wnt シグナルに関与するヒストンタンパク質のH3K27のアセチレーションを誘導するEZH2の発現がレーザー照射によってどのように変化するかを明らかにする。最終的にはこれらの基礎的な知見をもとにレーザーを用いた新たな歯髄保存、再生療法の基盤を作る。
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研究実績の概要 |
これまでに、ラットの下顎切歯から分離した歯髄細胞を培養して、そこに半導体レーザー(808nm)を照射し、象牙質形成が最も亢進する条件を見出した。この条件は、total エネルギーが50Jでエネルギー密度が5J/cm2であることが確認できた。さらにこの条件では、石灰化象牙質形成のマーカーとなるDspp, Bgp, AlpのmRNAの発現が有意に亢進することが明らかとなった。さらに、この石灰化更新のメカニズムの一つとして、レーザー照射によってWntシグナルのひとつであるWnt10aの発現が亢進することも突き止めた。レーザー照射によってdentinigenesisが亢進するメカニズムにWnt10aが関与することが明らかとなった。しかしながら、レーザー照射の条件をさらに高出力となる、Total エネルギーを150Jまで増加させると、細胞障害が見られないものの、象牙質形成は抑制されることが確かめられた。そしてこの時の培養歯髄細胞では、WntシグナルのアンタゴニストであるEctodinの発現が亢進していた。すなわち高出力でのDentinogenesisの抑制にはWntシグナルを抑制することが原因となっていることが示された。これらのことはレーザー照射のエネルギーによって、象牙質形成は増加と抑制の二面性を有することが示唆せれた。さらに、これらのDentinogenesis亢進と抑制の両方で、DNAのメチル化の亢進がELISAによって確認された。これらの結果はレーザー刺激によって培養歯髄細胞の分化がWntシグナルによって制御され、それにはDNAのメチル化が関与していることを示しており、レーザー刺激によってエピジェネティクスが誘導されていることを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究での最も重要な点は、半導体レーザーによって培養歯髄細胞のDentinogenesisを亢進させる、再現性を有する照射条件の決定であった。これまでに合計5回の実験を組んでその再現性を確認したが、レーザー照射によって、Dentinogenesisiが亢進するtotal エネルギー(50J)と抑制されるtotal エネルギー(150J)を全ての実験において確認できた。今年度はこの条件を設定できたことは評価できる。一方、、Dentinogenesisのおけるメチル化の現象は確認できたが、その詳細が明確にできなかったことは反省点ある。特にWnt10aとEctodinの発現を制御するエピジェネティクスの詳細はまだ掴めていない。各遺伝子発現に関するプロモーターに作用するCPGアイランドのどの領域にメチル化が起きているかが解析できていない点は実験計画がやや遅れていると判断する。 しかし、この点は当初より予測をしていた範囲で、実験遂行には大きな障害にはならないと考えている。特に、Dentinogenesisiに関わる増殖因子とエピジェネティクスの関係を示す先行研究がなされているので、これを参考に今後はエピジェネティクスに集中して研究を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度なるために、半導体レーザーによって誘導されるDentinogenesisの亢進と抑制に関わるWnt10aとEctodinの発現をコントロールしているDNAのメチル化現象の詳細を追求する。具体的な方法としてラット切歯より分離した培養歯髄細胞に、半導体レーザーをDentinogenesisを亢進させるさせるtotal エネルギー50Jと抑制させる150Jで照射する。これらの条件下の培養歯髄細胞に対して、DNAのメチル化を促進するEZH2のknock-outと強制發現させる。このEZH2はβカテニンのプロモーター領域のH3K27me3の作用を示し、カノニカル経路のサイレンサーの役割を果たすことが知られている。レーザー照射した場合、Dentinogenesisに及ぼす影響を調べることにより、レーザー照射による亢進作用と抑制作用にEZH2の関与が確認できれば、レーザー照射のDentinogenesisへの作用機序としてエピジェネティクスが関与していることが明確に証明できる。もし、EZH2のknock-outがうまくゆかない場合は、SiRNAを用いた遺伝子knockdownに切り替えて、EZH2の遺伝子発現を抑制する方法に切り替える。 本年度はこの実験系で、培養歯髄細胞におけるDentinogenesisに対するエピゼェネティクスとレーザー照射の関係を明らかにして総括のための論文作成に取り掛かる予定である。
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