研究課題/領域番号 |
22K10040
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
河野 博史 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 講師 (20507165)
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研究分担者 |
杉浦 悠紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (70755040)
菊地 聖史 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50250791)
村原 貞昭 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 講師 (80404490)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 高透光性ジルコニア / 持続的抗菌性 / ランタノイド錯体 |
研究開始時の研究の概要 |
歯科用ジルコニアは、優れた生体親和性を持ち、機械的性質や審美性についての改良が重ねられてきたが、それ以外の性質については改良の余地がある。例えば、抗菌性の付与である。そこで、ジルコニアの安定化元素としてランタノイドが必ず添加されていることに着目した。①ランタノイドイオンとピリジニウム化合物が錯体を形成すること、②高透光性ジルコニアはランタノイドの含有量が多いこと、③ピリジニウム化合物は抗菌分子として歯磨剤等の口腔ケア用品に添加されていることから、本研究は、高透光性ジルコニア表面でのピリジニウム化合物錯体の担持能を評価し、これを応用して持続的に抗菌性を示す新しいジルコニアを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、高透光性ジルコニア表面に対するピリジニウム化合物の担持能(抗菌性獲得能)を評価し、持続的抗菌性を有する新しい歯科用ジルコニアを開発することである。 歯科用ジルコニアは、優れた生体親和性を持ち、機械的性質や審美性についての改良が重ねられてきたが、それ以外の性質については改良の余地がある。例えば、抗菌性が付与できれば、口腔衛生状態の改善が期待できる。そこで、ジルコニアの安定化元素としてランタノイドが必ず添加されていることに着目した。①ランタノイドイオンとピリジニウム化合物が錯体を形成すること、②高透光性ジルコニアはランタノイドの含有量が多いこと、③ピリジニウム化合物は抗菌分子として歯磨剤等の口腔ケア用品に添加されていることから、本研究は、高透光性ジルコニア表面でのピリジニウム化合物錯体の担持能を評価し、これを応用して持続的に抗菌性を示す新しいジルコニアを開発する。抗菌成分として市販の口腔ケア用品に広く用いられている塩化セチルピリジニウム(CPC)と塩化ベンザルコニウム(BKC)について、単斜晶および正方晶ジルコニア表面への吸着性を調べた。 XRDの結果からZrO2は単斜晶、Y-TZPは正方晶であることが確認された。また、BETとCHN元素分析の結果から、ZrO2にCが有意に吸着することやY-TZPはY含有量 に比例してC吸着量が増えること、単斜晶ジルコニアは正方晶ジルコニアに比べ単位面積当り数倍の抗菌分子吸着能を持つことなどが分かった。 以上の結果から、ジルコニアの結晶構造の違いやY含有量が抗菌分子の吸着に影響を与えることが示唆された。歯科用ジルコニアは一般に正方晶を安定化するための元素が添加されていることから、今後は抗菌分子の吸着に対する安定化元素の影響も検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書において当該年度に予定していた、CPC、BKC担持高透光性ジルコニアの抗菌性能評価を実施できたため。 具体的には、市販の高透光性ジルコニア粉末を、一軸加圧式プレス機にて圧粉後、メーカー推奨温度にて一定時間焼成後、冷却し、ディスク状の形状を付与した高温相ジルコニア成形体を得た。この成形体を歯磨剤などで使用している抗菌剤の濃度を考慮し、0.3wt%に調製したCPC、BKC溶液に浸漬して、37°Cで一定時間振蕩させた。処理後のディスクを蒸留水で洗浄後、細菌(ISO-22196に準拠して、代表的なグラム陽性菌とグラム陰性菌である黄色ブドウ球菌と大腸菌を使用)を塗布した寒天培地上に静置した。37°Cで一定時間培養し、ディスク周囲に形成した阻止円のサイズを測定することにより、抗菌性を評価し、臨床での有用性を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
①試作ジルコニア中の安定化元素毎のCPC、BKC担持能の検討 市販品の評価で得られた知見を基に、安定化元素毎の担持能をより詳細に検討するため、ゾル-ゲル法を用いたジルコニアセラミックの調製を行う。酸化塩化ジルコニウム粉末と、有望と目するランタノイド硝酸塩溶液を混合後、アンモニア水を滴下し、ゲル化する。得られたゲルを洗浄後、アルミナ焼成皿に載せた後に焼成し、ジルコニアを調整する。その後、市販品の評価で確立した手法にて抗菌性を評価する。市販のジルコニアにも含まれているYやCeに加えて、La(ランタン)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)について含有量を変えてCPC、BKC担持能を調べる。また、比較のため、Ca、Naなどランタノイドイオン以外の安定化元素についても検討する。特に、価数、溶液中での錯体形成能、イオン化エネルギーなどの原子核物理学に係る係数との関係性について詳細に評価する。 ② 担持能を最適化した試作ジルコニアの性質の評価 高透光性と抗菌性獲得能を併せ持ったジルコニアの調製と、これに寄与する安定化元素の同定を行う。①で検討した条件から、適当と思われる条件の組成物を圧粉、焼成し、ディスク状に加工する。成型体の機械的性質について万能試験機や硬さ試験機を用いて評価する。さらに、光学的性質について、色差計を用いて評価する。対照群として、牛歯エナメル質及び市販の高透光性ジルコニアを用いる。CPC、BKC溶液浸漬後の抗菌性を評価し、安定化元素毎の機械的性質と光学的性質に加えて抗菌性獲得能の有用性を検証する。
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