研究課題
基盤研究(C)
本研究はSBMが骨造成材としての有用性を明らかにすることを目的とし、将来CAD/CAMシステムの応用により外科手術で必要な欠損に対してSBMを補填材料の応用を可能にすると考える。将来的にはCAD/CAMシステム法を用いて自己硬化型SBMセメント硬化体ブロックを切削し、外傷や外科手術などで欠損した部位への応用を目指す。
本研究は生体微量金属元素のCO32-,Mg2+,Zn2+,F-をリン酸カルシウムに配合した自己硬化型生体骨アパタイト(Synthetic bone mineral: SBM)をインプラントにコーティングする表面処理法を開発し、埋入後に形成される早期な新生骨形成と骨質向上を明らかにする。実験は7週齢時に両側卵巣摘出手術を行い、9週齡時にラットへ全身麻酔を行い、左側大腿骨遠位端から10mmの位置に剃毛と消毒後、切開を行い、骨膜を剥離し骨面を露出する。埋入窩は大腿骨に直径 1.2mmの孔の形成し、無処理のインプラントとSBMコーティングしたインプラントをラット1頭につき1本を埋入した。ラットは埋入後2週および4週後に大腿骨を摘出した。摘出した骨はインプラント引き抜き試験および骨密度測定によりSBMによる骨質向上の有用性を一部を明らかとした。引き抜き試験で、インプラント埋入2週後のコントロール群は1.8±0.6NでSBM群は11.1±5.という結果でSBM群が有意に高い結果となった。インプラント埋入4週後のコントロール群は2.7±0.4NでSBM群は16.7±2.8 NでSBM群が有意に高い結果となった。骨密度測定ではインプラント埋入2週後のコントロール群は270.8±29.4mg/cm3でSBM群は744.9±58.6mg/cm3でSBM群が有意に高い値となった。インプラント埋入4週後の コントロール群は385.0±33.0 mg/cm3でSBM群は883.9±54.9mg/cm3でSBM群が有意に高い値となった。以上の結果から、SBMは骨代謝を早期に促進させて骨形成を優位にさせる材料であることが示唆された。組織学的観察は令和6年度に成果をまとめて論文投稿を予定します。
2: おおむね順調に進展している
本研究は現在動物実験を終了し、卵巣摘出ラットのコントロール群とSBM群における新生骨の形成について非脱灰組織標本を作製し、ビラネバゴールドナー染色を行い、インプラント周囲に形成される類骨や石灰化骨への形成や経時的変化について観察を現在行っている最中である。令和6年度は組織学的観察結果の成果をまとめて学会発表と論文投稿を予定します。
今後の研究として飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)は、質量分析イメージング(MSI)技術であり、イオン化ビームを試料に照射し、生成された二次イオン(SI)のシグナルを異なる位置で記録することにより、分析対象分子の化学組成と表面上の二次元分布に関する情報を提供することが出来る。骨研究の多くの分野で異なる化合物の同時分析に使用することができる。骨研究においては、骨質やミネラルの状態を決定する以外に、損傷した骨の骨治癒を改善するためのインプラント材料の研究も大きな関心を集めている。骨中のこれらの物質の検出は、生体内でのインプラント材料の挙動、特に治癒促進物質を骨に送達する能力に関して評価するために不可欠である。加えて、異なる骨領域の細胞や組織の化学組成をマッピングする能力は、基礎となる生物学的プロセスに起因する骨内の化学的変化の理解を向上させる可能性がある。ToF-SIMSのようなマススペクトルを細胞内分解能で記録するMSI技術は、骨研究においてこのような疑問を解決する可能性を提供する。ToF-SIMSは同じ分析中に試料中の有機成分と無機成分の両方を検出できるため、非鉱物化骨や骨髄と同様に、高い空間分解能で化学組成に基づいて鉱化骨の領域を可視化し、区別するのに理想的なので、ToF-SIMS分析を応用して自己硬化型生体骨セメントの生体適合性について分析を行う予定です。
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IJOMS
巻: 22 号: 2 ページ: 69-76
10.5466/ijoms.22.69
日大口腔科学
巻: 49 ページ: 92-97