研究課題/領域番号 |
22K10048
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
中東 潤 福山大学, 工学部, 准教授 (40341200)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 水素 / チタン / 結晶粒微細化 / 結晶粒界 / 超塑性 / チタン合金 / 耐力 / 引張特性 / 歯科補綴物 |
研究開始時の研究の概要 |
歯科補綴物の一つであるチタン合金製メタルフレームにおいては現在、鋳造法やCAD/CAM法等によって製造されているが、精度や強度、設備費等の問題がある。本研究では、歯科用チタン合金に「水素処理法」を適用して本合金のナノ組織化を図り、得られた微細粒チタン合金を用いた超塑性加工法(金属が水飴の如く伸びる現象を用いた加工法)によるメタルフレームの新製造プロセスを確立することで従来の製造方法における多くの問題の解決を目指す。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、水素処理法(水素吸蔵-溶体化・マルテンサイト化-熱間圧延-脱水素)によって微細組織化した生体用α+β型Ti-6Al-7Nb合金(以下、微細粒材と記す)の組織的特徴と超塑性引張特性を調べた。 まず前者であるが、走査型及び透過型電子顕微鏡にて微細粒材の組織観察を行ったところ、水素処理後の結晶粒径(α粒径)は0.5μm程度にまで微細化していることがわかった。また、結晶方位をEBSD(後方散乱電子回折)にて調べた結果、結晶粒界の多くは結晶方位差15度以上の大傾角粒界で占められていることもわかった。前年度、微細粒材の降伏強度は飛躍的に向上することを明らかにしたが、この結果により組織学的な裏打ちを示すことができた。 次に超塑性引張特性であるが、微細粒材と比較のための粗粒材(水素吸蔵を行わず、かつ水素処理と同じ熱履歴を施したもの)の超塑性伸びと最大応力に及ぼす温度の影響を調べた。まず超塑性伸びであるが、粗粒材は温度873Kでは113%であったが、この値は温度の上昇と共に向上し、1173Kで粗粒材の最大超塑性伸びである4380%を示した。これ以上の温度では、超塑性伸びは低下した。一方、微細粒材は今回調べた873~1273Kのすべての温度において粗粒材よりも高い超塑性伸びを示し、温度:1173Kで最大値である5950%を示した。最大応力においても微細粒材は粗粒材と比較し、おおむね低い値を示した。以上のことより、微細粒材は優れた超塑性特性を有していることがわかった。 以上のことより、本年度は水素処理によって得られたα+β型Ti-6Al-7Nb合金の微細粒組織の特徴と超塑性特性を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた①水素処理法によるTi-Al-Nb合金のナノ組織化②微細粒Ti-Al-Nb合金の組織的特徴及び引張特性の把握③微細粒Ti-Al-Nb合金を用いたメタルフレームの超塑性加工プロセスの確立④超塑性加工法により作製した歯科補綴物の優位性の明示のうち、①と②は概ね終了した。②において、超塑性伸びと変形応力に及ぼす温度と初期ひずみ速度の影響の調査の一部と超塑性変形後の組織観察が終わっていないので、早急に対応したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた「微細粒Ti-Al-Nb合金を用いたメタルフレームの超塑性加工プロセスの確立」「超塑性加工法により作製した歯科補綴物の優位性の明示」を進める予定であるが、まず前者を進めていく。これについては超塑性加工条件(加工温度、アルゴンガス圧力等)の最適条件を調査し、加工プロセスの確立を目指す。良好な試作品が完成した後、成形型との適合性の他、機械的性質、金属組織の変化、不純物の進入状態を把握して超塑性加工法により作製した歯科補綴物(メタルフレーム)の優位性を示す予定である。
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