研究課題/領域番号 |
22K10073
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57050:補綴系歯学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小野 和宏 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40224266)
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研究分担者 |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
伊藤 加代子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (80401735)
真柄 仁 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90452060)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 歯科 / 咀嚼 / 摂食嚥下障害 / 食塊 / 唾液 / 嚥下 / 顎運動 |
研究開始時の研究の概要 |
摂食嚥下障害患者の生活の質を考える上で,食支援は重要な要素である.一方で,患者に提供される食事はミキサー,ペースト食などの噛まずに食せるものが飲み込みやすく安全であると信じられており,これは必ずしも患者の食思を向上させるものではない.本研究では,摂食嚥下障害者の食のQOLの維持に必要となるキーワードを「食認知」と「咀嚼」と捉え,健常者の生理学的検証ならびに要介護高齢者を対象とした横断的・縦断的なアプローチによって,咀嚼食品摂取の可否を決める生体および食品物性条件とは何かを再考し,咀嚼がもたらす嚥下への効果や,介護食のあり方への新たな提言につなげる.
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研究実績の概要 |
要介護高齢者患者に提供される食事はミキサー,ペースト食などの噛まずに食せるものが飲み込みやすく安全であると信じられており,これは必ずしも患者の食思を向上させるものではない.これまでに申請者らは,咀嚼能力が十分に発揮できれば,低下した嚥下運動をも補完することが可能であることを見出している.本研究では,摂食嚥下障害者の食のQOLの維持に必要となるキーワードを「食認知」と「咀嚼」と捉え,健常者の生理学的検証ならびに要介護高齢者を対象とした横断的・縦断的なアプローチによって,咀嚼食品摂取の可否を決める生体および食品物性条件とは何かを再考し,咀嚼がもたらす嚥下への効果や,介護食のあり方への新たな提言につなげることとした.これまでに唾液をキーワードとしたいくつかの所見を得ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加齢変化の中で摂食嚥下機能に影響を与える因子には唾液分泌低下がある.唾液は,消化,潤滑,緩衝,味覚刺激などの機能をもち,摂食嚥下機能に与える影響が大きいことから,唾液分泌機能の低下がもたらす効果について種々の食品を用いて調べた.実験は,(1)健常者を対象として,食品摂取と唾液分泌機能の低下との関連を調べたもの,(2)とろみの程度を変えた際の摂取状況を唾液分泌が低下した摂食嚥下障害患者で調べたものとした. (1)当初の対象を健常若年者のみとした.対象とした食品は,①水分を全く含まず油分や味覚刺激のためのパウダーを違えた米菓,②水分値の異なるパン,③魚肉練り製品とした.その結果,口腔乾燥は咀嚼時間,咀嚼スピード,食塊形成に関わる舌骨上筋群に有意な増加をもたらしたものの,食品に含まれるパウダーや油分は唾液分泌低下を代償する要素となり得ることが明らかとなった.これらの結果のうち,①については論文投稿済み(J Oral Rehabilitation),②③については現在論文執筆中である. (2)食品のとろみは誤嚥のリスクを下げると言われているが,一方で付着性の増加により嚥下の咽頭残留を助長する.我々は,リセットゲルというゼリーととろみの両方の特徴をもつゼリー食品を用いて,運動機能低下,唾液分泌機能が低下した摂食嚥下障害患者に対して,既存のゼリー,とろみ食品に加えて,リセットゲル摂取時の運動動態などを比較した.その結果,口腔期障害を主とする患者にはゼリー食品,咽頭期障害を主とする患者にはリセットゲルの安全性が高いことが示され,病態に応じた食品選択を示唆する結果が得られた(J Oral Rehabilitationに公表済み).
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今後の研究の推進方策 |
唾液分泌の影響は,舌骨上筋群に現れること,ことに咀嚼後半の食塊形成時期にもたらされること,またその要因としては食塊物性の違いもさることながら口腔内の湿潤性もまた重要であることが示唆された. 今後は,(1)行動への影響をさらに詳細に追及するために3次元顎運動記録や舌運動記録を加えることとして現在予備実験を開始している,(2)口腔乾燥が懸念される高齢者を対象とした記録を行うことを予定している.新型コロナ感染症が収束し,高齢者データの集積は可能と期待している.
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