研究課題/領域番号 |
22K10112
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57050:補綴系歯学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
山田 匡恵 (古川匡恵) 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 口腔疾患研究部, 外来研究員 (90439456)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 咀嚼 / オーラルフレイル / 軟食 / 視床下部 / 老化 / 海馬 / astrogliosis / カプサイシン |
研究開始時の研究の概要 |
咀嚼能力は、授乳期から幼児期を通して獲得され日々の学習により発達させていくことが必要な食物摂取機能のひとつである。咀嚼は消化吸収を助ける重要な働きであるとともに、食欲や脳機能の発達にも関与しているため、乳児期から咀嚼機能を高めることは極めて重要な課題である。本研究では、長期間の軟食飼育や歯の喪失が脳へ及ぼす影響を検討するとともに、歯を喪失したマウスにおける三叉神経の活性化の程度を解析し、脳の老化と咀嚼の関係性を明らかにする。さらに、化合物による三叉神経賦活が脳老化や脳機能低下の抑制や回復に有効かを検討する。これらの結果を咀嚼及び欠損補綴、ならびに食形態の重要性を明らかにする世界初の試みである。
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研究実績の概要 |
本研究は、軟食が脳に及ぼす影響を解析するとともに、歯の喪失による脳老化および脳機能低下を三叉神経賦活化により改善できる可能性を検討することが目的である。具体的には、①食形態(軟食および固形食)の違いが脳の老化関連遺伝子や寿命関連因子に及ぼす変化あるいは行動に変化を及ぼすかをマウスモデルで検討する(以下、軟食実験)と②三叉神経賦活作用のあるカプサイシン等を抜歯により咀嚼機能が減弱したマウスに投与し、それにより脳老化や脳機能がどのように変化するかを検討する(以下、三叉神経賦活化実験)の2つの実験系であった。1年目に予定していたのは、各マウスの飼育、必要に応じて外科処置、行動実験、各期間に安楽殺することであった。さらに可能であれば採取した組織よりRNA、タンパクを回収、脳に関与する老化因子を検討する他、脳から切片を作成、免疫染色であった。初年度である昨年は予定より研究が順調に進み、飼育、サンプル回収、染色等実験が順調に進んだ。軟食飼育に関しては、マウスに長期間の軟食飼育をすることにより行動実験では攻撃性が増大、運動平衡性が低下した。また、3ヶ月間の軟食飼育ののち、固形食に戻した具産んでは遺伝子レベルでは軟食飼育群に攻撃性に関連する分子の発現に変化が見られた。三叉神経賦活化実験に関しては、抜歯により失われた三叉神経の機能の一部は、カプサイシン投与により緩和される傾向が見られている。今後は、得られたデータを吟味し、必要があれば追試を行い、まとめて論文化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
軟食実験:初年度は各マウスの飼育を行い、馴化後、3群に分け6ヶ月の飼育を行った。マウスはC57BL6Nslcマウスのオス3週齢のマウスを購入、以下3群に分けた。固形餌(C)、粉末餌に水を60%混和した軟食餌(S)群、軟食餌飼育3ヶ月後に固形餌3ヶ月にした(SH)群であった。飼育およびサンプル回収とともに、行動実験、および海馬や視床下部における各種マーカーの発現検討について効率よく検討を行った。結果として、長期間の軟食飼育S群マウスは、運動平衡性が著しく低下ただけではなく、攻撃性も高まった。また固形食に戻したSH群は軟食飼育において欠落した一部の機能が回復する傾向が見られた。三叉神経賦活化実験:初年度は各マウスの飼育を行い、馴化後、各群にわけた。マウスはC57BL6Nslcマウスのオス18ヶ月齢から20ヶ月齢のマウスを購入、以下3群に分けた。CC群(コントロール餌、非抜歯)、CE群(コントロール餌、抜歯)、CAPE群(カプサイシン0.01%含有餌、抜歯)である。抜歯処置が必要なマウスは腹腔麻酔下で上顎第一臼歯抜歯を行った。餌は、EPトレーディング社のコントロールOD(Open Standard Diet)飼料またはOD飼料にカプサイシン0.01%含を含む餌を作製した。飼育およびサンプル回収とともに、行動実験、および海馬や視床下部における各種マーカーの発現検討について効率よく検討を行った。結果として、CC群と比較してCE群は、海馬や視床下部における老化関連マーカーの発現に影響が出る他、認知機能の著しい低下が認められることが明らかとなった。それがCAPE群では、それら老化関連マーカーの発現が減弱する傾向が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は必要に応じて1年目の実験の追試を併せて行い、得られた結果を総合的に吟味し、データを基に論文執筆および学会発表を行う予定であった。既に、両方の研究で論文執筆および、学会発表を行う準備をしている。【軟食実験】軟食実験の論文は長期間の軟食飼育により脳の機能と行動に変化が出ることを、Long term soft-food rearing in young mice alters brain function and emotional behaviorというタイトルで、令和5年度内に投稿する予定である。学会発表は今の所は予定していないが、発表する可能性はある。【三叉神経賦活化実験】三叉神経賦活化実験は老齢マウスの上顎臼歯喪失により海馬において老化マーカーが発現し、それがカプサイシン含有餌によって減弱することを示した内容で結果をまとめた。論文はLong term capsaicin administration ameliorates the dysfunction and astrogliosis of brain in aged mice with missing maxillary molarsというタイトルで現在、国際雑誌に投稿中である。また、2023年6月に横浜で行われるIAGG Asia/Oceania Regional Congress 2023学会においてCapsaicin intake suppresses the increase of GFAP in the hippocampus のタイトルで口頭発表予定である。 今後は各研究とも現在までに得られた結果をもとに更なる研究を行う予定である。また、本研究の結果から咀嚼の重要性を国内外に啓発していきたいと考えている。
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